中国進出インタビュー

第 72 回「真摯に、厳密に、機動的に」上海九誠市場営銷機構
 
日本企業の商品は安心安全で品質が高い。多くの中国人が日本企業の商品へこのようなイメージを抱いているものの、優先して日本企業の商品を購入している訳ではありません。特に上海では中国全土、世界各国から商品が集まり、非常に厳しいマーケット環境が生まれています。この厳しいマーケットの中で、どのような商品PRが効果的なのか。今回は日系企業を中心にプロモーション活動をサポートする上海九誠市場営銷機構(以下、九誠)の郭総経理に中国でのマーケティングの現状や事業内容についてお話を伺いましたので、ご紹介致します。
 
 
◆ 会社立ち上げ
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郭 総経理
私は2001年から4年間、日本へ留学していたのですが、留学時代の2004年に学生仲間と共に日本で起業したのがビジネスに携わったきっかけでした。日本で起業したものの、その会社は僅か半年で倒産。大学を中退し、中国へ戻ることになりましたが、自分の会社を立ち上げたい気持ちは消えず、当時更なる経済発展が見込めた上海へ行き、現在の九誠を立ち上げました。
九誠はイベントプロモーションからオンラインキャンペーンまで、企業の売上貢献を重視した広告キャンペーンの企画と実施を主な業務としています。クライアントはハウス食品やバンダイナムコ上海など大手日系企業から欧米企業まで幅広く対応しています。
現在の従業員は22名、事務所を上海の中心部である静安寺から徒歩圏内に構えていますが、会社を立ち上げた当時は、従業員も事務所もない状況からのスタートでした。イベントプロモーションの業務を本格的に始めたのが2009年。当時、クライアントとの打ち合わせから施工状況の確認まで時間に追われ、事務所に寝袋を置いて1週間に20時間程度しか睡眠が取れない状況もありました。私は仕事に対して苦労を感じないタイプなのですが、この時期は体力面に加えて、プロジェクトのトラブルによる精神的な辛さもあり、これまでで一番辛い経験でした。当時は27歳という若さだからこそ出来ましたが、今では出来ませんね(笑)。その時期の経験から、失敗するプロジェクトの恐ろしさがトラウマのように身に染み、一度受けた仕事は何があっても必ず成功をさせなければならないという思いがより強くなりました。
現在では従業員も増え、大きな事務所へ引っ越すことも出来ましたが、この業務ではクライアントから信頼を得て、イベントプロモーションを任せてもらえるまで約2年という長い年月がかかります。クライアントとのお付き合いも最初は小さな仕事から始まります。しかしどんな仕事でも正確・迅速、高品質かつコストパフォーマンスの高い仕事をすれば、クライアントから信頼を得られ、結果的に、大きな仕事の獲得・会社の発展に繋がります。
 
◆ 業務内容
プロモーション活動では、商品の消費者アンケートや食品の試食販売、新商品の発表会などリアルイベントを多く手掛けています。当社の特徴は他社と比較してコストパフォーマンスに優れていること、そしてローカル企業よりも高いクオリティを維持していることです。この特徴を実現している理由の一つが業務の内製化です。リアルイベントのプロモーション活動は、運営・演出・製作施工・PRの4パートに分け、このパートの殆どを外注に出さず内製化しています。特に製作施工については上海市内に700㎡の自社工場があり、イベント時の装飾などを自社工場で対応することで、品質管理とコストダウンを実現しています。
 
 
◆ 中国での広告宣伝
最近の中国は店舗販売よりもネット販売が重視され、ネット広告に広告費を投入する日本企業が増えていますが、このネット広告には注意が必要です。中国では企業が商品を自社サイトでネット販売するより、天猫や京東などオンラインショッピングモールに商品を掲載して販売するケースが一般的です。しかし自社サイトとは異なり、オンラインショッピングモールでは商品を閲覧してくれたユーザーの行動パターンなど細やかな分析が出来ません。またクリック報酬型の広告を出しても、日本はある程度効果を発揮しますが、中国はインチキなクリックが多いため、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)広告などが売上に貢献した話は聞いたことがあまりありません。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が広く浸透している中国の環境に合わせて、数年前から影響力のあるブロガーなどKOL(キーオピニオンリーダー)のSNSを活用した商品広告が重視されますが、このKOLを活用した商品広告にも注意が必要です。企業から重視されているKOLですが、スタイル自体が新しかったため、評価基準・依頼料の基準がなく、依頼料が年々高騰、現在ではコストパフォーマンスの悪い広告になってしまいました。KOLを活用した広告はSNSに対するコメント数で評価すれば良いのか、何を基準に評価すれば良いのか判断基準が曖昧なため、現在宣伝効果に対する再検証が行われ始めています。
中国のネット広告は日本とは事情が異なるため、日本と同様の手法でネット広告に多額の広告費を費やしても成果が出ないケースも散見されます。また中国のネット広告のトレンドの波は激しく、さまざまな手法が生まれては消えていきます。このような状況の中で、九誠はネット広告だけに頼らず、リアルイベントを実施して、そのイベント情報をマスメディアとネットで情報発信してもらうなど、リアルイベントとネット・マスメディアを組み合わせた広告宣伝をお薦めしています。
 
◆ 従業員と将来
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 「バンダイナムコ上海ベース」
ネーミングライツ発表会
従業員は新卒の人材を多く採用しています。ベテランの核となるスタッフが各業務をしっかりと統括してくれていますので、新卒の人材に対してもある程度自由に仕事を任せています。私たちの仕事は出張が多く、残業も多いなど体力面でハードな部分も多いため、出勤時間はバラバラで10時に全員揃えば良いというように他の会社にはない自由度は持たせています。しかし最近の新卒人材、特に上海人は家庭が裕福なので、仕事も好きなパートは進んで行いますが、嫌いなパートは避ける傾向が強く、自分で会社を立ち上げたいという人も少なくなってきました。
会社を立ち上げて10年以上が経ち、良いクライアントとも取引させてもらっていますが、会社規模は従業員数で最大35人と考えています。業種柄人材の入れ替わりが激しいため、新卒で入社して3年以上会社に残る人は多くなく、規模拡大を目標にしてしまうと、人材が追いつかず、既存のクライアントへのサービスが低下してしまう恐れがあります。自分の目が届く範囲で業務を続け、今後も失敗のプロジェクトは作りたくありません。
もちろん会社の成長と進化を止めるという意味でもありません。今まで経験した運営や施工制作のノウハウを更に磨きながら、広告領域でより幅広くノウハウを身につけていくことに注力していきます。例えば最近弊社が代理店として実施した「バンダイナムコ上海ベース」ネーミングライツの案件もそうですが、2017年はライブやコンサートなどステージパフォーマンスに関わるノウハウも積極的に取り込み、変化の激しい複雑な市場環境に対応できる社内体制を構築していきたいです。
 

 

※情報(URLご参照)

上海九誠市場営銷機構 http://www.kyusei.cn/
 
 
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田 光
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで
 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

 
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