中国進出インタビュー

第 113 回「上海不動産2020 コロナ背景に激変」上海澤多房地産経紀有限公司

上海の不動産と聞けば価格が上昇し続けているイメージがありますが、近年の上海市郊外の都市化、そしてなんと言っても新型コロナの影響により、2020年の上海の賃貸不動産を取り巻く環境に変化はあったのでしょうか。
今回は、上海にて20年近くに渡り日系企業のオフィス選びとその駐在員の住宅選びをサポートしてこられた上海澤多房地産経紀有限公司(サワダ不動産)の澤田総経理に、最近の上海における賃貸不動産事情を中心にお話をお伺いしましたのでご紹介致します。

 

◆中国への進出経緯について

私は25年前の1995年、中国杭州師範大学にて1年間中国語を学びました。
卒業と同時に大阪の金型工場からの派遣で上海駐在が決まるも、1年後に帰国が決まったため、1997年に上海の日系不動産会社へ入社しました。そして2001年、日系企業進出増加の波に乗り、現在の上海澤多房地産経紀有限公司(サワダ不動産)を設立、現在は日本人スタッフ7名を含む28名のスタッフで活動しています。

 

 

 

 

 

 

 

◆上海での不動産選びについて

上海という異国の地において毎日の生活の拠点となる住宅、オフィス物件探しは非常に重要です。上海の物件は日本の物件と比較すると、見かけはお洒落で豪華ですが、品質面においては日本の物件の十分の一にも及びません。日本人駐在者の方々が新居で快適な生活をスタート頂ける様、弊社では19年間の経験を活かし、独自に「入居前検査リスト」を作成、担当者がリストに基づき室内入居前検査を行っています。その検査内容は50項目にも及びます。
例えば、エアコンは暫く作動させてみて、問題なく継続して使用可能かを確認します。他にもガスコンロは正常に着火するか、しばらくつけていても火が消えないか、シャワーの水圧は十分か、リモコンの電池は古くなっていないか等の細かな問題まで確認が必要です。これらの検査項目は全てこれまでの経験に基づいた内容となります。
上海の物件は大きく「デベロッパー物件」と「個人オーナー物件」に分かれます。
「デベロッパー物件」では問題発生時には基本はレセプションで24時間対応致しますが、物件により対応のレベルがかなり異なります。高額な賃料を払い入居したデベロッパー物件であっても、お客様が「修理を午前中に依頼したのに夕方になってやっと来た」、ひどい場合は、「翌日になってくる」様なケースもあります。
修理スタッフは来たが、問題の有る洗濯機ではなく、問題の無いエアコンの様子を見て、 「没問題」と言って帰っていったような笑い話のようなことも実際にあるのです。この様な場合、例えデベロッパー物件であったとしても、弊社から電話フォローを行い、それでも難しい場合は、即現場に出向き修理に立ち会うこともしばしばです。
「個人オーナー物件」の場合、家電製品修理にはサービスセンタースタッフが自宅に伺いますが、勤務中のお客様に替わり弊社スタッフが室内で待機し、修理立ち会いを行うと共に修理完了後、結果をお客様にご報告します。また、オーナーは海外にいるということも多く、緊急のエアコン購入や交換等の発生時の確認や対応には数日を要することもあります。弊社では応急措置として、弊社在庫設備から、オイルヒーター電気ストーブ等を無料で貸し出し、寒さをしのいで頂くなどのフォローも行っています。
また弊社の強みとして、2名のエンジニアを正社員として採用しており、通常の修理であれば対応が可能です。長年経験を積んだ熟練のエンジニアで、問題の分析力にも優れます。

 

◆最近の上海における『オフィス物件』の変化について

ここ数年、右肩上がりであった上海市中心部のオフィスビル賃料は、2018年からほぼ横ばいと落ち着きを取り戻していますが、その背景には、郊外に登場している新規商業施設の賃料が市中心部と比較し、安価かつ好条件での賃貸が可能であるという実情があります。
郊外の商業施設に入居する企業は、市中心部から移転した企業の占める割合が高く、2019年も上海の商業施設は供給過剰の状態が続いており、入居率も100%に達していないビルが大半でした。
その後2020年2月からコロナが本格的に蔓延し業務のみならず、人々の日常生活までも脅かす事態となりその影響は現在も尚続いています。その結果、一部の物件で価格が下落しました。
虹橋エリアでは、「古北国際財務中心Ⅱ期」が昨年同期比で13%の下落、昨年初めに新規オープンしたばかりの「古北SOHO」も昨年同期比で約10%の下落となりました。市中心部の淮海路のある物件では賃料が昨年から約18%下落しています。
表面賃料を保持し、賃料を下げない物件も多数あります。ただし新規テナントが入居を希望する場合は、長期にわたるフリーレンタル期間を提供する、駐車場代を免除する、など別の方法を用いて、新規テナントの取入れに各物件必死の様子が見受けられます。

