中国進出インタビュー

第 44 回「中国で派遣に代わる製造請負を」北京中基衆合国際技術服務有限公司
 
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副総経理 朝日智氏

中国では2014年3月に「労働派遣暫定規定」が施行されました。この暫定規定では、派遣会社からの派遣社員の割合が企業の全従業員の10%を超えてはいけないと規定されています。施行後2年間の猶予期間が設けられていますが、中国へ進出している日本企業にとって、今後の対応に頭を悩ませる問題の一つです。
  今回はこの問題を解決すべく、「派遣」に代わる方法として、「製造請負」を中国で導入・普及すべく活動を行っている日本マニュファクチャリングサービス株式会社中国現地法人「北京中基衆合国際技術服務有限公司」の朝日副総経理に、中国での活動についてお話を伺いましたので、ご紹介致します。

 

 

 

u  中国進出の経緯

日本マニュファクチャリングサービス株式会社としての中国進出は、中国で技術者を育て、日本へ派遣するための会社「北京日華材創国際技術服務有限公司」を2004年に設立したことから始まります。技術指導だけでなく、日本語から日本でのビジネスマナーまで教育するもので、今まで厳しい試験に合格した延べ300名弱の技術者を日本へ派遣しています。
  当初は中国で上記活動を行っていましたが、日本でお客様から「中国でも日本同様のサービスを提供して欲しい」というニーズが強かったことから、2011年に製造派遣業を行う「北京中基衆合国際技術服務有限公司」を設立することとなりました。
  中国で人材紹介ビジネスを始めた当初は、日本との違いや中国労働市場の変化に苦労しました。中国労働市場の変化を感じた出来事としては、雇用確保の難航化が挙げられます。上海近郊にある江蘇省無錫市では、以前は近隣の安徽省から大量の労働者が流入していたことから、労働力確保が比較的容易でした。しかし地方都市に位置づけられる安徽省も、経済発展に伴い、安徽省内で満足いく給与水準の職を見つけられる環境となり、安徽省から無錫市をはじめ他都市への人口流入が大幅に減りました。2012年の安徽省から無錫市への人口流入は前年比40%も減少したのです。無錫市での労働力確保が難しくなり、人材採用コストは増加する結果となりました。
  また無錫市での人材採用の殆どは現地仲介業者を通す習慣があり、労働力確保が難しくなったことで、仲介料も当初は1人当たり200~300元だったのが、良い人材を確保する場合には10倍の3000元にまで仲介料が跳ね上がりました。この現地仲介業者も性質が悪い事に、仲介料を多く得るために、企業の工場前で労働者を待ち、わざと転職を促すような活動もしています。弊社ではこのような仲介業者の活用は、中国へ進出する日系企業のためではないと判断し、利用していません。今後は携帯アプリを活用した人材募集など新たな方法で人材確保していく予定です。
 

u  派遣社員の10%基準とは?

中国人力資源社会保障部(日本でいう厚生労働省)が3月1日付で「労働派遣暫定規定」を施行しました。これは企業が雇用する全従業員のうち、派遣従業員の比率を10%以下にしなければならないという規定で、中国で派遣会社を活用してきた企業には大きなインパクトを与えました。
 多くの製造業では人材採用を、派遣会社を通した労働派遣契約にしているのが実態です。現在この派遣契約を「外包」という契約形態にして外部に業務委託をしている企業もありますが、実態は人材派遣です。というのは、「外包」は商法が適用され、商法上では、製造業務を請け負えるのは製造業だけ、つまり工場を運営している企業が工場労働者を他社工場へ派遣し、その業務を請負うことができます。つまり、「外包」契約をする場合、委託先が製造業である必要があります。製造業でない場合は、結局、その「外包」は人材派遣の一種という解釈が出来、派遣社員の10%基準をクリアできないこととなります。
 そこで、この問題に対応するために、中国当局が検討しているのが「製造請負」(中国名称「承攬(しょうらん)」)です。「人材派遣」と「製造請負」は、両方とも、労働者は派遣元または請負会社と労働契約を締結します。「製造請負」が「人材派遣」と異なる点は、人材派遣は、その労働者への指示命令が派遣先であるメーカーにより行われますが、「製造請負」では、労働者への指示命令が派遣元であるアウトソーシング会社にあることです。また、「製造請負」をする会社は製造業である必要はありませんから、「外包」とも区別されます。中国当局が「製造請負」に興味を持っている主な理由は、派遣と比較し、請負では、労働者のスキルアップが望める、教育システムが充実している、また生産効率の向上につながる点と聞いています。
  この「製造請負」(中国名称「承攬(しょうらん)」)に関する法制度はこれから確立される予定です。現在中国当局では「製造請負」に関する法令・ガイドライン検討委員会を組成、この検討委員会に日本で多くの実績をあげてきた当社が日系で唯一参加し、中国当局関連者と共に中国の法令・ガイドライン制定について日々協議しています。
 

u  「製造請負」(中国名称「承攬(しょうらん)」)のメリットは?

現在当社では無錫市や深センで既に製造請負契約をスタートさせ、上海でも数社と事業をスタートする方向で話を進めています。
 「製造請負」を利用する企業側のメリットは、人材の流動性を活かせることです。派遣社員の10%基準は労働者全員を直接雇用にすれば済む話ですが、中国では労働者保護の観点から直接雇用の場合は解雇が難しいという事情もあり、出来れば直接雇用せずに人材派遣を活用したいという企業は多く存在します。また企業によっては、工場稼働の閑散期と繁忙期が分かれているため、繁忙期だけ短期で労働者を雇用したいというニーズもあります。
 このニーズを法令上もクリアしていくのが、「製造請負」です。中国で工場運営されている皆さまには是非、中国の労働事情や「製造請負」について理解頂き、中国で御活躍されることを願っております。中国の労働事情や「製造請負」について知りたい方がいらっしゃれば、お気軽に弊社までお問い合わせ下さい。
 
<問合せ先>
北京中基衆合国際技術服務有限公司 
  副総経理 朝日智(ASAHI SATOSHI)  E-mail : s_asahi@n-ms.co.jp
  上海第一分公司 TEL : (86) 021-6233-7850
  無錫分公司   TEL : (86) 0510-6800-0588
 
※企業情報(URLご参照)
  日本マニュファクチャリングサービス株式会社ホームページ(http://www.n-ms.co.jp/
 
 

r  取材を終えて

派遣社員の10%基準は日本では大きく取り上げられていませんが、上海現地では間接雇用から直接雇用へ雇用形態を切り替える企業が増えるなど、中国へ進出している企業に影響をもたらしました。従業員解雇が難しい中国では間接雇用の活用は欠かせません。「製造請負(中国名称「承攬(しょうらん)」)の法令・ガイドライン制定は中国の雇用方法に大きな影響を与えます。今後の動向に注目していきたいです。
 
 
 
 
聞き手=都民銀商務諮詢(上海)有限公司
蓑田 光
 お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで

 

 

 

 
 
 
 
 

 

 
 

 

 
 

 

 

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