中国の経済成長に伴い、近年は中国人個人をターゲットとした販売を模索している日本企業がますます多くなってきています。
今回は、中国の大消費地であり、所得水準向上の著しい上海にて、日本のライフスタイル体験店「匠の饗宴（たくみのきょうえん）」を展開する上海令由雪餐飲管理有限公司の森はるか代表にお話を伺いましたので紹介致します。

◆「匠の饗宴」の出店に至るまで

私は中国山東省出身の上海育ちで、日本やアメリカに留学後、日本人男性と結婚しました。日本と中国それぞれで起業し、日系企業の中国進出サポートを中心に中国ビジネスには20年以上携わってきました。

2014年頃から、中国人の所得向上に伴い、日本から中国へ商品を販売したいという日系企業の相談を多く受けるようになりました。これに対し、デパートの催事場での販売イベント等を行ってきましたが、イベント自体は成功する一方、販売期間や陳列できる商品が限定されていたり、販売方法を自社でコンロールできないなどのもどかしさも同時に感じていました。効果的なPRや売り込みにはやはりお客様の声を直に聞くことのできる直営店が必要なのではと考えるようになりました。また、中国の方に日本を知ってもらい、より豊かな生活をしてもらうためには、ただ物を売るのではなく、日本のライフスタイルそのものを提案していきたいと思うようになりました。
転機は2018年から上海で行われている大規模イベント「輸入博」への出展です。日本の有名食品メーカーや北海道の公的機関とタッグを組み、第1回から昨年の第3回まで連続して出展、我々の食品特色展示エリアには多くの方々にご来場いただき自信となりました。

◆「匠の饗宴」オープン

新型コロナの影響で予定より少し遅れてしまいましたが、今年4月に「匠の饗宴」の実店舗1号店となる「蓮花路店」をオープンしました。
コンセプトは「生活方式体験店」で日本のお米や調味料を使ったお弁当や食品・ソフトクリームの販売、生活雑貨を取り扱っています。お弁当は専門栄養士の指導のもと、店内のオープンキッチンで調理しています。
料理のレシピも公開しており、中国の家庭の主婦でも簡単に作れるように工夫しています。休日には親子で体験できる料理教室やＤＩＹ教室等も開催しています。
1号店に続き、4月28日にオープンした、中国で初展開となる商業施設「LaLaport」内に2号店をオープンしました。こちらのコンセプトは「北海道食品体験店」です。北海道関連食品販売の他、店舗内キッチンで調理した豚丼やお子様ランチを提供しています。
両店舗のスタッフは全員中国人で、ほとんどが95後（1995年以降の生まれ）の若者です。日本語が全く話せないというのが特徴で、現在は店長などの管理職もおいていません。日本に好感を持っていて興味はあったけれど、これまで日本との接点がなかったという若者を、日本の主婦である私自身が直接教育したり、日本の文化を伝えることで、まずは彼らに日本の生活様式の一番の理解者になってもらい、お客様にお店の良いところを売り込んでいってもらいたいと思っています。そしてまだ若い彼らが今後の多店舗展開時の管理職になってくれたらいいなと考えています。

◆今後の抱負

当面は上海を中心に10店舗体制を目指していきたいと思います。北海道だけにはこだわらず、日本各地の良いもの、良いスタイルをどんどん紹介し「中国展開を望む日本企業のテスト販売や情報発信の場」にしていけたらと思っています。また、実店舗と並行して、ＥＣ販売の強化や在中国日本企業の福利厚生の一環として日本の食品をできるだけ安価に提供できる体制も構築していきたいです。
大手企業の店舗網を利用したカフェや料理教室の展開や、特徴あるレイアウトで店舗展開されている日系企業との協業など、既に次を見据えたビジネスの具体的検討にも着手しています。
これからも日本企業の中国展開のサポートとそれを通じた中国企業の発展、個人の豊かさの実現のために、どんどん思いついたことをやっていこうと思っております。

※店舗情報
店  舗  名 ：蓮花路店（生活方式体験店）
住   所     ：上海市閔行区蓮花路1308号　宏汇蓮花広場Ａ座107室

店  舗  名 ：LaLaport店（北海道食品体験店）
住   所     ：上海市新金橋路738号　LaLaport上海金橋2楼216室

聞き手＝綺羅商務諮詢（上海）有限公司　杉山