中国進出インタビュー

第 76 回「MARKETING × IT」FUSION(上海富佳信息技術有限公司)
 
中国では、日本以上にサラリーマンを辞めて起業する人が多くいます。上海に駐在している私も、中国では新たなビジネスが出来るのではないかと考えてしまうほど、中国にはビジネスチャンスがある雰囲気を感じます。しかし実際に起業して、成功している日本人は多くはいません。そのような環境でIT会社を上海で立上げ、現在は①WeChatを活用したマーケティング、②オープンソースを活用したシステム開発、保守サービスを提供しているFUSION(上海富佳信息技術有限公司)の澤戸総経理に、起業の経緯から現在のビジネスモデルについてお話を伺いましたので、ご紹介致します。
 
 
◆ 中国での起業
seed1.jpg1.jpg
(左から)志水部長、澤戸総経理、劉COO
私は中国・吉林省生まれのクォーターで、小学校から大学卒業まで日本で育ち、日本で前職となるパッケージソフトを販売するIT企業に勤めました。そのIT企業に勤めて間もない頃、会社が上海現地法人の位置づけをオフショア開発拠点から中国国内向けの販売拠点へと方針転換。そして当時営業に属し、言語の問題がないであろう入社2年目25歳の私が中国営業担当として上海へ派遣されることになりましたが、これが私が中国とビジネスで関わることになったきっかけです。
上海に営業として赴任した当時、日常生活で中国語が出来るからといっても、IT専門用語の中国語はわかりませんでした。その状況に加え、当時の会社の営業方針が日系企業への営業ではなく、中国ローカル企業の開拓を掲げていたため、中国の銀行や有名ホテルなど通常では取引できない中国大手企業に飛び込み営業していましたが、当時の苦労は今でも忘れません。ある日、中国の製薬会社に飛び込み営業した際、苦労してなんとか社内に入り込め、担当者であろう人物に名刺を渡せたものの、その人物に目の前で名刺を破り捨てられたこともありました。
日本では飛び込み営業で成果をあげることもできますが、商習慣の違いから中国では受け入れられず、中国ローカル企業向けの販売は伸び悩んでいました。その状況を受けて日本本社も方針を変更し、中国に進出している日系企業へ営業を開始したのですが、当時、業務効率化のためにIT投資を行う日系企業は少なく、様々な手法でアプローチを行い大手日系企業に採用頂けるまでに3年の年月を要しました。
駐在期間が3年を過ぎた頃、日本本社から日本への帰任の打診があったのですが、その際に帰任すべきか、中国で働き続けるべきか悩みました。と言いますのも、日本で営業しますとお会いする方はIT担当者で、話す内容がどうしてもITに関する話だけになってしまいます。しかし中国で営業しますと、日本ではお会いするチャンスがない経営者の方と直接お話できる機会があり、ITだけの話ではなく、ビジネス全体の話を聞くことが出来ます。
そのような状況に加え、中国で営業していた際、中国に進出している日系企業がITに投資したいけれど、知識や費用の観点からITに投資できない悩みを聞いている中で、オープンソースのITツールを活用した低コストでのIT投資がそれら企業のみを解決できる自信もあり、日本へ帰任することよりも、中国でビジネスを立ち上げる決断をしました。
当時の自分を振り返ると、よく起業したなと思いますよ(笑)。まだ結婚していない独身の身だったから出来たのでしょうが、当時は仮に失敗したとしても、この経験は必ず次の機会で活きると思っていましたね。
 
◆ 事業立上後の営業
今でこそ広さ150㎡の事務所を借りて、従業員も15名在籍していますが、起業した際は、社員は自分一人、パソコン1台と机と椅子しかない、お客様もいない中でのスタートでした。しかしそのような状況の中でも、お客様の悩みを聞いて、オープンソースのITツールを活用すれば、なんとかなるだろうというビジネスモデルは見えていました。
一人で活動していた際、事務所の壁に週間の新規訪問ノルマを掲げて、自分自身でモチベーションを上げていましたね。その訪問活動も徐々に成果が出始め、お客様の数も増え、当社に共感してくれた従業員も入社してくれるようになってきました。ITに悩んでいる企業が多いのは知っていたので、あとは単価を低めに設定すれば、成果に結びつくのは予測できていました。
上海には多くの日系IT企業が進出しています。その中で当社は他社との差別化を図るべく、日本語対応で低水準の価格設定、その上ローカルよりは高い品質というのが、企業のニーズにマッチしたのではないでしょうか。上海に進出している企業は2万社あるとも言われています。その中で中小企業がIT投資にかけられる金額は限られています。私たちも、このIT投資をしたくても出来なかった中小企業を中心に営業を行い、お客様の数を増やしたのが良かったのかもしれません。
 
