中国進出インタビュー

第 68 回「世界にチャレンジする企業を応援」北青山インターナショナル
 
中国と言えば、偽物。そういうイメージをお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。最近では中国政府も知的財産権保護を重視して様々な施策に取り組んでいますが、街中で見かける偽物ブランド、中国企業に模倣される日本製品という問題は後を絶ちません。日本企業の中には、中国でビジネスをすると模倣されるから、中国でビジネスをするのを敬遠される企業もいます。この状況に対して、日本企業はどのような対策を取るべきなのでしょうか。今回は、海外における産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権及び商標権)保護のサポートを行っている北青山インターナショナルの髙橋代表、柴田副代表にお話を伺いましたので、ご紹介します。
 

 

 

 

  

 
 

◆ 北青山インターナショナル
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髙橋代表
当事務所の前身である柏原国際特許事務所は、1993年の創立当初より、創立者であった柏原弁理士が英語堪能であったことを活かして海外に多く出向いたことから、現在でも業務の半分以上が外国関連案件となっています。当時は1人の弁理士に数人のアシスタントがつくという、5人以下の小規模の弁理士事務所が多く、積極的に海外業務に取り組む小規模事務所は珍しい時代でした。
現在の北青山インターナショナルでは、情報処理・半導体技術・医療機器技術など各専門分野に強い弁理士を揃え、あらゆる特許技術に対応できる体制を整え、国内のみならず、長年続けてきた海外での産業財産権保護のサポートに注力しています。
お客様からのご依頼も時代の変化と共に変わってきました。昔は大手電機メーカーが相当数の特許を国内外に申請していましたが、時代の変化と共に電機メーカーからの依頼が減少、その代わりにITなど情報処理関連のご相談や、海外分野では医療機器関連のご相談が増えてきています。
 
◆ PCT国際出願とinovia
特許を海外数ヶ国で出願する際に活用できる「PCT(特許協力条約)」はご存知でしょうか?知的財産の権利は国ごとの法律に基づいて決められ、特許は原則として国ごとに申請・取得しなくてはいけません。また特許は早い者勝ちの世界ですので、早く申請手続きをしなければなりませんが、世界各国で同時に申請手続きを行うのは困難です。そこで活用されているのがPCTです。このPCTに申請すれば、世界各国の加盟国全てに特許出願したのと同じ効果を得ることが出来るのです。
しかしPCTに申請すれば全ての手続きが終わるわけではありません。申請後一定の期間内に、実際に特許を取得したい国で、改めて移行手続をする必要があります。
そこで問題になってくるのが、依頼先と費用です。まず、その国の特許庁に特許申請できるのは、その国に登録している法律特許事務所だけです。そのため、企業は海外で信頼できる依頼先を選定しなければなりません。また海外で特許申請する場合、日本の特許事務所を通して、海外の法律特許事務所が申請するケースが多くありますが、諸外国の事情により、企業が支払うべき外国出願に関する費用が不透明で当初よりも費用が膨らんでしまったケースも散見されます。
この問題を解決するのが「inovia」です。inoviaはPCT加盟国100ヶ国以上の法律特許事務所とエージェント契約を結び、ウェブを通じて簡単に海外のエージェントへ発注・見積することが出来るポータルサイトで、企業の海外の依頼先を捜す手間や時間、そして費用を大幅に低減させることを実現させました。inoviaが選定するエージェントはそれぞれの国に1つか2つだけですが、北青山インターナショナルはinovia設立当初から日本エージェントとして選定されています。
 
◆ 中国での産業財産権
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世界の出願件数を見た場合、この10年で中国の特許出願数は約5倍に増え、現在では日本やアメリカを抜いて特許・商標・意匠ともに出願件数が世界一となっています。以前の中国には特許法が存在しても守ってくれない、平気な顔して侵害品を製造しているという印象があるかもしれませんが、この出願数の伸びを見る限り、以前の中国政府とは姿勢が変わり、本格的に知的財産権の保護に取り組み始めているのを感じます。
欧米企業に聞きますと、中国はビジネスが現時点で始まっていなくとも、まずは出願だけはするようにしているそうです。以前はアメリカと日本とヨーロッパ(特にドイツ)にまずは申請する傾向でしたが、その中に中国が入ってきて、最近では寂しいことに海外企業の日本での申請が減ってきていますね。
ニュースで聞いたことがあるかもしれませんが、日本企業の社名やブランド名が中国で先に商標を取得されてしまっているケースは実際に多いです。驚くことに、有名な企業やブランドだけでなく、日本でもまだ一般的でないブランド名や商品名の商標も先に取られてしまっていたこともありました。また、いざ中国でビジネスを行おうとした際、中国だけは自社のブランド名を使えないこともありました。中国は日本と同じ感覚ではない点を認識頂き、中国で直ぐにビジネスを行う予定がなくとも、商標は先に申請しておく必要はあるかもしれません。
このようなトラブルに対して中国で訴訟を行った場合、日本企業にとってアウェーで不利なだけでなく、中国人は粘り強いので、訴訟が長引くケースが見受けられます。その状況を考えると、商標取得のコストは大きいものではありません。
また中国からは、日本へ多くの侵害品が入ってきます。日本で人気がでた日用品は、直ぐにコピーされて販売されています。このコピー品に対して販売停止の交渉や通知を行うためには、まずは日本で権利を取得しておく必要があります。権利さえ持っていれば、税関に権利を登録して、輸入する前に事前に差し止めすることも出来ますが、そのためにもまずは日本で権利を取得するべきなのです。
特許など権利に対しては、海外企業の方が日本企業以上に意識を高くもっています。しかし日本でも徐々に変化が見られます。日本では共通の常識のもと訴訟に至ることは滅多になく、訴訟手前で終わることが多いのですが、訴訟手前の水面下で交渉するケースはそれなりに存在しており、増加傾向にあります。
中国は以前、海外からの出願依頼に対応できる特許法律事務所は政府から許可を受けた事務所だけでした。その許可制度もなくなりましたが、現在でも海外からの依頼に対応できる事務所は少ないです。商標はどの事務所でも申請できますが、申請だけで終わるものではなく、申請した後もメンテナンスをしなければなりません。そのため、信頼できる特許法律事務所とお付き合いする必要があります。
中国では産業財産権に関するトラブルは発生していますが、トラブルになった後では対応できないことも多くあります。特許など産業財産権というものは、中国でも日本でも転ばぬ先の杖のようなものです。トラブルになった時のことを考えれば、手間と費用はかかりますが、権利を取得することは大切です。
 
◆ 今後の抱負
海外に限らず様々な相談が増えています。自社商品が侵害品だと警告書が届いたケース、外国から権利取得に関する振込め詐欺みたいなケース、様々なご相談を頂きますが、実際には言いがかりや詐欺まがいものが多いです。このような事案に対しては知的財産権の知識が必要となりますが、社内に知財部がある企業は大企業だけです。中堅中小企業の皆様には北青山インターナショナルを自社の知財部としてご活用頂きたいです。
先ほどお話したとおり、技術大国と言われた日本が特許申請件数で中国に抜かれたのは、サポートしている立場でも悔しい思いがあります。今後も、海外にチャレンジする日本企業を応援して、技術大国・日本を盛り上げていきたいですね。

 

※情報(URLご参照)

特許業務法人 北青山インターナショナル http://www.kipb.net/home.html
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田 光
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで
 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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