中国進出インタビュー

第 108 回「“お客様の立場重視”のサービスを」 開澤法律事務所

 中国ビジネスを円滑に進めるためには、日本とは異なる中国の商習慣や法制度、現地事情を理解することが重要なポイントの一つだと言えますが、ひとえに「理解する」といっても中々難しいものです。そんな中、常日頃から弁護士の方々にお世話になっている方も多いのではないでしょうか。今回は、コロナウイルス関連で多く寄せられた相談事項に関するアドバイスを中心に、開澤法律事務所の王先生、三津氏にインタビューしましたのでご紹介致します。

 

◆弁護士事務所設立経緯について

「日本の大学で法制度を学んだ後、日本企業や中国大手法律事務所で 経験を重ねた弁護士3人」がパートナーシップを組み、2004年に中国上海に事務所を設立しました。
当事務所では、日系企業特有の文化やビジネス思考、日本人的感覚、日中の違いを把握した上で、これまで培った経験や知識を活かし、設立当初から日系企業に特化したサービスを提供しております。

 

 

 

 

 

◆専門分野について

人事労務、知財・商標関連、行政手続き、会社法関連(リスク管理、内部統制、組織・資本・経営・管理アドバイスなど)、債権回収、企業間紛争(契約書、補償問題、秘密保持、訴訟など)、対中投資(進出、合併、M&A、技術提供など)、清算・撤退、各種法令・条例・規則への対応、法的調査、その他お客様のニーズに適したサービスを迅速に提供しております。
現在は、弁護士及び専門スタッフ(日本人複数人)を含む約30名体制で、案件毎にその分野に強い専門弁護士中心の最強チームを構成し、メンバーそれぞれの専門知識・経験・ネットワークの相乗効果を発揮し、効率的かつ確実な解決に取り組んでいます。

 

◆コロナウイルス関連質問・アドバイス①
  「コロナウイルスの影響による業績悪化を理由に、人員整理をすることは可能ですか?」

法的な人員整理を行う場合の要件の一つに、「経営の継続が困難になった場合」というものがあり、今回の業績悪化はこちらに該当すると言えます。
また、法的規定(例えば、30日前の通知や、意見聴取後に管轄行政に事前報告を行う等、状況に応じた諸条件があります)に基づき行うことになりますが、コロナウイルスを直接の理由とする場合、行政側はネガティブになる可能性が高いため、事前に打診した方が無難です。ちなみに、一部の地方政府においては、「企業は従業員に対して生活費程度の賃金を最低限保証する」といった形で人員整理を避けようとしています。
もっとも、業績悪化をもって従業員と相談して合意解除ができればトラブルとなるリスクも回避できるため、より望ましい結果といえます。まずはこちらでトライしてみて、やはり困難だという場合は、労働契約法上「契約締結時に客観的状況に重大変化が生じたことで契約履行が不可能になり、使用者と労働者間の協議でも契約変更に関する合意ができなかった場合、使用者は契約の解除ができる」という法例を根拠に、行政側も理解できる理由に基づいて人員整理を実施することを検討されてみてはいかがでしょうか。
人員整理に関するご質問の他にも、労務管理に関しては、休日延長措置、在宅勤務や出勤要請、給与や休日出勤手当、有給休暇消化、重点地域滞在中の従業員への対応、出社開始となっても出社したがらない従業員への対応、事業再開のタイミング及びその後の管理体制の構築等、様々なご相談をいただいております。

 

◆コロナウイルス関連質問・アドバイス②
  「取引先との取引契約書の履行に関して、不可抗力はどのように主張すべきですか?」

まず、不可抗力を主張するためには、次の構成要件を満たす必要があります。なお、下記の民法総則・契約法における「不可抗力」とは、予見不可能、不可避、かつ克服できない客観的状況を指します。
(民法総則 第180条)不可抗力によって民事義務を履行できない場合は、民事責任を負いません。(法律で別途規定がある場合はその規定に従います。)
(契約法 第117条)不可抗力により契約履行ができない場合、不可抗力の影響程度によって、一部あるいは全部の責任を免除します。(法律によって別途規定がある場合を除きます。)また、当事者の契約履行遅延後に不可抗力が発生した場合は、免責しません。
(契約法 第118条)不可抗力によって契約履行ができない場合、相手方の被る損失を軽減するために速やかに相手方に通知しなければならず、かつ合理的な期間内にその証明を提供しなければなりません。
(契約法 第119条)一方が違約した場合、相手方は損失拡大を防止する措置を取らなければなりません。損失を放置したことで損失が拡大した場合、その拡大部分に関しての損害賠償要求はできません。また、当事者が損失防止のために費やした合理的費用は違約した側が負担します。
以前、SARSが流行した際、裁判所は「SARSは不可抗力である」という正式文書を発行しています。しかし、総合的に判断すると、安定した取引先への不可抗力主張は「最後手段」とし、まずは契約履行に最善を尽くし、双方協議にて解決していくことが望ましいと言えます。
また、中国国際貿易促進委員会のホームページから「不可抗力証明」を申請できますので、専門家としっかり検討されたうえ、必要に応じて入手することも可能です。

 

◆最後に

今回はコロナウイルス関連で多く寄せられた相談事項に関するアドバイスをご紹介しましたが、当事務所では、中国現地法人への企業法務サービス、中国関連のビジネスに携わる日本側企業への業務サービスなど、幅広い業務範囲の対応が可能です。
また、上海事務所を拠点として、北京・大連・天津等各地の専門事務所・専門機関と協力していることから中国全土の案件の対応をすることができ、まもなく東京にも事務所を開設する予定です。言語につきましても、中国語・日本語・英語でのご対応が可能です。
今後も、当事務所のモットーである「4S」(ソリューション(解決)、スピーディー、日本語(ジャパニーズスピーカー)、親身な対応)を重視したサービスを提供して参ります。

 

※会社情報
会社名:開澤法律事務所
ホームページ:https://kzw-lawfirm.com/
住所:上海市浦東新区陸家嘴東路166号中国保険大厦2804室

 

聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 佐藤

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