中国進出インタビュー

第 87 回「環境を自然に戻し、土地と共に生きる」 ハ

現在の製造業における中国ビジネスでの一つのトピックスとして、「環境問題対策」が挙げられます。近年、中国政府は国を挙げて環境問題の対策に乗り出しており、「大気」「水質」「土壌」などに関する様々な法律や法規が整備され、製造業においては、日々刻々と変化する環境規制への対策が迫られています。政府による立ち入り検査も頻繁に行われ、企業によっては政府からの指摘で環境対策のために多額の費用を掛けて設備を導入させられたといった話もよく聞かれます。

今回は、中国にて土壌・地下水の汚染対策を中心とした環境ビジネスを展開されているハイケム株式会社・エコサイクル株式会社の共同出資中国現地法人/循高(上海)環境技術有限公司の馬総経理より、中国での事業展開や進出の経緯につき、お話を伺いましたのでご紹介致します。

 

中国進出について


图片1.jpgまず親会社である「ハイケム株式会社」および「エコサイクル株式会社」について、簡単に紹介させて頂きます。ハイケムは1998年に設立した会社で、設立以来、日中の架け橋として化学品の輸出入業務や受委託業務を主とした化学品の総合商社として歩んでまいりました。中国においては既に、上海、北京、南通、広州、天津、重慶などに自社拠点を有しています。一方、エコサイクルは土壌汚染浄化の専門会社で、昨年度は環境省が認定する「環境大臣賞」も受賞しており、環境対策のノウハウを有した会社です。両社は、ハイケムがエコサイクルに土壌浄化に使用する薬剤を販売していたこともあり、以前より付き合いがありました。

 そのような背景の中、日本の土壌浄化ビジネスについては、1990年頃より多くの会社がその対策に取り組んできたため既に市場が飽和状態になってきていることもあり、エコサイクルの中で、海外に市場を求める動きがありました。エコサイクルは、既に台湾には拠点があり、他にアメリカ、タイ、インドなどでも事業を行っていましたが、中国においては、ノウハウやネットワークが不足していたこともあり、十分にビジネスが展開できずにいました。そこで、20年に亘る中国ビジネスの経験を有するハイケムと共に事業を展開することとなり、設立された会社がこの「循高(上海)環境技術有限公司」なのです。

 弊社が設立したのは2017年5月と、まだ設立間もない会社ですが、今後、ハイケムの中国における経験や知名度、エコサイクルの技術力を十分に活かし、ビジネスを軌道に乗せていきたいと考えております。

 

中国の環境問題について

中国では、経済の発展に伴いこの20~30年、環境への被害が年々深刻な問題となってきており、国としても対策を講じなくてはならない状況となってきています。こういった状況の中、政府は近年、法律・法規を整備し、製造業への取締りの強化を実施しています。しかし、「大気」や「水質」といった目に見える問題の対策が進む一方、「土壌」についてはその被害状況が目には見えず、すぐには判明し難いことより、その対策が遅れがちになっています。しかし、土壌の問題は「水質」の問題にも繋がっています。雨が降ると土壌中の汚染物が溶け出し、地下水に浸透し、川に流れます。よって土壌を浄化しないと、本当の意味で水質も改善されないのです。また土壌汚染は、複雑で対策が難しいといった側面もあります。汚染の原因が一種類、二種類だけでなく、複合しているケースも多く、そのため土壌汚染対策が後回しにされている面もあるのです。

 近年、土壌汚染の問題が世間に大きく取り上げられる事件がありました。2016年に常州のとある学校で発覚した問題です。その学校では、グラウンドで運動をしていた学生などに白血病等の被害が相次いで検出されたのですが、その原因を調べたところ、学校が建築される前にその土地に存在していた某農薬生産会社による汚染物の土壌への廃棄が疑われたのです。学校が建築された時点では、建築前に土壌調査の実施が義務付けられていなかったため、汚染状況の調査もせずに学校を建ててしまったようです。

 こういった問題もあり、世間でも土壌汚染対策の必要性が取り沙汰されるようになり、今年は、中国で初めての土壌・地下水汚染に特化した法律である『土壌汚染防治法』が施工される目途となっております。こういった法律が施行されれば、中国においても土壌・地下水の調査および対策が加速していくことでしょう。

 

中国での環境汚染対策事業

 弊社では、土壌汚染状況の調査から、調査結果を中国の法律に照らし合わせて問題がないかの診断、修復が必要な場合の提案からその実施まで、土壌・地下水対策に係る一貫したサービスを提供しています。日本のエコサイクルの技術力を活かした提案が弊社の強みであり、日本では既に500件近い修復の実績があります。

土壌汚染浄化といってもその手法は様々で、「バイオ浄化」から、「化学酸化法」「洗浄」「熱処理」「焼却」など多くの対策方法があり、弊社では、汚染状況やお客様の予算、工期などに応じて最適な提案をさせて頂いています。なお「バイオ浄化」の手法を提案するケースが多いのですが、この対策方法は土壌に穴を掘り、その穴から薬剤を入れることで土壌中の汚染物質を食べてくれる微生物を増やす工法で、比較的コストも低く、工場の生産を停めずに実施できる点に優位性があります。

 先ほどお話ししたように今年を目途に、中国においても土壌・地下水関連の法律が施行される見込みにあることより、今後、生産型企業においては、より一層の対策強化が必要と言えます。例えば、工場撤退や他の企業へ土地使用権を譲渡する際にも、土壌調査は必須となってきますので、企業においては、定期的に「健康診断」をするような感覚で調査をしておくことも有効ではないでしょうか。

 

最後に

图片2.jpg 中国における環境ビジネスは煩雑で、多くの仕事は政府が関連するビジネスであるため、中国でのネットワーク強化・知名度の向上が非常に重要です。エコサイクルは日本では環境浄化ビジネスを約20年行っており実績もありますが、中国においてはまだまだ知名度が少ないため、今後、展示会への参加や環境関連企業との情報交換なども密に行っていきたいと考えています。

 なお先日、中国にて環境ビジネスに関する展示会に参加しましたが、出展している企業のルーツを見ていると、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ諸国、イスラエルなどの国々の技術は多く見られましたが、そこに日本の技術は見られませんでした。中国における環境ビジネスとして、日本の技術導入は全体的に遅れており、日本の企業も積極的に展開して欲しいと感じています。

 日本人には得意な分野があり、細かな点にも気を遣える技術は中国における環境問題対策においても強みになると思います。確かに中国における環境ビジネスは非常に難しい分野ですが、ここで事業を展開することにより日本全体としてもレベルを押し上げることができ、日本の技術も進化させることができます。

 弊社では現在、土壌対策に強みを持っていますが、ここ中国で事業を展開することにより、更に技術レベル・対策レベルを向上させ、製造業の皆様のお役に立ちたいと考えています。環境対策にて何かお困りのことがございましたら、お気軽にお問合せ下さい。

 

※会社情報

親会社    : ハイケム株式会社(本店営業部取引先)・エコサイクル株式会社

現地法人   : 循高(上海)環境技術有限公司

ホームページ : http://www.eco-chem.com.cn/

 

聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 小原

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号