中国進出インタビュー

第 91 回「中国の『今』を現地から届ける」 株式会社3

 

現在、多くの日本の企業が既に中国に進出し、中国でビジネスを行っていますが、中国及び中国ビジネスに苦手意識を抱いている日本人は非常に多いのではないかと思われます。確かに中国は変化のスピードも速く、日々新たなイノベーションが起きており、ビジネスを成功させるのは容易ではありません。この様な中、重要となってくるのは、いかに早く現地の生の情報を取り入れ、それを活かすことではないでしょうか。

近年、中国では、「36Kr」という、中国のベンチャー企業やIT技術にフォーカスしたインターネットメディアが注目を集めています。そして、この中国最新技術からファイナンス状況までを紹介する「36Kr」の日本語版が、今年、開設されました。今回は、その運営を担っている株式会社36KrJapanの中島社長に、ご自身の中国との係りから36Krとのビジネスの開始まで、お話を伺いましたのでご紹介致します。

 

u  中国との繋がり

 まずは、私の中国ビジネスとの関わりからお話をさせて頂きます。私はもともと学生時代より、「グローバルに働きたい」、「人と違うことをしたい」といった思いがあり、大学卒業後は海外事業に力を入れている某電機メーカーに入社しました。その会社ではまず新人全員が中国の工場で研修を行っており、新人の時に2ヶ月間中国を訪れたのが、私の最初の中国との出会いでした。

0.jpg 以降、日本に戻ってからも「海外で働きたい」との思いは一層募るようになり、さらに今度は新人の中から4名だけ、中国での1年間の研修機会があり、人事部に直談判。もともと「中国」を希望していた訳ではなかったのですが、こうして中国生活が始まりました。

 その会社では、約5年間中国の東莞に駐在し、主に工場で5,000人以上の中国人の管理を担当しました。当時は、今ほど恵まれた環境ではありませんでしたし、日本人の若者が、製造部の顧問といった立場にいることを面白く思わない中国人スタッフからの苛めもあり、大変な思いもしました。しかし、この経験を通して、中国人とどう向き合うか、どう話しどう理解してもらうか、どう動かすか等を徹底的に考える機会となり、中国人との付き合い方を身に着けることができたと考えています。また、この工場勤務の際に私は工場の生産工程カイゼンシステムを独自で開発しました。例えば、不良品が出た際に、スキャナーを通して写真に収め、不良内容を打ち込めるフォーマットを作成。それをデータベースにして、どの工程・どの班で不良が発生したか、何が原因かなどを「視える化」し共有することで、工場の改善活動を徹底しました。こういった体験がその後の私自身の起業につながっていると思っています。

 

u  中国での起業

 最初の転機は29歳の時でした。中国に赴任してから既に5年が経過していましたが、工場が縮小することもあり、ほぼ失業状態で日本に帰らなければならない展開になりました。この時私は、「このまま日本に戻っても、中国での経験を十分に活かすことができないのではないか」と考えるようになっていました。その様な中、先に妻が上海で就職することを決めたのです。

そこで私も会社を辞め、すぐに上海に駐在できる就職先を探し始めました。しかし、なかなか思うような企業が見つからなかったこともあり、「上海で2人で暮らすには起業するしかない」と妻にも背中を押されて、起業したのです。

 中国で始めた事業は、WEBサイト制作の仕事でした。顧客は大手日系企業がメインでした。中国では日本人コミュニティの繋がりが強いため、特段の営業をすることもなく、多くの仕事を頂くことができました。2012年に始めた事業でしたが、2016年に日本に帰国するまで、お陰様で好調に事業を展開することができました。

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u  日本での中国ビジネス

 二度目の転機は2016年、33歳の事です。この年に子供が産まれたのをきっかけに、帰国を決意したのです。そこで、中国で行っていたWEBサイト制作ビジネスを日本でも展開するため、株式会社レクサーを設立しました。中国に特化したWEBサイト制作、WEBマーケティング、越境EC事業支援などを手掛け、中国のWEBマーケティング事情を紹介する独自のブログも立ち上げました。特に注力した業務は、「中国向けに制作したサイトが中国できちんと見られない」という問題を解決するためのソリューション開発です。まずはそのサイトが中国で見ることができるのか否かを、URLを入力するだけで、即時に判断することのできるツールを開発し、リリースしました(右図「China Check FREE」)。

