中国進出インタビュー

第 71 回「健康・安心・安全な食を中国へ」拉姆拉餐飲(上海)有限公司
 
上海人にとって日本食は特別なものではなく、日常生活で食べる一般的な料理として受け入れられています。日本から毎年多くの飲食店が上海マーケットへ進出する一方、新規オープン数と同じくらいの飲食店が毎年閉店に追い込まれています。今回はこの厳しいマーケット環境の中、「土風炉」「鳥元」を運営する株式会社ラムラ上海現地法人/拉姆拉餐飲(上海)有限公司の呉総経理に中国での飲食店経営についてお話を伺いましたので、ご紹介致します。
 
 
◆ 日本での就職
seed1.jpg1.jpg
呉総経理
わたしは上海生まれ上海育ちで、日本の大学を卒業しました。卒業後は日本で中国と積極的な取引をしていた商社に就職し、入社した当初は事務作業が中心だったのですが、その会社が中国で新たに合弁会社を設立することとなり、会社立ち上げのプロジェクトに参加するために中国へ赴任しました。当時、わたしは日本で就職したので日本のビジネスしか知らなかったのですが、中国での合弁会社立ち上げに関わったことで、中国企業との交渉や中国での実務を学ぶことが出来ました。
その後、日本で中華料理店の開業を検討していた現在の会社へ転職。最初に手掛けた仕事が「銀座過門香」の立ち上げでした。立ち上げにあたり、力を入れたのが中国各地の料理人の招聘です。私の母親が学校の先生をしていたこともあり、母親の人脈も活用して各地の有名ホテルの料理長にお会いし、重慶料理・広東料理・上海料理など中国各地の腕の良い料理人を10名以上日本へ招聘しました。当時、日本の給与は中国の給与と比べて高かったのですが、国営のホテルを辞めて日本に就職することに不安を覚える方が殆どでしたので、日本への視察や料理長の部下も一緒に雇うなど不安を払拭させるための工夫を重ね、半年以上の準備期間をかけてオープンに至りました。「銀座過門香」の座席数は200席を超え、スケールの大きさからも日本で一躍有名になり、テレビの取材が多く来たのを今でも覚えています。
 
◆ 中国でのビジネス
中国は経済成長と共に食に対する消費も増加、マーケットとしての魅力が増していました。その魅力に加え、当社としても日本で中華料理店を続けていく中で中国の料理人を確保したい思いもあり、2007年末に上海・中山公園に中華料理店「上海過門香」を立ち上げました。味付けを上海に駐在する日本人の口に合うものにしたことで、日本人駐在員や富裕層の中国人に人気があるお店になりましたが、中国は変化が激しく、オープンから8年経った頃に贅沢禁止令が出され、接待の減少に併せて個室の利用者も減り、更新時の家賃が50%以上上がることが重なり、「上海過門香」中山公園店は閉めることになりました。
その後「過門香」ブランドのまま、値段を低く抑えたお店もオープンさせたのですが、当社のポリシーである油少なめで健康的な中華料理というのは、調味料でごまかした味の濃い中華料理に慣れ親しんでいる中国人には受け入れられず、中華料理店の限界を感じました。
その際、私たちの会社の強みを改めて見直した結果、「健康・安心・安全」をコンセプトとした和食で勝負しようと決め、日本で展開する「土風炉」「鳥元」を上海でオープンさせました。
お店の形態を中華から和食に変えたからと言って、料理人や従業員も変えた訳ではありません。そのため、まずは料理人の改革に着手しました。日本食は中華料理と異なり、調理のルールが厳格です。中華はレシピに頼らず長年の感覚で作ってしまう料理人が多いため、レシピに基づいた部下への指導が出来ず、人材育成には時間を要します。しかし日本食はレシピに基づき作りますので指導もしやすく、幸いなことに若い料理人も多かったので、日本から短期で派遣してもらった日本人料理長の教えを直ぐに吸収してくれ、スムーズな和食への転換が図れました。
 
