中国進出インタビュー

第 85 回「瞬間の中に最大の効果を!」 株式会社エスピ

どれほど良いサービスや商品を開発しても、人の目に留まらなければ意味がありません。誰にどのように魅せるか、どのように効率的に伝えていくのかなど、企業においては日夜研究されていることと思います。プロモーションの成否が売上に直結すると言っても過言でなく、それは日本であろうと中国であろうと同じ状況です。

今回は、中国にて各種イベントや展示会の企画、運営、プロモーションを営む北京緑色之環営銷策劃有限公司上海(株式会社エスピー・リング東京、中国現地法人)の金子総経理より、中国での事業展開や進出当初のお話を伺いましたのでご紹介致します。

 

 中国進出について

图片1.jpg 弊社が中国で事業を開始したのは1994年になりますが、当時は広告業に対して、中国への外資企業の参入規制があったこともあり、まずは駐在員事務所を構えるところから事業をスタートしました。

 

進出当時は、中国に「プロモーション」という概念がなく、現在のようなコンパニオンを用いた華やかなモーターショーや、イベント要素のある展示会などは存在せず、ただ商品を並べているだけの見本市や、工場の開所式が行われていた程度でした。そのような中、弊社は中国でイベントを企画し、展示会を行うなど、日本の文化やノウハウを徐々に伝えていきました。当時、日系の同業他社は皆無であったため、結果的には弊社がプロモーション文化を中国に持ち込むパイオニアになったかと思います。

 私は2002年より中国の仕事に携わっていますが、中国に来た当初は文化の違いや、物事の考え方の違いに苦労しました。例えば、納期が間近に迫った多忙な時期でも、中国人はプライベート

 

を大切にするため、昼食の時間になるときちんと休憩を取りますし、定時になれば仕事が残っていても帰ってしまいます。仕事を優先とする日本人的な感覚は一切通じず、当時の私にとってはそれがなかなか理解できませんでしたが、今では、日本人のようにプライベートを削ってまで仕事をするのではなく、よく食べ、よく寝て、しっかりと仕事をすることが正しいあり方だと思えるようになりましたね。中国に来て中国人と共に働くことで、多くを学ぶことができたと考えています。

 

事業内容の変化

 中国進出当初と現在とでは、行う事業内容にも変化が生じてきました。2000年代前半は日系企業の中国進出ラッシュで、自動車業界以外にも冷蔵庫・洗濯機などの白物家電業界や、テレビやカメラなど電気機器メーカーも多く進出してきたため、開業式や開所式などのプロモーション業務が中心でした。2000年代後半に入ると、展示会文化が中国にも根付き、アパレルや化粧品業界による店頭でのプロモーションや新商品発表会などの仕事が増えてきました。そして、2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博を経て、中国のマーケットは大きく変わりました。

海外からモノや情報が溢れ、中国の人々の目も肥えてきたため、モノを見る目が養われたのだと思います。プロモーションにしても、他と同じような演出をしていては満足してもらえず、日本と比較しても遜色のないレベルとなりました。特に昨今、中国では、携帯電話でモノを買うことが当たり前となり、リアルとデジタルの境目がなくなりつつあります。プロモーションの手法も大きく変わり始めており、携帯電話を活用したデジタルプロモーションなどリアルとデジタルの融合が進んでおり、その点においては日本より中国の方が進んでいるとさえ感じます。

 時代の変化と共に取引先業種も変わってきました。以前は製造業のお客様が多く、例えばデジタルカメラ業界などからは、季節毎にイベントのプロモーション業務を受けていました。しかし、日本の製品が以前ほど売れなくなり、携帯電話で何でも情報が得られることからリアルイベントによるプロモーションニーズも減ってしまったため、メーカー系の仕事は激減しました

 そこで現在、これまでとは逆に、中国の中高所得層をターゲットとした日本へのインバウンドプロモーションに注力しています。2017年度は中国内12ヶ所でブースを設けて、日本観光のPRを行うなど、中国人向け訪日旅行イベントを実施しました。なお弊社の行うプロモーション活動は主に、日本政府観光局(JNTO)から受託していますが、東京・大阪・北海道など宣伝しなくとも人の集まる地域のプロモーションではなく、地方で、まだ中国の人々があまり行っていない地域にスポットを当てています。最近では、「昇龍道」といわれる中部・北陸地方(富山・石川・福井・長野・岐阜・静岡・愛知・三重・滋賀)を「龍」に見立てた観光ルートが中国の人にも注目され始めており、弊社でもそういった地域のプロモーション活動を展開しています。

なお、縁があって私個人は京都の国際観光大使も務めていますが、地方のブランディングノウハウが溜まってきたこともあり、最近では中国内における地方都市の町興しの依頼などもくるようになりました。この様にまさに今、弊社では製造業のプロモーションから、観光業のプロモーションへ転換している最中にあるのです。

 

最後に

 私はこれまで長い間中国で仕事をしてきましたが、その間にも日中間の政治による様々な問題に直面しました。そして、その度に助けてくれたのはいつも、日本語の話せる中国人でした。日本と中国、お互いがお互いの国を知ることで様々な問題が解消され、楽しいことが増えると思っています。そういった思いもあり、私は個人的に知人と北京で日本語を勉強する中国人中高校生を応援するイベント「日本語アニメアフレコ大会」なども開催しており、より多くの中国人に日本の文化に触れて欲しいと考えています。

 そのためにも我々としては、今後も日本人ならではの、日本のスキルを用いたプロモーション活動を中国で展開し、日本の良さをより多くの人に伝えていきたいと思います。我々のプロモーション活動で、より多くの中国人が日本に訪れ、「中国人が日本を元気にしてくれる」と嬉しいですね。

 

※会社情報

本社/株式会社エスピー・リング東京(八丁堀支店取引先)

現地法人/エスピーライブ上海事務所(北京緑色之環営銷策劃有限公司上海

(ホームページ)http://www.sp-live.cn/

(電話番号)+86-21-6472-5140

 

聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 小原

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