中国進出インタビュー

第 75 回「あなたの知りたい本当の中国」不動研(上海)投資諮詢有限公司
 
中国で不動産バブルが生じていると言われ始めてから久しく経っています。今や日本と中国の経済は、切っても切れない関係であり、国の経済動向に大きな影響を及ぼす不動産の動きは、我々日本人にとっても非常に気になるところです。
今回は中国で不動産の鑑定、不動産市場調査などを手掛けている不動研(上海)投資諮詢有限公司の粕谷総経理に現在の取り組み、中国の不動産動向等についてお話を伺いましたので、ご紹介致します。
 
 
◆ 中国での事業について
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粕谷総経理
当社の親会社である一般財団法人日本不動産研究所は、旧日本勧業銀行の不動産鑑定部門が独立してできた組織で、不動産鑑定評価制度の確立を目的に設立された不動産鑑定士のプロ集団です。昭和34年に設立以降、不動産の研究調査、鑑定評価、コンサルティングと時代のニーズに沿った業務を手掛けている日本最大規模の鑑定機関です。
当社は、その日本不動産研究所100%出資の中国現地法人であり、3年前の2014年5月に設立されました。現在、職員は私のほか、林(副総経理)、陳(総経理助理)の3名体制です。
当社の主な業務は、中国における不動産の鑑定評価・価格調査に関する業務ですが、会社設立以降、上記以外の業務も進めており、現在では、中国各都市における不動産マーケットの調査や、各種プロジェクトの事業性に係る調査、M&A等における企業評価、工場売却のコンサルティングなども行っています。なお中国各地の有力鑑定業者と提携しているため中国全土をカバーし、日本と同程度の調査期間で、高品質な内容でのサービス提供をさせていただいており、こうした点は弊社の強みに感じています。
具体的には、不動産の鑑定評価・価格調査では、中国に所在する不動産について日本基準の鑑定評価書・調査報告書を提供させていただいているほか、中国現地の鑑定評価書を取得する必要が生じた際は、私どもが現地鑑定会社との間に入り、スムーズに業務が進むように業務内容、スケジュール等の調整を行い、最終的な納品まで提携先とともに責任をもって対応させていただいております。必要に応じて日本語の抄訳対応も行っております。
またその他業務としては、中国各都市の不動産マクロ、住宅・オフィス・商業等に関するレポートをご契約の都市に応じて4半期毎に提供させていただいているほか、オーダーメイドでの調査、例えば、売買・賃貸・開発などを検討している物件に関する個別調査などのお客様のニーズに合わせたレポーティングの対応もしております。なお、レポートをお読みいただいただけでは十分に内容が伝わらないこともありますので、電話会議を含めた報告会を行うなどのフォローも行っています。
私どもが上海に現地法人を設立した理由を表すために、『「あなたの知りたい本当の中国」はここにある!』というフレーズをよく使っています。日本にいますと、情報にバイアスがかかって伝わるケースがよくあります。新聞やニュース、人づてでの情報にせよ、実際とは違ったことが報道されたり、偏った意見が述べられたりしてことも少なくありません。実際の中国の状況を現地から伝えることが私どもの役目であり、意義ではないかと感じています。
 
◆ 中国不動産マーケットについて
中国不動産マーケットというと、新築分譲住宅マーケットを指す場合が多いです。この中国の新築分譲住宅マーケットについて見てみると、ここ数年、一定期間でのマーケットサイクルが確認できます。
図表①をご覧いただけると分かり易いのですが、棒グラフの色の濃い部分が多い時が住宅価格の上昇している都市が多い時で、色の薄い部分が多い時が、価格が下がっている都市が多い時となっており、現在は価格上昇都市が多い時期にあたります。
広大な国土を有する中国においては、都市のランクや都市の所在する地域によってマーケットの違いが現れます。都市を1線級(北京、上海、広州、深セン)から2線級(蘇州、杭州、無錫程度の規模の都市)、3線級以下(昆山程度の経済規模或いはそれ以下)と都市のランクでグループ分けして見てみると、近年息が長く価格上昇が続いてきたのが1線級都市で、また1線級都市から2線級都市、3線級都市に向かって徐々に価格上昇が波及していく傾向がわかります(図表②参照)。なお、日本でも同様ですが、中国でもエリアによって価格動向が異なり、最近では華東、華南エリアの上昇が大きい一方で、東北エリアの上昇率が鈍いなどといった動きも見られます。このように中国マーケットは巨大で、都市のランクや地域などによって様々な価格形成要因が存在し、その動きを一括りに説明することは難しいものとなっています。マーケットを説明する上では「平均」という言葉もあまり馴染まないものと言えます。
1線級都市、2線級都市の多くは昨年まで販売が好調であったことを受けて新築分譲住宅価格は大幅な上昇を示し、その結果、国慶節前後を中心に購入時の頭金割合の規制などの購入制限が各都市の政府より発表されました。この政府による購入規制を受けて、成約量は大幅に減少しましたが、購入制限前の好調な販売により在庫が大幅に減少していたことに加え、近年の土地供給が少なかったことが影響し、需給状況は悪化することはなく、現在価格は高位で推移している状況です。なお、今年に入り、3線級以下都市での販売が好調となっており、マーケットの主戦場は1線級都市、2線級都市から3線級以下都市へと移っています。
当地では「パンよりもパン粉が高い」と揶揄されたりもしますが、土地の払下げ価格が新築分譲住宅価格よりも高いケースも多く、将来供給される物件の価格が現在の価格よりも高くなることが容易に想像でき、そうした価格に消費者がどこまで追随できるかが今後焦点になってくるものといえます。一方、購入制限がある中でも住宅購入する需要者も相応に存在し、価格についても高位で推移している現状に鑑みると、日本とは比較しがたい潜在的な需要者層の厚みを感じます。
中国は第2次産業から第3次産業へと産業転換を進めており、また「一帯一路」などの政策を受けて、従来のエリア・都市の位置づけが変わり、不動産マーケットの見方も大きく変化していくものといえます。こうした変化の中で、日系企業においても今後多くのビジネスチャンスは生まれてくるものと考えます。
 
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図表①:中国70都市 新築分譲住宅価格推移

(国家統計局資料を不動研(上海)にて整理)

図表②:都市のランク別 新築分譲住宅価格推移

(国家統計局資料を不動研(上海)にて整理)

 
◆ 今後の抱負
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弊社はお客様に支えられ、開業3年目を迎えることができました。業務エリアは中国のみならず、香港、台湾を含めた中華圏をカバーしています。最近では、海外案件として中華圏以外に、シンガポールなどのASEAN案件のお問い合わせも増えてきています。
親会社である日本不動産研究所、提携先等との連携を通じて、高品質なサービスを提供できるように日々努めております。現地に拠点があることで皆様に精度の高いタイムリーな情報を発信することができると考えております。
お気軽にご連絡ください。
 
※お問い合わせ先
不動研(上海)投資諮詢有限公司 http://www.reinet.or.jp/?page_id=12979
上海市静安区南京西路1601号越洋広場38階
董事総経理 粕谷孝治
TEL:021-6137-3281
E-mail:koji-kasuya@jrei.jp
 
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 小原 英
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで
 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 
 
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