 

◆最近の上海における『住居用物件』の変化について

2020年春節休暇を利用して日本に一時帰国していた駐在員及びそのご家族には、中国のコロナの蔓延に危険を感じ、暫くの間日本で様子を見ていた方も少なくありませんでした。
ところが2020年3月に居留許可を所有する全ての外国人のビザが無効となり、半年以上の間上海に戻れない状況が続きました。
上海のマンションを半年以上も空室とすることに不安を抱くお客様に替わり、弊社では定期的にご自宅を訪問し、換気を行う、カビや水漏れ等異常がないかを確認し、停電の事態になる事を避けるため光熱費の支払いの代行を行っております。
全体的にみると日本人居住率の高い「虹橋・古北エリア」ではこちらに戻る事を前提とした駐在者による賃貸契約が継続され、入居率の低迷は見られませんでした。
他方で欧米人の入居率の高い、静安寺エリアの嘉里中心(ケリーセンター)や新天地エリアの輝盛庭国際公寓(フレーザーレジデンス)などでは、欧米人の帰国による退去が相次ぎ、空室率が一気に高くなる現象が春の数ヵ月続きました。
今春は、家族を日本へ残し、駐在員のみが上海での生活をリスタートされるケースも多く、家族帯同の広い間取りの物件から、単身用のサービスアパートメントへの転居希望の問い合わせが殺到しました。中山公園の「園景公寓(パークビュー)」も単身者用住み替え物件の対象となり少し落ち着いていた賃料も再度上昇傾向にあります。
コロナ禍の上海不動産状況に今年7月、更なる衝撃をもたらしたのは日系管理マンション「東和公寓」(*日本人学校に隣接しており、日本人駐在者とその帯同家族から人気の物件)からの通知でした。内容は、東和公寓は、賃貸物件から分譲物件として販売する事を正式に決定、新規契約の中止と、現契約更新を行わないというものでした。
この突然の事態に伴い約400世帯が住み替え先を求めて見学を開始、コロナの影響を受け空室が目立った多くの物件には連日多数の見学者が詰めかけ、一部の人気物件では、部屋の取り合いにまで至りました。
今年8月以降は、日本から戻れずにいた駐在者及び帯同家族の再渡航、そして新規駐在員の赴任も少しずつ開始され、今後は物件需要がますます高まることが予想されます。この様な状況に伴い、一部人気物件を中心に物件が逼迫状態となり、賃料も上昇する事が予測されます。

 

◆最後に

未だにコロナの収束の見通しはつかないものの、上海の日系企業は招聘状を取得し、新規駐在者の赴任手続きを進め、段階的に通常通りの業務を目指しています。新規赴任者には、初めての海外という方も少なくありません。
通常の状況でも海外赴任は大変不安なもので、世界中がこのような状況の中での御赴任は測りきれない不安を抱かれていることと察します。
居住物件選びも、本来ならご本人が事前出張時に自ら見学され、決定頂くのが普通ですが、現状ではそれがかないません。今年は企業の人事総務が赴任者を代表しご見学になるケースが多いようですが、弊社ではwe chatの動画を通じて日本のお客様に「リモート見学」を実施、奥様には特にキッチンや水回りが気になるところですが、ご確認になられたい角度などをじっくりご覧いただき、日本にいながらにして、まるで実際にお部屋をご見学頂いているかのようなご案内スタイルで、可能な限り理想に近い物件を選択頂ける様にサポートさせて頂きます。

 

※会社情報
会  社  名 :上海澤多房地産経紀有限公司(サワダ不動産)
住   所     :上海市延安西路2633号 美麗華商務中心A区312室
電話番号 :+86-21-6270-8261

 

聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 杉山

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