中国進出インタビュー

第 51 回「差異認知によるプロセス共有」東忠グループ
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<丁董事長兼CEO>
現在の中国と20年前の中国は違う国と言って良いほど、この20年の間に中国経済は大きな成長を遂げました。20年前に、現在の中国経済を予測した人は数少ないでしょう。今回はこの急速な成長を遂げた中国経済の時流に乗り、事業拡大を行われてきたIT企業/東忠グループの丁董事長兼CEOに中国ビジネスの取り組みについてお話を伺いましたので、ご紹介致します。
 

 

 

 

  

 
 

◆ 起業の経緯
日本へ渡ったのは1990年、当時の中国はまだ市場経済が本格的に始まっていませんでした。その中国と比べ、当時の日本は既に成熟した市場が確立されており、この成熟した日本市場を見た私は刺激を受け、いずれ中国は日本のように発展するという確信のもと、1996年に日本でIT企業/株式会社東忠を設立しました。
会社設立した19年前の1996年に、私は2015年までの事業計画を策定しました。事業計画の内容は、2001年~2005年は中国の低賃金を活かして、中国で日本市場向けのソフト開発事業を立ち上げる。2006年~2010年には中国で大規模な開発拠点を確立し、日本ソフトウェア市場だけでなく、中国ソフトウェア市場を開拓する。2011年以降には日本・中国だけでなく、欧米含めた世界市場へ展開し、グローバルIT企業を目指すものです。
19年前に成熟した日本市場を見たことで、中国の経済発展を見通すことが出来、この事業計画を策定しましたが、現在、予想通り中国の経済発展は進み、19年前に立ち上げた事業計画通りの事業拡大を行えています。
 
◆ 事業内容
日本企業は中国ソフトウェア市場に対して、コスト削減と市場開拓の2つのニーズを求めています。コスト削減の為に日本企業が人件費の安い中国にソフトウェア拠点を立ち上げるためには、従業員確保・育成のための時間と労力がかかります。自身の拠点を設立せずに、中国企業に業務をアウトソーシングすることにも日本企業は不安を覚えます。また中国ソフトウェア市場を開拓する場合、中国の政策に対する理解や中国当局・中国企業との関係構築にも日本企業は苦労します。
そこで当社では、事業を素早く立ち上げ、事業運営に不安を覚えないスキームを日本企業へ提案しています。それが、合弁スキームです。弊社と日本企業との合弁スキームでは、例えば合弁会社の事業運営の為には300名の人員が必要と仮定します。その場合、弊社は合弁会社に管理職を務められる弊社従業員28名を転籍させます。更に合弁会社が弊社へ業務を外注することで、弊社から合弁会社へIT人材270名を派遣します。転籍従業員28名と派遣人材270名の人員を弊社が準備しますので、合弁パートナーである日本企業は1~2名の日本人駐在員を派遣するだけで、すぐに事業運営を始めることが出来ます。
弊社から転籍する従業員は、あくまで合弁会社の従業員ですので、日本人駐在員も自社社員として従業員を指示・管理出来ます。また日本企業にとっても、合弁会社は自社の拠点ですので、情報漏洩リスクが軽減され、日本の中核業務を中国に持ち込みやすい環境になります。そして人事労務や人材育成などバックオフィスは弊社が担いますので、日本企業は市場開拓など業務に専念することが出来ます。
弊社はどの合弁会社にも出資割合を2割以下に抑え、合弁会社の経営には口を出さず、あくまで中国ビジネスのアドバイスのみを行っていますので、パートナーである日本企業は自社の判断で事業運営を行うことが出来ます。
日本企業が中国でビジネスを開始する際には人材面や商習慣など日中の差異認知が、ビジネスの様々な障壁となります。この日中の差異認知を弊社が軽減させることで、日本企業の強みを活かし、日本企業の中国ビジネスを成功に導きます。日本企業と弊社両社が成功する仕組み「差異認知によるプロセス共有」は日本企業にも評価され、現在ではNECシステムテクノロジーズ株式会社やアイシン・エィ・ダブリュ株式会社など日本企業を中心に17社の合弁会社を設立しています。

 

◆ 東忠テクノロジーパーク
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<東忠テクノロジーパーク>
この合弁スキームを実現するためには、多くの合弁会社従業員が働け、人材を育成するための場所が必要です。そこで弊社では、2008年に中国・杭州に広さ52,000㎡の東忠テクノロジーパークを立ち上げました。テクノロジーパークは5,000名の収容スペースがあり、合弁会社が入居するだけでなく、人材育成の場としてIT技術から日本語までさまざまな教育を行っています。
人件費が高騰している中国からベトナムなど第三国へ移転する話もありますが、ベトナムで事業展開する場合もIT人材確保や教育など中国と同様の課題が発生します。
弊社は杭州だけでなく、中国・山東省にも教育機関を構えています。また人件費の安い中国内陸部への新規拠点設立も検討しています。中国国内でIT人材を育て、弊社従業員・合弁会社従業員として働いてもらう仕組みを作り上げていますので、この仕組みを人件費の安い中国国内の内陸部で展開すれば、ベトナム等第三国に移転しなくとも、中国国内で十分に競争力を保つことが可能です。
 
◆ 中国事情・中国経済について
中国は日本と比較して人材流動が激しいと言われますが、人の独立したい・ステップアップしたいという向上心を止めることは出来ません。弊社から他社へ転職する人もいますが、弊社は人材の引きとめに力を注がず、新しい人材を育て続けることで、人材の確保に努めています。
19年前に会社を立ち上げ後、中国は大きな成長を遂げました。しかし中国はこれからも経済発展を続けていくと考えています。経済環境を年齢に例えますと、日本経済は既に成人しています。成人してからは身長が大きく伸びません。私の感覚では中国経済はまだ小学生です。成人に向かって、これからも身長が伸びていくでしょう。弊社も発展していく中国経済と共に、グローバルIT企業を目指して参ります。
 
※企業情報(URLご参照
東忠グループホームページ:http://www.totyu.com/
 
 
❒ 取材を終えて
日本企業が単独で中国ビジネスを行いますと、人材確保や商習慣に馴染むための時間と労力がかかり、想定通りに事業拡大を図れないケースが見受けられます。この日本企業の悩みを解決し、日本企業と中国企業が共に発展を遂げる概念が、丁董事長兼CEOが掲げる「差異認知によるプロセス共有」です。
東忠グループのように日本を理解し共に発展する気概のパートナーとの出会いが、中国ビジネスの成功の秘訣かもしれません。
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司 蓑田 光
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
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