 
◆ 中国人と日本人の違い
2.jpg
土風炉店内
お店には日本人だけでなく、中国人のお客さんも多く来店頂くのですが、日本人の場合はお酒を飲みながら食事をするため、飲み放題つきのコースを注文する人が多く、客単価は平均200元~300元(約3,400円~5,100)と安定しています。一方、中国人の場合はお酒を飲まずに食事だけして帰る人が多く、100元(約1,700円)以下で安く済ませる人から、高い食材を沢山頼んで800元(約13,500円)以上使う人など幅広い客層がいるのが特徴的です。日本人の所得は平均的な水準がありますが、中国人の所得は格差が激しいですので、この所得の格差の違いが食への消費に反映されているかもしれません。
中国人で和食を食べる年齢層は20~30代の若者が多く、40歳以上の世代は刺身など生ものに慣れていない人も多いため、お店では鍋など温かい料理を用意して、家族で来店頂けるようメニューを工夫しています。しかしメニューを工夫すればするほど、品数が増えてしまうため、在庫管理が大変になってきてしまうのが課題です。
 
◆ 上海の飲食店
上海では長年続く飲食店は少ないですが、その要因は上海の人件費や家賃等コスト上昇の問題だけではなく、人材の問題が一番大きいと思います。中国人管理職の中には優秀でも、不正を働いてしまう人はいます。その対策として1人の人間に任せきらず、複数の人間で牽制しあう仕組みづくりが重要です。これは料理の味にも同じことが言えます。中国ではレシピが存在しても、料理長がレシピに従わず、味付けを自己流にアレンジしてしまうことがよくあります。そのため当店では、味付け・盛付けについて料理人に任せきりにせず、わたしから何度も注意します。日本は教育水準が平均的に高いので、指導すればすぐに理解してくれます。しかし中国は地方によって教育水準やライフスタイルがバラバラなので、指導には工夫が必要です。大事なのは環境の違いを理解してあげて、間違えていれば、とにかく言い続けることだと思います。
人材については料理人だけでなく、ホールスタッフの定着にも苦労しています。飲食店のホールスタッフは給与の割に楽な仕事ではありません。そのため飲食業よりも楽な仕事を選ぶ若者が増えており、飲食業以外の異業種と人材の確保を競っています。中国では毎年賃金が上がり続けている状況です。そこで、わたしはいずれ昇給させるならば、先に給与を上げて、みんなに気持ちよく働いてもらい、笑顔でお客様を接待してもらうよう考え方を改めました。給与の負担は大きいですが、従業員が笑顔でいることで、お店の雰囲気も良くなり、結果的にお店の売上げ増加に繋がりましたね。
 
◆ 他の企業と共に
3.jpg
現在、ラジオで毎週水曜日に「東京発ヘルシークッキング」という番組に出演し、中国語と日本語で和食のレシピを紹介しています。今年から番組内容をラジオだけでなく、動画も配信して、材料を提供してくれる他の日系企業の商品宣伝に繋がるような活動も考えています。また「土風炉」の店内ではランチセミナーやイベントなど上海で知り合った色々な方と一緒に企画を立ち上げています。今後も他の企業と一緒に新たな企画に取り組んでいきたいです。
日本では本社に在籍していたので、飲食店の店舗運営には直接関わっていませんでした。そのため上海に赴任してから色々な人と出会い、様々な経験・勉強を通して自己流で店舗運営を成功させることができました。今後も会社の資源を利用しながら、自分自身を成長させていきたいです。上海に駐在してからTVレポーターやラジオのパーソナリティー、イベントの司会などもやっていますが、学生時代の友人からは学生の時は沢山喋る印象はなかったと言われます。そういう意味では今の自分は成長したのかな(笑)。
 

 

※情報(URLご参照)

株式会社ラムラ http://www.ramla.net/
 
 
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田 光
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで
 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

 

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号