中国進出インタビュー

第 107 回「日本企業の対中投資サポート」 日中投資促進機構

コロナウイルスの影響により日本では旅行業界や飲食業界にも大きく影響が出ています。また、企業の中国現地工場が操業停止状態となった為、商品や部品が供給不足となり各業界で品切れ状態となる等の影響が出ました。改めて日本にとって中国が重要な存在であった事を再確認したと共に今後どのように中国と付き合っていくのかを考えるきっかけとなったのではないでしょうか。
今回は日本企業の対中投資支援団体である日中投資促進機構の岡事務局長に日本企業の対中投資の現状と今後についてお話を伺いましたのでご紹介致します。

 

◆設立経緯と役割について

 日中投資促進機構の設立経緯は1988年に当時の 竹下総理が訪中した歴史に遡ります。その翌年、急速な経済成長を遂げる中国の投資環境を改善し、日中経済関係の一層の発展を目的に、官民合同の調査団が組成されました。
この調査団からの提言を基に竹下総理と李鵬総理を後見として日本側に日中投資促進機構、中国側に中国商務部部長をトップとする中日投資促進委員会が設立されました。当機構は今年の3月で30周年を迎える事となり、会員企業数は日本の財界を代表する企業を中心に216社(3月末)となりました。
設立当初の役割は、日本企業の対中投資窓口として課題を取りまとめ、日本企業が中国で中国企業や他国の企業と同様の扱いを受けられるよう意見や要望を提出していました。
現在では、日本企業に対する等身大の中国の理解促進と中国におけるプレゼンス向上、また中国政府に対する日本企業の理解と交流促進と言った役割を担っています。

 

◆活動内容

 当機構では中国政府に対する提言(“政府”)、会員企業の皆さまへのサービス(“会員”)、日中間企業交流(“交流”)という3つの切り口で活動を行っています。
“政府”については、中国で日本の経済産業省の役割を担う商務部と傘下の地方政府商務部門に対して改善提案や意見交換を行っています。具体的には大臣や企業のトップが参加する定期合同会議の開催、中央政府の担当者を招いた外資政策セミナー、中国の在日窓口機関との交流を行っています。
“会員”については、会員企業から個別相談に対応する他、ホームページでの情報発信も行っています。また、会員企業から派遣者を受け入れ、知見の共有や人材の育成も行っています。会員企業からの相談内容は大きく「労務関係等の人事対応」「法務税務の運用等の制度対応」「新規投資や再編、非常事態対応等の事業戦略対応」に分かれ、最近では環境に関する相談も多く頂いています。
“交流”については、現在の中国を理解頂くために、個別の問題を深堀りをする経営問題研究会、有料で行う実務担当者向け基礎・中級セミナー、中小企業セミナー等の各種セミナーや勉強会を通じた会員企業同士の交流、日中間のビジネスマッチング等を開催しています。

 

◆日本企業の対中投資について

対中投資については投資累計額、累計件数、設立企業の数は世界の中でも日本がナンバーワンです。しかしこの対中投資は尖閣諸島問題や東日本大震災をきっかけに風向きが変わりました。日中関係が冷え込み、その間、ドイツ、フランス、イギリス等の欧州自動車メーカーが中国市場開拓に力を入れ、欧州各国の首脳陣が相次いで中国を訪問、政治的結びつきを強め、日本が後塵を拝する雰囲気がありました。
その後も、ベトナム、フィリピン、ミャンマー等の東南アジアや一帯一路沿線国への中国からの投資も増え、日本企業のプレゼンが相対的に劣勢に立たされてきたのですが、最近になり日中関係が改善し、日本企業も医療介護、スーパー・コンビニ等の小売・サービス関連の投資が増加してきました。中国ではGDPに占めるサービス業の割合は増えており、日本の最近の投資傾向は消費を成長の牽引にしていきたいという中国の方針とも合致しています。
更に日本企業の内陸部への投資も増えてきました。10年くらい前から言われていることですが、成都や重慶等の内陸部も豊かになり、まだ沿海部の方が賃金は高いですが、内陸部の人も物価が高い沿海部にわざわざ出稼ぎへ行くのを止めて、豊かで物価も高くない地元で仕事をする例も増えています。
日本の対中投資企業の規模も大手企業から中堅中小企業へと変わってきました。この傾向は国有企業中心の経済構造からスタートアップ企業・イノベーション企業の成長を促して経済の構造改革を行いたい中国政府の政策にも一致しています。

 

◆日本の大手企業のスタンス

市場の大きさ、発展性から中国を重視する日本の大手企業のスタンスは変わりません。しかし中国に対する捉え方には変化が見られます。以前は中国は日本の技術には勝てないだろうと考える経営者もいましたが、最近では成長著しい中国企業、例えばネット大手企業4社であるBATJ(百度、アリババ集団、テンセント、京東集団)やその次世代企業と手を組もうと、中国企業の経営スタンスを学び、協力する姿勢へと変化しています。中国への考え方が中国脅威論から共栄論へと変化しているように感じています。

 

◆ 日本企業のあるべき姿

中国人のビジネスマンに中国と日本の良い所を伺うと、殆どの方が中国に対しては「ニーズを捉える力」「着手するスピード感」を挙げ、日本に対しては「改善、工夫、チームワーク、長く続ける仕掛け」を挙げます
この日本と違いのある中国に対して、中国ビジネスに関わる経営者にお伝えしたいのが、中国は単一の市場ではないということです。日本以上に地域性が存在しますので、単一的に中国市場を見るのではなく、複眼的視野を持って中国ビジネスを考えることが重要です。
また中国に対する偏見をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。中国という国が好きか嫌いかは別にして、ビジネスの観点では現在の中国を正しく理解し、等身大の中国と対峙することが必要です。中国が好きな親中派になる必要はありませんが、中国を理解している知中派になることが中国ビジネスを行う上では重要です。
中小企業の経営者の中には、中国に対して商品を模倣されたり、会社をのっとられるので怖がっている方もいるかもしれません。しかしこの中国に対する偏見をなくしてもう少し中国と向き合い、win-winの関係が築けることを願っています。
最後に、当機構は中国における経営のお困り事について質問を受け付けています。30年の歴史により、先人達が築いた様々な経験や智慧、そして転ばぬ先の杖があります。課題解決の入り口として是非ご利用下さい。当機構には最近まで中国に駐在していた職員が在籍し、北京にも事務所も構えていますので、一緒に経営の課題を考えていきましょう。

会社名:日中投資促進機構  / ホームページ:https://jcipo.org
住所:東京都千代田区富士見1丁目1番8号千代田富士見ビル2階
北京事務所:北京市朝陽区建国門外大街甲26号長富宮弁公楼402号室

 

聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 佐藤

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