東洋合成工業株式会社は液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、半導体デバイスの製造に欠かせないフォトレジスト用感光性材料分野で世界トップクラスのメーカーです。当社は2015年中国市場の更なる情報収集のため、上海事務所を開設。今回は上海事務所の代表を務める邵東偉氏に活動内容や中国の現況についてお話を伺いましたので、ご紹介します。

 

弊社の上海事務所の開設は2015年になります。以前より中国は重要な調達拠点として取引がありました。ご存知の通り中国は日本の26倍という広い国土があり、ファインケミカルの生産に必要な原材料が豊富なだけでなく、ファインケミカルを生産できるメーカーも世界の中で最も多く存在している国です。

弊社にとって中国の重要性は年々増しており、中国の状況をより深く知りたい、そして既存のサプライチェーンをより強化したいという思いから、上海に事務所を開設しました。

日本で既に使用している原料より安価で良質な競争力があるものが中国にはまだ沢山存在しています。また日本本社が新製品を開発する際、新しい原料が必要です。中国には、この新しい原料を供給できるメーカーが沢山あります。このような既存原料の代替品となるもの、新しい原料を発掘するのが当事務所の役割です。

日本本社と中国メーカーとの商流に、商社に入ってもらうこともありますが、この分野では全てを商社にお任せすることが出来ません。なぜなら、ファインケミカルと一言で言っても、医薬品や化粧品など業界が違えば全く別の分野と言って良いほど、種類が豊富で、かつ高い専門性が必要になります。そのため、商社にメーカーや原料を探すことを一任することが出来ず、自社で探すしかありません。直接メーカーに連絡し、お互いの要望を伝え合うなどコミュニケーションを図る、この役割も当事務所が担っています。

 

私が中国から日本へ渡ったのが1998年。留学生活と日本での就職・勤務を経て、駐在員として昨年17年ぶりに中国へ戻ってきました。日本本社勤務時代も定期的に中国へ出張していましたが、17年ぶりに生活してみますと、昔と比べて広い道路や高いビルなど街の外観が大きく発展していること、ネットビジネスが日本以上に進んでいることに驚かされました。そして中国ではインフレが進んでいることを実感しています。昔は毎月の給与が90元という時代でした。通貨の価値も今の100元が、昔の1～10元という感覚です。17年前は日本の物価は中国より高いという印象でしたが、今ではその状況が逆転して、上海の物価が日用品の値段でさえ日本以上に高くなっていることに驚かされています。

日本では中国経済失速などの報道もされていますが、私は現在の経済環境は一部問題があるものの、中国政府のコントロールの範疇にあると考えています。中国経済のメインプレイヤーは未だ国有企業ですので、国が企業・経済に関与する影響が大きく、他の国の市場経済とは事情が異なります。また中国は原材料の調達から製造、そして消費まで、全ての産業が中国国内で自己完結することが出来ます。一つの国が産業を外需に頼らず、自国で自己完結出来るため、中国政府は経済のコントロールに自信があるのではないでしょうか。

 

中国市場の把握は一筋縄ではいきません。私は中国・南京の出身ですが、小学校から日本語を学び、1998年から日本で生活していますので、日本語には全く不自由しません。しかし、先ほどご説明したとおり、業務では幅広い知識が必要な上、特に製品名が化学記号で表記されるため、この専門分野の中国語を日本語に翻訳することには苦労しました。

また中国は、日本のように企業一覧や製品一覧のような業界・会社情報を纏めたデータベースが成熟しておらず、特にケミカルの分野では情報が少ないため、目安となる平均価格などを把握できません。中国企業は取引を始めないと本当の情報を開示しないため、インターネット上の情報も大きな価値がありません。実際に中国企業と接触して、コミュニケーションを図ることで、ようやく相手の情報を掴めます。この情報収集を行うためにも、上海に拠点を構える必要性はありました。

今後はこの状況をより改善すべく、更に専門用語・専門知識の習得に励み、日本本社が必要なメーカーや製品が直ぐに見つけられるようなシステムを確立し、日本本社の発展に貢献してまいります。

東洋合成工業株式会社：http://www.toyogosei.co.jp/