中国進出インタビュー

第 59 回「中国で出会う日本の香り」雄輝(青島)酒店管理有限公司
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今や日本で当たり前の光景になった中国人観光客の爆買い。日本への中国人観光客増加の背景には、中国人の所得上昇、日本への旅行ビザ条件の緩和、円安、日本製品の安心感など幾つかの要因が挙げられますが、この爆買いも尖閣諸島問題が話題となった数年前には考えらない現象でした。
日本と中国。隣国であるが故に様々な歴史や感情が交わり、時に衝突することもあります。この複雑な関係が続く両国の架け橋になるべく、中国で日本のおもてなしの心を体現している企業があります。今回は中国・青島(チンタオ)で日本旅館「永日香」を運営する雄輝(青島)酒店管理有限公司の竹内董事長に中国で体現するおもてなしの心、従業員の教育方法についてお話を伺いましたので、ご紹介致します。
 

 

 

 

  

 
 

◆ 日本旅館「永日香」
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中国・青島は中国沿海部の経済都市で、常住人口は約780万人。在留日本人は1753名、日本企業も1000社以上青島に進出し、街中ではイオンやセブンイレブンなど日系小売店を見かけることが出来る程、日本との結びつきが強い都市です。
この青島で、中心地ではない、小売店や飲食店など日本とは全く関わりが無いローカル店舗が並ぶ旧市街を歩いていると、目の前にパッと現れるのが日本旅館「永日香」です。
なぜ中心地ではない旧市街に日本旅館があるかと言いますと、この旧市街は、昔は日本企業の繊維産業の拠点であり、永日香も約80年前に日本人が設計・建築した建物を改装したものだからです。外装は写真の通り当時の面影を残していますが、内装はしっかりとした木製の階段以外は全面的にリフォームを実施しました。内装で使った柱の一部は中国国内で希望通りの木材を調達できなかったため、ロシアから輸入せざるを得ないなど多くの苦労もありましたが、1年以上の準備期間を経て、2010年に日本旅館「永日香」をオープンさせることが出来ました。
現在、永日香を訪れるのは中国人観光客ばかりですが、正面の門をくぐり旅館入り口までの道で眺めることが出来る緑あふれる日本庭園や、玄関で出迎える着物姿の従業員(仲居さん)など、日本へ行かなくとも、この青島で日本を感じて頂けます。
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そして館内で歴史ある木製の階段を上り、部屋に入って頂きますと、床の間や座椅子、畳を敷いた和室など日本の旅館と全く同じ光景をご覧頂けます。また部屋の設備は洗浄機付き便座をトイレに完備し、中国では珍しい日本式の洗い場と肩まで浸かれる深い浴室を設けていますので、旅の疲れもお取り頂けます。勿論、朝食は日本式の朝食を準備していますし、本格的な懐石料理も堪能頂くことが出来ます。
永日香のコンセプトは「中日の架け橋」です。中国人が日本に行かなくとも、永日香で日本の宿泊設備やおもてなしを体験出来ます。また日本人が気軽に中国を個人で体験出来ることを目指しています。
 
◆ 「永日香」の魅力と従業員教育
永日香の旅館名は、日々絶え間なく茶の薫煙が香ばしく漂っていることを指す「茶烟永日香(ちゃえん、えいじつかんばし)」が由来となっています。異国にあって「和」のもてなしと空間を提供したい、末永く日本の香りと雰囲気を伝えていきたいという思いそのままに、永日香では中国で日常体験できない空間を実現させることが出来ました。
そして、この空間を実現させる上で重要なのが「おもてなしの心」です。この「おもてなしの心」を従業員に徹底させることで、永日香の良さを更に際立たせています。
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        自分で着付けも出来る従業員
永日香では料理長含めて日本人が一人もいません。また従業員の殆どが入社前に日本へ行ったことがありません。そのため私が毎月、青島へ渡航し、旅館滞在中に従業員と食事をしながら意見交換を行ない、中国の若者が直面している問題や子育てのあり方など様々な話題を通して指導しています。時には従業員を日本へ呼び、日本の長所短所を見せて回るなど、経験を通じて物の見方や考え方を学ばせ、従業員一人ひとりの人間教育を行っています。結果として、この指導から従業員との信頼関係が生まれ、そこから向上心が芽生え日々の努力が土台となり、従業員に「おもてなしの心」が身に付いていったのです。
中国では店舗や飲食店の従業員が接客の合間に携帯電話をいじっているのを良く見かけますが、永日香では絶対にありません。お客様が食事している際には、いつでもお客様のご要望に対応できるよう食事部屋の外で立って待っています。またお客様に日本の文化を体験してもらうために、自分で和服の着付けを習い、人に着付けるまでに成長した従業員もいます。このような従業員の「おもてなしの心」が永日    香の最大の魅力です。教育してきた永日香の従業員とは家族のような関係です。訳あって永日香を辞めていった人間との関係は今でも良好で、従業員からはお父さんのような存在とも言われています。従業員の中には、今の仕事だけではなく、更なる向上心を持っている従業員もいます。この永日香で若い人の夢を実現させてやるのが、私の夢ですね。
 
 
 
 
※企業情報(URLご参照)
日本料理旅館 永日香      ホームページ:http://www.yongrixiang.cn
(八千代銀行烏山支店取引先)
 
❒ 取材を終えて
中国で体験できる本格的な日本旅館は、この永日香だけではないでしょうか。永日香は単に建物や設備といった見た目だけを日本式にしたのではなく、日本のおもてなしの心も持っていました。日本に渡航したことがない中国人はまだ沢山います。この永日香を通して、日本文化を体験し、日本を好きになってくれる中国人が増えることを願っております。
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田 光
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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