中国進出インタビュー

第 65 回「世界の医療健康福祉をネットワークする」悠逸建築設計諮詢(上海)有限公司
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<焦 総経理>

世界の中でも高齢化が進んでいる日本、今後高齢化が進む中国。高齢者ビジネスに携わる多くの日本企業が、今後高齢化が大きな問題となる中国でビジネスを始めるべく、中国で様々な活動を行っています。しかし現在の中国市場は大きな可能性を秘めているものの、日本企業にとって多くの困難が待ち受けています。今回はこの中国高齢者ビジネスに対し、専門である老人ホーム等の設計だけでなく、高齢者ビジネス全般のコンサルティングを行っている株式会社ユニバァサル設計中国現地法人/悠逸建築設計諮詢(上海)有限公司の焦総経理に中国介護福祉の現状、中国での事業展開についてお話を伺いましたので、ご紹介します。
 

 

 

 

  

 
 

◆ 中国介護福祉事情
日本では2025年に団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が注視されていますが、中国も一人っ子政策時代に生まれた一人っ子達が親たちの介護を始める時期が2025年と、中国も日本同様に「2025年問題」を抱えています。また中国の人口数は日本の10倍以上いますので、既に中国の高齢者(65歳以上)数だけで日本の全人口を上回っている状況になってしまっています。2015年12月時点中国の高齢比率(65歳以上の人口が占める割合)は10%です。
この深刻な問題を控えているにも関わらず、中国では介護福祉に関わる制度・施設・サービスが未成熟の状況です。例えば老人ホームなど養老介護施設についても、投機目的で建設しているケースが多く、実際の運営管理まで考えられていないため、採算が合っていない施設が殆どです。施設を建てる場所も、都心から離れているエリアなど土地の値段が安い場所に建設した場合、近隣住民の所得が少ないことから入居料を高く設定できません。また高所得者層が多い都心部に建設した場合、都心部の土地の値段が高いため採算が合わないという難しさもあります。
介護士の確保も大きな問題です。介護士と言っても、既存の養老施設(都心部では福利院、農村部では敬老院)で行う業務内容は清掃と食事を出す程度のもので、働いている人は40歳以上の農村部出身者で学歴が低い人が多く、専門資格・知識を持って働いている人が非常に少ない状況です。そして、介護士の給与設定は低く、低い給与の割に労働条件が厳しいため、結果、離職率が高くなるという悪循環が生まれています。
 
◆ 国際医療健康福祉協会
当社が中国に進出したのは2008年に遡りますが、当初は日本本社向けの仕事を行うことが主な目的で中国へ進出しました。しかしその後、日本で福祉施設の設計を手掛けていた当社へ、中国国内から養老介護施設の設計に関する問合せが増えてきました。
当社は中国の介護福祉の現状から、施設の設計のみを提供するのではなく、介護福祉全般に関する情報・モノ・サービスを提供する必要性を感じ、2013年4月1日、日本企業と中国企業の福祉交流を目的とした一般社団法人国際医療健康福祉協会を設立しました。
協会では介護ヘルパーや介護士などの人材育成、医療介護福祉関連製品・器具の販売支援などを行っていますが、介護専門人材の育成については中国の専門学校などと提携し、卒業生を対象に日本で2年間の介護に関する研修を行おうとしています。現在は日本での看護資格取得を目指した研修となっていますが、日本の実習生制度改正が行われれば、介護資格取得を目的とした研修も開始する予定です。
 
◆ 中国での苦労とビジネスチャンス
日本では個別の施設の設計だけでなく、街づくりや復興事業にも取り組んできました。しかし中国では都市計画を海外の企業へ発注することはなく、中国国内の都市計画の専門事務所に発注しています。また設計だけでは他社との競争が激しいため、顧客へ設計にプラスアルファしたものを提供する必要性があり、中国では設計に加えて、介護福祉に関するコンサルティングも行っています。
中国では養老介護施設を建てたものの、運営管理に対する知識やノウハウがない企業が多く存在します。私たちは日本の病院や養老介護施設などの設計を多く手掛けた経験やノウハウを活かし、中国では養老介護施設設計後の運用管理についてもアドバイスしています。
中国国内の受注先の殆どが中国企業で、中国進出後に一番苦労したのが資金回収です。中国ではよくある話ですが、私たちも過去資金回収が出来なかったケースがありました。その後はこの経験を糧に、人脈を活かして信頼できる先だけと取引したり、当社にロスが出ないよう資金回収に工夫を凝らしたりしていますが、それでも回収リスクがゼロになることはありません。しかしこのリスクをあまり恐れてはビジネスチャンスを逃してしまいます。時にはチャンスを掴む大胆さも、ここ中国では必要です。
中国の福祉介護については問題が点在します。しかし問題があるからこそ、そこにチャンスが存在します。設計は商品販売と違い、目で見る差別化が難しいものですが、日本企業のソフト面に対する中国側の信頼とニーズは非常に高いものがあります。今後は本業である設計業務を安定させつつ、福祉介護業務に注力していきますが、介護については1社で全てを行うのではなく、介護福祉に関わる様々な日本企業と協力して取り組んでいきたいと考えています。
 
 
 
 

※情報(URLご参照)

株式会社ユニバァサル設計(八千代銀行相模台支店取引先):http://www.ud-jp.com/
一般社団法人 国際医療健康福祉協会:http://jp.imhwa.com/_d1479.htm/
 
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田 光
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで
 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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