中国進出インタビュー

第 70 回「ITで中国の未来を創る」世存信息技術(上海)有限公司
 
日本以上に情報化が早く進む中国では、年齢を問わず誰もがスマートフォンを持ち、ある分野では既に日本を追い抜いたインターネット社会が形成されています。製造業から流通業、そしてサービス業まであらゆる分野で情報システムが必須となった中国へ、日本の多くのIT企業が進出しています。しかし厳しい競争環境の中で全ての企業が成功しているとは言えません。この厳しい競争を勝ち抜き、中国で成功を収めているのが株式会社セゾン情報システムズ中国現地法人/世存信息技術(上海)有限公司です。今回は中国市場の取り組みについて、副総経理の森川真次氏にお話を伺いました。
 
 

 

 

 

  

 

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世存信息技術(上海)有限公司
写真中央:森川副総経理


 

 
 
◆ 中国進出の経緯【リヴァイア】
当社は2005年、日本本社のオフショア開発拠点として上海へ進出しました。当時はコストダウンを目的とした中国進出でしたが、2013年、当時HULFT事業部の副事業部長であった内田社長が、上海での「HULFT」事業における製品開発強化と中国マーケットの開拓強化へ方針転換を決断し、その結果、中国現地法人は黒字化を達成し、現在は中国市場のお客様課題やニーズに応えた製品・サービス、ソリューションを提供する事業を展開しています。
 
◆ HULFT(ハルフト)
当社の主力製品である通信ミドルウェア「HULFT」についてご説明しますと、「HULFT」は大きなデータを送る際、データを圧縮して砕いて確実に送り届けという特殊技術をもっています。そして異なるOS間でもデータの連携が可能で、この「HULFT」を利用することで、データ送信の自動化・効率化、スムーズな長距離データ通信を実現することが出来ます。「HULFT」は日本国内のファイル転送ミドルウェア市場では導入実績12年連続シェアNo.1(シェア率79.9%)と圧倒的なシェアを獲得し、世界シェアでも第4位、世界43ヶ国8,600社の企業にご利用頂いています。
「HULFT」は通信環境が悪ければ悪いほど、通信距離が長ければ長いほど、製品価値を実感頂けますので、通信環境が日本よりも悪い中国でこそ、通信を改善するために「HULFT」をご利用頂く価値があります。
現在中国市場では日本の「HULFT」だけでなく、中国版HULFTとして開発した「海度(ハイドゥ)」の両方を販売しています。なぜわざわざ中国版「海度」を開発したかと言いますと、中国の法律ではセキュリティソースが入った製品を無許可で販売できず、販売する為にはセキュリティの肝となるアルゴリズムを提示しなければなりません。しかしアルゴリズムを提示することは、当社製品が模倣されてしまうリスクがあります。そのため、中国専用にローカライズした「海度」を開発する必要があったのです。
 
 
◆ 中国マーケット開拓
日本本社が今後の海外展開の方針を示していますが、今後も低コストを理由に中国を利用することはありません。「HULFT」の製品価値を考えますと、中国のみならず、世界中でもコストダウンを目的としない海外展開を目指しています。
「HULFT」を世界で販売していく上で、世界の中でも中国は一番重要な市場です。この市場の中で「HULFT」ユーザー数の増加は、市場性を考慮すると中国ローカル企業となるのは正攻法の考え方であり、中国ローカル企業と取引を始めたことで当社の売上も伸びてきました。
しかし中国マーケット開拓も最初から順風満帆だった訳ではありません。まずこの中国では、中国企業にセゾングループ・HULFTの名は知られていません。そのため、今でも会社と製品の認知活動には骨を折っています。日本ではメール等ITを駆使した企業PRが考えられますが、中国は事情が違います。私が感じているのは、中国では日本の1980~1990年代のように、人と人との繋がりを活かした営業が重要です。中国のIT産業はこの10年で急速に発展してきましたので、中国人の中にはITを信用せず、効果が目に見えないITを導入することに抵抗をもつ人達が多いです。そのため、信用できる人からの紹介や説明でなければ、導入する意思決定をしてくれません。
当社も中国で会社と製品を認知してもらうために、セミナー・勉強会を継続して開催していますが、実際の販売活動は自分たちの足で販売先を訪問する、人脈を使って販売先に辿りつくという地道な活動が結果に繋がっています。日本と同じ方法を取りたいのですが、中国では出来ません。自分たちから販売先を見つけていくしかないのです。
また当社は昨年中国で、第8回ソフトウェアイノベーションフォーラムで「優秀製品賞」、第9回中国CIO年次大会で「2016年度顧客信頼製品賞」を受賞しました。これは品質の良さ、導入件数、別の企業からの推挙など多くの点を評価頂いた結果受賞できたものですが、IT業界に限らずこれから日本企業が中国マーケットを開拓していくためには、中国で表彰される、中国での信頼を積み重ねていくことが大切かもしれませんね。
 
