中国進出インタビュー

第 93 回「『貿易インフラサービス』でお客様をサポー

 

国際化が進む昨今、日本企業においても海外との取引は年々増加してきており、現在、海外に生産拠点を構える企業も数多く存在しています。しかし、海外との貿易取引、海外への設備の輸送などを行うにおいては、対象国の法律や税務などの知識を十分に把握しておく必要があり、各企業において頭を悩ませる課題も多くあるかと思われます。

今回は、そういった海運に関する事項から、設備に関する輸送・貿易・税務・法律対応までを一貫してサポートしている株式会社SEALSの上尾社長に、海外ビジネスについての取組み事例を伺いました。当社は中国にも、北京と上海に現地法人を設けていますので、中国における取組みと合わせてご紹介させて頂きます。

 

u  株式会社SEALSについて

ape.png まずは我々の会社について紹介させて頂ければと思います。株式会社SEALSはもともと、現会長の谷内と私が2006年に立ち上げた会社で、谷内が海運会社出身、私が商社系物流会社出身であったことから、お互いの強みを活かし、ハードの部分での「海運事業」と、ソフトの部分での「LIFT事業(詳細は後述)」を二本柱に、貿易インフラの提供を行っています。メインのお客様は、モノづくりを行うメーカーで、海外に進出する企業に対して、中古車の海外輸送や中古設備の移設など他社が手掛けることの少ない分野に特化し、「こんなサービスがあったらいいな」といった思いに応えるべく会社を立ち上げました。なおSEALSの社名の由来の1つとして、アメリカ海軍の特殊部隊「Navy SEALs」から取っており、お客様の前に最初に出ていき、先頭に立ってサポートをする存在になりたいといった思いを込めています。

 「海運事業」においては、自動車専用船を運行し、中古車と建機をミャンマー、バングラディシュなどベンガル港周辺諸国及び、中東・アフリカ向けに提供しています。ブッキングの受けからB/Lの発行まで一貫して自社で行っており、迅速かつ丁寧な対応が売りです。そして「LIFT事業」は、「LLogistics(物流)」、「IInsurance(保険)/Information(各国情報)」、「FFinance(金融)」、「TTrading(貿易手続き)」より取った言葉で、国内外で生産活動を行うモノづくり企業に必須となる要素が含まれたサービスです。今回は、この「LIFT事業」について、中心にお話しをさせて頂きます。

 

u  LIFT事業

 前述の通り「LIFT事業」には、海外でビジネスをする上で必要となるサービスを多く含んでいます。弊社がこの事業で提供しているサービスは主に3つです。

qwww1.pngまず1つ目は、生産設備についての「新設・増設に関する移設」及び「生産移管に関する移設や処分」です。弊社では、前者に関する一貫したサポートを「貿易パック」として、日本及び第三国からの設備移転など煩雑な輸出手続きが必要な輸送、許認可取得の代行、輸出入、搬出入及び税務・法務対応を大手ファイナンス会社と共に一貫して行っています。また、後者に関するサポートを「生産移管パック」として、工場の縮小・閉鎖に際して、グループ間での設備の有効利用や、第三者への設備転売の支援をしています。

続いて2つ目が、VMI(ベンダー・マネージド・インベントリー)サービスと言われるサービスで、弊社が有するファイナンス機能と物流機能により、お客様とサプライヤーとの商流に介在する事で、お客様のキャッシュフローの改善や調達利便性を実現しています。このサービスでは、弊社が必要部材を代行して購入し、弊社の資産として一時保管。お客様は、使用した部材のみの代金を支払うため、従来、サプライヤーに対して支払っていた買掛債務の期間繰り延べが可能となるのです。

 最後3つ目は、遊休設備・中古設備の売却、購入手続きのサポートです。設備の購入においては、購入の代行から海外への輸送、現地搬入まで一貫して手配。また処分に関しては、弊社のネットワークを活用し、コストを最小限に抑え収益化できるべく努めています。

 なおこのようなサービスを提供するために、「商流」「貿易」「エンジニアリング」「コンサルティング」の機能を自社内で有していますが、中でも「貿易」に関する機能は、弊社の最大の強みと言っても過言ではありません。この「貿易」機能において、生産設備の許認可取得をお客様に代わって行っていますが、その際には、当該設備が対象国の法律の規定に引っ掛からないかどうかを、設備の精度を計り、パラメーターにおこし判定書を作るといったところから行います。判定後は対象国の行政に申請を行い、自社で輸出者となり責任を持って輸出を行うのです。こういったサポートを行うためには、自社内に、エンジニア、CPA等の専門家を抱えておく必要があり、スペシャリストがいて成り立つサービスなのです。

 

u  中国での事業

 qwww1.png

ここで少し中国での事業について触れたいと思います。弊社のグループ会社として、中国には、香港を除いて北京に1社、上海に2社、会社があります。北京は貨運代理会社であり、運送の資格を有しています。また上海には、「SEALS上海」と言うコンサルティング事業を行う会社と、「SEALS商貿」と言う商社機能を有した会社があります。この様に中国の3社はそれぞれ異なる企業形態で設立されており、保有しているライセンスも異なりますが、基本的には3社が一体となり、お客様のサポートができるよう連携しています。

 今でこそ、各国にも拠点を構え大々的にビジネスを展開していますが、会社設立当初は中国での案件が大半で、中国一辺倒といった感じでした。中古設備の許認可取得や免税の手続きが中心で、特に中国では、「法律と実際の運用が異なる」、「各省・エリアによって法律の解釈も異なる」、といった問題がありましたので、法律の裏取りをするために様々な先にネットワークを作り、同じ質問を様々な先に投げかけて確認したり、法律の原文を取り寄せて解釈したりと、日々苦戦しながら少しずつ事業を展開していったのです。こういった作業を他の国でも同様に、一つ一つ地道に行い、ノウハウを蓄えていくことで、各国に展開することができる様になったのです。

 なお中国での仕事はトラブルの連続でした。先ほどお話しした通り、法律があってもその通りに運用がされていないこともありますし、毎年の様に規程が変わるのでそのキャッチアップをするのも一苦労です。しかし、その様に複雑で対応に困る事案が多いためビジネスが成り立っており、そこには当然お客様の悩みも多いため、今後も中国でのサポートは、弊社にとって最重要と言えます。

 

u  今後の展開

 もともとモノづくりを行う企業のサポートをすべく立ち上げた会社であるため、今後もこの基本コンセプトから外れることはありません。弊社が提供しているサービスは、お客様のニーズを事業化したものであり、今後も求められる先に求められるサービスを提供したいと考えています。そういった意味では現在、弊社が行っている事業を日系企業以外の外資系企業にも積極的に展開していきたいと思っています。また、海外の拠点展開も拡充していきたいです。今でも、世界各国にパートナー企業を有しており、拠点がない国でもサービスを提供することは可能ですが、やはり拠点があるのとないのとでは行える事業の幅も変わってきますので、今後はそういった点にも注力していく予定です。

 最後に、今お話ししさせて頂いた様に、事業の幅を広げていくためには人材の確保が最大の課題となります。今後もお客様に求められるサービスを提供し、お客様からの信頼を集めることで、魅力的な企業へと成長し、人の集まる会社にしていきたいと考えています。

 

 

※会社情報

日本本社/株式会社SEALS(きらぼし銀行横浜西口支店取引先)

     <ホームページ> https://seals-japan.co.jp/

現地法人/路茲商務諮詢(上海)有限公司

     上海禧路茲商貿有限公司

     北京禧路茲物流有限公司

 

聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 小原

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号