 その頃、日本の地方自治体が中国人向けに作成した60の中国語サイトを調べてみたところ、Googleマップを使用している等の理由で、中国からはうまく見ることのできないサイトが約4割もあり、いかに日本のWEB制作会社が中国のWEB事情を知らないかが如実に分かりました。

 中国に特化して専門的に展開しているWEB会社は非常に少ないこともあり、設立以降、事業は好調に推移しました。また201712月には、この事業に関心を示してくれた「百度(Baidu)」(中国最大の検索エンジンを提供している企業)より声が掛かり、パートナーシップ契約を締結、共同でサービスを提供するまでに至っています。

 

u  36Kr

36Kr」といっても、まだ日本ではご存じない方も多いので、簡単に説明させて頂きます。この会社の正式名称は「北京品新傳媒文化有限公司」で、メディアを運営しています。200名を超える記者を抱え、中国のベンチャー企業やIT技術にフォーカスした情報を提供しています。「36Kr」は、このメディアのブランド名です。なお、この会社は、「北京協力筑城金融服務股份有限公司」というホールディングカンパニーの傘下にあり、グループ内には、スタートアップ企業のデータベースプラットフォーム事業やシェアオフィス事業を展開している会社もあります。いずれも中国のユニコーン企業と言われており、グループ全体では従業員数1,000名を超えている注目企業です。

 このような企業と知り合ったきっかけは、株式会社レクサーの自社ブログを日々制作していた頃、ふと、「WEBマーケティングについて記事を書いている中国のメディアにアタックし、その記事を翻訳して配信できないだろうか」と考えたことです。数社にメールで打診したのですが、その中の1社が「36Kr」だったのです。

 最初に返事をしてくれたのが、「36Kr」の海外事業部長兼シンガポール子会社の社長を務める馬氏でした。微信(WeChat)でやり取りしているうちに、私の「日本に中国の最新情報を届けたい」という熱意と、36Krの「日本でどの様な記事が読まれるのかを知りたい」というニーズとが合致しました。掲載記事のPV(ページヴュー)を開示することで、記事の使用を許諾してもらえたのです。これが201710月の話で、ここから「36Kr」との関係が始まりました。

2018年に入ると、馬氏から「合弁で日本で事業を立ち上げないか」との誘いがありました。不思議に思っていると、私が翻訳した記事の反応を見て、社内で日本進出のゴーサインが出され、パートナーを探していたとのこと。これは面白いと、ビジネスプランを提示すると、これが採用され、トントン拍子に話が進みました。そこで北京に飛んで「36Kr」の経営陣と面談し、無事に調印しました。2018724日に合弁会社「株式会社36KrJapan」を設立、85日にメディアサイトを立ち上げることが出来ました。

 「どのようにして『36Kr』との共同事業に至ったのか」と聞かれることがよくあるのですが、「何事も始めてから考える」という中国流のマインドが中国ビジネスに長く携わってきた我々に染み付いており、これが「36Kr」の経営陣に響いたということだと思います。

 「36Kr」との合弁事業である「36KrJapan」の挑戦はまだ始まったばかりですが、まずは中国の生の情報を届け、知名度を上げることで読者を増やしていきたいと思っています。また今後は、中国から日本に進出してくる企業も増えるので、そういった企業の支援にも注力していく予定です。中国ビジネスを通じて日中の架け橋となれれば幸いです。

 

※会社情報

会社名    : 株式会社36KrJapan

ホームページ : https://36kr.jp/corp/(コーポレートサイト)

https://36kr.jp/(メディア・サイト)

 会社名    : 株式会社レクサー

 ホームページ : https://lxr.co.jp/

 

聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 小原

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