◆ 日本ビジネスとの違い
中国でビジネスしていて感じる良い点は、結果にコミットすること、そして、まずやってみようというポジティブな姿勢ですね。まずやってみて、やった後に修正していこうという考えですので、経営者・管理者には素早い判断スピードが求められますが、成功すれば急成長を遂げられます。一方悪い点は、成果を重視するあまり、日本のような事前の綿密な計画をたてませんので、方向性が定まらないことがあります。また中国は政府政策の影響力があまりにも強いため、将来の安定した成長が読めないことも悪い点として挙げられます。
日本における「HULFT」のユーザーは製造業、金融業、流通業、情報通信業といった分野が現在のメインですが、中国では日本と異なる分野を開拓しています。これは中国と日本のマーケット環境が異なるからで、中国は政府政策に基づいたビジネスが多く、当社も日本と同様の動きをしていては大きな成果を期待できません。今後農業や養老介護分野の開拓を進めていきますが、この分野は中国政府が今後発展させることを掲げている国策に合致しています。
 
◆ 日本人駐在員の役割
中国で成功している日系企業に多く共通しているのは社長(総経理)が中国人、そして中国市場を攻めている点です。当社総経理の張圃は日本に帰化していますので、当然日本企業のフォローも得意なのですが、元中国人としての人脈を活かして当社の中国マーケット開拓を先導してくれています。
このような状況ですので、極端なことを言いますと、私のような日本人駐在員は必要ではないのかもしれません。一方で、日本の企業として日本と仕事を進めていく上では、日本人駐在員は必要な緩衝材としての役割があると感じることもあります。
中国市場の中で、日本でのマスコミ報道により日本企業の立場は下がっているように感じている方も多いかもしれませんが、中国企業の日本製品に対する評価・関心は依然高いものがあります。現在取り組んでいる農業についても、実際に日本企業の製品を是非使いたいという中国企業の要望がありました。このような日本企業に対する中国企業の関心・要望を収集・実現するのは日本人駐在員でしか対応出来ないでしょう。
 
◆ 中国で働くために
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2016年上海マラソン参加
写真左:森川副総経理
日本人が海外で働く場合、現地の文化を完全にものにして、現地の人以上の成果をあげることは出来る方はどれくらいいるのか、たぶん少ないでしょう。しかし人は努力によって、現地の文化を理解することは出来ます。だからこそ、私はこの理解する努力を今後も続けていきたいのです。
日本と環境が異なる中国で働くためには柔軟性、行動力、決断力、提案力、へこたれないタフネスさが求められます。中国で生きる為には「どんなにひどい目にあっても、一晩寝たら全て忘れて何もなかったように振る舞う」と昔の友人が教えてくれたことを今でもよく思い出しますね。
 
◆ 最後に
海外に進出している日本企業がやらなければいけないことは、その国に貢献することです。日本企業は製品・サービス・文化、様々な分野で中国に貢献できます。私はこの会社を今後100年中国で存在させ続けるためにも、サイバー空間上の土管屋としてお客様にデータのやり取りを約束し、会社を堅実に成長させ、中国に貢献していきます。
一方で、日本本社のセゾン情報システムズが国際色豊かな国際競争力を持った会社になれるよう貢献したい思いがあります。そのためにも、この中国拠点を成功させ、中国拠点がセゾン情報システムズの海外事業全体の成功の足掛かりになれるよう、私はこの会社と製品の紹介を続けていきます。
 
話は変わりますが、去年、上海のハーフマラソンに初めて参加しました。参加したのは会社のイベントだからという訳ではありません。マラソンは走ったことがないので、本音は参加したくなかったのですが、自分自身が成長するためには壁を越えなければならないと感じ、参加を決断しました。
このマラソンへの参加は、自分自身のためだけに参加したのではありません。この困難に立ち向かう姿、勇気を中国人従業員に見てもらい、努力し続ける大切さや達成感を少しでも共感してもらえたいと思い、参加を決めたのです。自分自身のためだけに頑張るのではなく、会社のため、中国人従業員のため、周囲の人のために頑張る心持ちが中国ビジネスでは大切ではないでしょうか。これからも私はこの会社の発展のため、従業員のため、公私共に走り続けます。
 

 

※情報(URLご参照)

株式会社セゾン情報システムズ http://home.saison.co.jp/
 
世存信息技術(上海)有限公司 http://www.hulft.com/zh/
 
HULFT(ハルフト) http://www.hulft.com/
 
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田 光
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで
 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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