中国進出インタビュー

第 135 回「中国不動産マーケットの現状」 不動研(上海)投資諮詢有限公司 総経理 林 述斌

昨今の上海ロックダウンをはじめとする中国国内のコロナ感染拡大の影響は中国経済に大きく影響を及ぼしました。また中国経済の主要指標とされる不動産市況も同様に影響を強く受けています。
今回は中国で不動産の鑑定、不動産市場調査などを手掛けている不動研(上海)投資諮詢有限公司の林総経理(土地評価士、MRICS及び米国ASA認定資産評価士)に、現在の取り組み、中国の不動産動向等についてお話を伺いましたので、ご紹介致します。

 

◆中国での事業について

弊社の親会社である一般財団法人日本不動産研究所は、不動産鑑定評価制度の確立を目的に設立された不動産鑑定士のプロ集団です。昭和34年に設立以降、不動産の研究調査、鑑定評価、コンサルティングと時代のニーズに沿った業務を手掛けている日本最大規模の鑑定機関になります。
弊社は、その日本不動産研究所100%出資の中国現地法人として2014年5月に設立しました。現在、職員は私のほか、韓(副総経理、米国ASA認定資産評価士)、呉(副総経理、資産評価士)、陳(総経理助理)の4名体制です。
弊社の主な業務は、中国における不動産鑑定評価・価格調査に関する業務ですが、会社設立以降、現在では、中国各都市における不動産マーケット調査や、各種プロジェクトの事業性に係る調査、M&Aや事業再編のための企業評価、工場移転・撤退に伴う売買や工場売却のコンサルティングなども行っています。また昨今の環境規制強化による土壌汚染調査なども対応しております。
不動産鑑定評価にあたっては中国各地の有力鑑定業者と提携しているため中国全土をカバーし、日本と同程度の調査期間で、高品質な内容でのサービスを提供できることが弊社の強みだと感じています。

 

◆中国不動産マーケットについて

中国不動産マーケットというと、新築分譲住宅マーケットを指す場合が多いです。この中国の新築分譲住宅マーケットについて見てみると、ここ数年、一定期間でのマーケットサイクルが確認できます。
下記図表①は、中国70都市の新築分譲住宅の価格推移を表したものですが、棒グラフの色の濃い部分が多い時は住宅価格が上昇している都市が多く、色の薄い部分が多い時は、価格が下がっている都市が多い時となっており、現在は価格が下がっている都市が多い時期にあたります。
最近の新築分譲住宅マーケットの状況としましては、2020年3月のコロナ感染拡大時に一時的な落ち込みがあったものの、2015年以降、価格が上昇する都市が継続して存在していました。
しかし、2021年秋口以降、主要都市において住宅ローン金利の引上げやローン審査の厳格化及びローン実行までの時間の長期化などが確認されたことに加え、不動産大手の恒大集団の経営危機の影響を受け、需要者側が様子見ムードとなり、住宅市場は急激に落ち込み始めました。
そのため政府は不動産市場てこ入れ策として住宅ローンの承認ペースの加速やローン金利の引下げの実施、また各地において住宅ローン頭金比率の引下げ(従来は30%必要だが、地域によってその比率を引下げ)や購入制限条件の緩和を実施し、2022年初頭は若干の回復傾向を示したものの、3月以降国内におけるコロナ感染再拡大・ロックダウンの影響を受け、市場は顕著な回復に至っておりません。6月以降上海のロックダウンも明け、徐々に回復傾向にありますが、恐らく2022年末時点で新規住宅価格の前年比プラスまでには回復できないと予想します。

 

一方、広大な国土を有する中国においては、都市のランクや都市の所在する地域によってマーケットの違いが現れます。都市を1線級(北京、上海、広州、深セン)から2線級(蘇州、杭州、成都、武漢程度の規模の都市)、3線級以下(昆山程度の経済規模或いはそれ以下)と都市のランクでグループ分けして見てみると、近年息が長く価格上昇が続いてきたのが1線級都市で、また1線級都市から2線級都市、3線級都市に向かって徐々に価格上昇が波及していく傾向がわかります(図表②参照)。2022年以降の傾向としましては、1線級都市においては堅調に価格増加の傾向で推移していますが、2線、3線級都市はコロナ感染拡大の影響により、思ったほどの価格上昇が見込めず、中国不動産市況全体に影響を及ぼしています。
このように中国マーケットは巨大で、都市のランクや地域などによって様々な価格形成要因が存在し、その動きを一括りに説明することは難しいものとなっています。マーケットを説明する上では「平均」という言葉もあまり馴染まないものと言えます。

 

 

 

 

◆最後に~今後の取組み~

弊社はお客様に支えられ、今年で開業9年目を迎えることができました。最近では、中国内の鑑定評価・各種調査やコンサルティング業務だけでなく、日本不動産に投資を行う中国企業向けサポートも行っています。弊社では引き続き親会社である日本不動産研究所、ASEAN地域を対応するシンガポール拠点、また中国提携先等との連携を通じて、これまでの業務で広げてきた中国ネットワークや日系企業としての信頼感を武器に、更なる業務領域の拡大や高品質なサービスの提供に努めて参ります。
不動産鑑定評価、各種調査などでご相談がございましたら是非お気軽にご連絡ください。

 

※会社情報
会社名:不動研(上海)投資諮詢有限公司
住所:上海市静安区南京西路1601号 越洋広場38F
HP:不動研(上海)投資諮詢有限公司 | 一般財団法人 日本不動産研究所 (reinet.or.jp)

 

聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 小林

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