 
◆ ビジネスモデルの転換
4.jpg
日本へ出張した際、日本のお客様から中国で話題となっていたWeChatについて質問を投げかけられ、その時から企業としてWeChatを活用して何ができるのか研究を始めました。まずは自分たちで体験してみようとWeChatの企業アカウントを自社で開設。当時は日本でインバウンドが注目されていましたので、中国人向けに日本を紹介するポータルサイトをやってみたのですが、結論が見えない中でまずはやってみたところ、非常に面白く、これをどうビジネスに活用できるのか検討を繰り返しました。当時の日本ではまだWeChatが多くの注目をあびていない中、私たちからテンセントグループ(WeChat運営会社)へアプローチをかけ、正式パートナーとして認められ、それが今では日本でWeChatを活用したプロモーション活動で大手企業との契約に結びつく結果に至りました。
またある時、上海でWeChatを活用したプロモーション活動をしたい大手小売業からの相談があったのですが、WeChatを活用したプロモーション活動というのは当時珍しく、このような新しい取り組みに対して大手広告代理店が対応するのには時間がかかっていたため、すぐに動いた当社のアイデアが大手小売業に響き、プロモーション活動を受注。その受注を契機に、プロモーション活動に対応したIT開発から、WEBを活用した顧客誘致活動など、ビジネスモデルがマーケティングに関わる業務に転換してきました。
企業がビジネスモデルを検討する際、まず何で収益をあげられるのか探るべくマーケティングを行います。そこに企業は先行投資を行います。私たちが今まで提供していたITサービスはビジネスモデルが出来上がった後に、効率化などを図る目的のツールとして利用するため、企業の投資優先順位が下がります。そこで、当社は企業が先行投資を行うマーケティングに関わることで、より大きな利益を得られるビジネスモデルを構築できたのです。
 
◆ 当社の強みと今後
CRM(カスタマーリレーションシップマネージメント)という言葉がありますが、これからはFRM(ファンリレーションシップマネージメント)を管理する必要があります。潜在顧客をどう開拓して、その潜在顧客をどう企業のファンになってもらうかが重要な時代です。今まで潜在顧客へのアプローチはメールやダイレクトメールでしたが、これからはSNSなどを活用した情報発信で潜在顧客を開拓する必要があります。この潜在顧客の開拓をどうアドバイスできるか、これを経験してきたのが当社の強みであり、他社とは違うところです。
3.jpg
当社の競合先を見た場合、IT企業だけれどマーケティングはしない、マーケティング会社だけれどITは外部に任せている企業が大半です。当社のようにマーケティングとITを両輪で対応できる会社は少なく、かつ日中間の言語の違いに対応し、SNSを活用した販売戦略の支援からシステム開発・保守までワンストップの窓口で対応できる会社も多くありません。
会社規模が大きくなる中で、人材育成が一番の課題ですが、上海では日本でお会いできない経営者の方々と話せる機会が多く、そのような出会いを通して諸先輩方に様々なことを教わっています。
当社の社員には自分のために働いて欲しいと常々話しています。偉くなるために、お金を稼ぐためには、どう自分自身をレベルアップさせるべきか、社員自身に考えさせています。もし彼らが独立したいなら、応援したいですね。
自分自身、昔は経営者になるとは思っていませんでした。今でも一歩先を行くのが怖い時もあります。しかし苦労しなければ先が見えませんし、一歩を踏み出さなければ前に進みません。失敗は怖いですが、勢いをもって前に進んでいきたいです。
※ホームページ
FUSION(上海富佳信息技術有限公司)http://www.fusion-sh.cn
 
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで
 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 
 
绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号