年々耳にする機会が増える「イノベーション」という言葉。中国ではここ数年で電子決済が急速に普及し、今では「現金払いでもいいけどお釣りはありません」というお店も存在するほど電子決済は人々の生活に欠かせないものとなりました。このように日々起きている中国発のイノベーションは、日本の技術やサービスが必要だったりします。
今月号でご紹介するジャンシン（匠新） 創業者の田中CEOは、前職の上海駐在中に中国ビジネスの可能性に魅了され、「日本企業と中国企業との信頼等のギャップを埋める存在」となるべく、「日中企業間のイノベーション創出支援」を行うことを決意しました。以下、田中氏に創業経緯から現在のビジネスに関するお話を伺いましたので、ご紹介します。

◆創業経緯

ジャンシン（匠新）は、日中のイノベーション共創を推進すべく2015年に上海で創業しました。創業当時は日中関係があまり良好ではなく、日中間のイノベーションは起きづらい時期でした。その後2017年頃から徐々に中国イノベーションが注目され始め、2018年には深センと東京にも拠点を開設し、現在は約10名のメンバーで運営しています。
これまで、日本の製造業の中国進出時等における「伝統的な領域」では多くの協業が起きていました。一方、中国ではイノベーションが急速に発展する中で、AIやフィンテック、ビックデータ等の「新たな領域」における日中間での協業はあまり進んでおらず、この領域における協業が進めば日中両国にとって大きなプラスになると考えました。そこで、「日中間の文化の差」と「大企業とベンチャー企業の企業文化の差」の両方を理解する企業として日中間の「新たな領域」での協業を推進すべく本事業を創立いたしました。

◆サービス内容

主に次の①～③の事業を展開しております。
①「日中オープンイノベーション事業」（日本の事業会社向けに中国ベンチャー企業とのオープンイノベーションを推進）：ベンチャー企業との連携による事業創出等を目的として、中国ベンチャー企業についての基礎知識の理解から中国ベンチャー企業のリサーチ、連携検討、新規事業の創出等をサポートしています。
②「日中産業イノベーションファンド事業」（日本の事業会社向けに戦略的な観点から投資を実行するファンドを運営）：　弊社がGP（ジェネラル・パートナー）、日本の事業会社が主なLP（リミテッド・パートナー）となり、日本事業会社の戦略的目線から中国ベンチャー企業への投資を実行していくファンドへの出資を通じて日中間の事業共創を推進します。
③「日中ベンチャービルディング事業」（日本のベンチャー企業向けに中国への事業展開を支援）：中国の事業会社による日系ベンチャー企業等への出資や中国国内の合弁設立等を通じて、日系ベンチャー企業の中国への事業展開をサポートしています。
また、日本の中小企業と中国企業の協業サポートサービスの一環として、JETROとの「Global Acceleration Hub」事業を通じて、日本の中小企業やベンチャー企業の中国展開を「販売」「製造」「資金調達」の3つの観点から支援しています。
2019年には東京都の「ものづくりベンチャーグローバル交流事業STEP」を通じて、東京都のものづくりベンチャー10社の深センへの1週間滞在を含む中国事業展開支援プログラムをサポートさせて頂きました。

◆中国企業との協業を目指す日本企業向けへのアドバイス

中国企業との協業において、日本企業ならではの技術や中国企業には真似できない何かしらの強みがあることが重要なポイントです。
もし中国企業でも真似できてしまうような製品やサービスであった場合は中国企業にとって日本企業と協業する価値が小さくなり、協業はうまくいきません。中国企業との交流等を踏まえて「中国企業からの目線で自社に差別化要素があり、自社の強みが発揮できるかどうか」をとことん考えることが重要です。

◆今後の事業展開や抱負

当社では、2025年までに日中間で100の新規事業やイノベーションへの取り組みを実現することをビジョンとして掲げており、また日中イノベーションコミュニティを醸成していくことをミッションとして掲げております。その実現のためには多くの日本企業や日本人の皆さんと共に、今のこの時代に日本と中国とでどのような組み方ができるかを共に考え、共に実践していくことが必要です。是非一緒に試行錯誤しながら成功事例を積み重ねていければと思っておりますので、ご相談事項がございましたらいつでもお気軽にご連絡ください。

※会社情報
会  社  名 ：匠技新（上海）創業孵化器管理有限公司
住   所     ：上海市徐滙区漕宝路徐滙日月光中心33号A座6楼A030
                広東省深圳市南山区科発路19号 華潤置地大厦D座5階

会  社  名 ：ジャンシン・ジャパン株式会社
住   所     ：東京都中央区日本橋本町3-3-6 ワカ末ビル7階

Ｈ    Ｐ      ：http://www.takumi.ltd/

聞き手＝綺羅商務諮詢（上海）有限公司　佐藤