「食べる」ということは、我々の日々の生活の根幹であり、また最大の楽しみの一つです。しかし病気や障害を抱えているため食事療法や制限が必要であったり、また歳を重ねることで介護の観点から食事を考える必要があったりと、食べることに対して何らかの問題をお持ちの方も少なくありません。
今回は、こうした方々の食べる喜びを支えたいという企業理念のもと、特殊食品を取り扱っておられる、ヘルシーフード株式会社蘇州現地法人である蘇州和喜福食品有限公司の長嶌総経理にお話を伺いましたのでご紹介致します。

◆中国への進出経緯について

日本本社は1959年に設立。以来、医療・介護施設向け食品の開発・販売を行ってきました。
中国へ進出するきっかけは、食事療法以外の治療法が確立していない先天性代謝異常症の中国患者会の代表が弊社日本本社を訪ねて来られたことです。
中国での商品不足等の実情を訴えられたことにより、日本国内での治療食提供しか考えていなかった弊社に中国での商品供給の必要性を認識させてもらいました。
2010年の北京でのマーケティング開始から4年ほどをかけましたが、政府の協力や周囲の環境の面で当時 もっとも適していた蘇州工業園区に現地法人を設立する 運びとなりました。

◆当社のサービスについて

加齢や病気、遺伝性要因により通常の食品を食べたり飲んだりすることが困難である方々に特殊な食品を提供させて頂くと同時に、生活習慣病を中心とする健康維持への懸念に対する防御策としての食品の提供を行っております。
主に高齢者向けの嚥下障害・低栄養対策商品、腎疾患を抱えている患者様や先天的に必須アミノ酸の一部が吸収分解できない方向けの低たんぱく商品、アルツハイマーの進行を抑制したり、血糖値の上昇の抑制、高血圧対策などの成人病対策用商品などを取り扱っております。

◆苦労したことについて

弊社の取り扱う商品は、中国では製造販売されていないものがほとんどであったため、該当する法律、食品カテゴリーが存在せず、輸入通関時に否認されることがありました。国内製造においても食品分類が否認されたりと非常に苦労しました。一度通関に成功しても、税関担当者の変更や国の方針変更により次の時には却下となり、日本に返送したり廃棄したりした商品もたくさんあります。
また、中国になかった商品群なので、徐々に商品の認知度が高くなると、似て非なる商品（いわゆるコピー品）や、弊社の作成したパンフレットを無断で使用して商談を行い、不当な価格での出荷を強要する販売会社も多く出てきて、かなり困惑させられました。
代理店に関しても、全く違うビジネスで成功し、その資金力をバックに取引を迫るところや、独占販売権をよこせと迫る企業も非常に多く、対応に苦労しました。ユーザーに関してはやはり価格に敏感なため、値下げの要求が日本よりかなりきついという印象があります。

◆コロナの影響について

日常的に消費する食品ということで、最終ユーザーの購入意欲は引き続き旺盛です。一方でコロナの影響により我々が経常的に訪問していた病院や高齢者施設への展開が一時的に難しくなり、治療食としての浸透のスピードがダウンしてしまいました。ただ、最近は顧客の依頼に基づき、訪問も再開できるようになってきました。
別の話になりますが、コロナ以降の米中摩擦に端を発した輸入品の検査強化の影響で、今まで問題のなかった輸入品の再検査や、さらにはそれが否認されるということも起こり始めました。そのため、現在は日本製造商品と同品質の中国国内生産品をもっとアピールしていこうと開発・販売に注力しています。

◆最後に

東日本大震災以降の食品輸入に対する産地制限、中国の食品原材料規制の厳しさに加えてコロナ禍による輸入検査の厳格化の三重苦の状態の中、ギリギリ可能な範囲で取り扱える商品を展開してきました。
そして徐々にではありますが、中国の方々の食事療法を支える一助になってきたと自負しております。可能であればこれらの規制が解除され、日本と同様に何千種類もある食品を利用者の皆様に提供して、中国人の食と健康を支える企業としてのパイオニアになっていきたいと考えております。

※会社情報
会社名：蘇州和喜福食品有限公司
ホームページ（日本本社）：http://healthy-food.co.jp/
住所：蘇州工業園区蘇州大道西２号 国際大厦１９０２室

聞き手＝綺羅商務諮詢（上海）有限公司　杉山