中国進出インタビュー

第 98 回「日本のコスメブランドを育てていく販売を」上海美優文化伝播有限公司 璞優(上海)商貿有限公司
中国で生活していて街のドラッグストアやスーパーに行くと、雑多に山積みになり安売りされているコスメグッズを見かける時があります。それに対し、別の店舗では日本の化粧品が綺麗に整然と並び、個性的な什器を利用した展示がしてあり、つい目を引かれる時があります。日本の化粧品は中国で人気があると聞きますが、今回は中国で日本の化粧品や化粧雑貨を取扱う上海美優文化伝播有限公司、璞優(上海)商貿有限公司の北野総経理に、中国での会社立上げから事業展開についてお話を伺いましたので、ご紹介させて頂きます。

◆ 会社の立上げ
 弊社は日本の化粧品や化粧雑貨に特化した卸売りやプロモーションの他、オンラインでは化粧品口コミサイトBeauBeauやTモール上でECサイトの運営をしております。ビューネットグループはもともと日本ではなく中国で立ち上げた会社で、設立して17年が経ちました。私の兄が弊社董事長を務めていますが、兄が初めて上海に来たのは1998年頃のとても勢いがある時期でした。当時、兄は日本の広告代理店に勤務して台湾系IT企業の担当をしていたことから、度々台湾や上海への出張がありましたが、訪れる度にその発展スピードとパワーに圧倒され、中国で事業を始めたいと思うようになりました。その後、縁あって当時知り合った方から中国で仕事をしないかと誘われ、兄が会社を設立することになったのです。私も以前は広告代理店に勤めていましたが、たまたま2001年の暮れに上海に遊びに来た時に、私も中国の発展の勢いに驚かされ、その後2002年4月より総経理として事業に参加するようになりました。
 2006年には美容口コミサイトのbeaubeau(http://www.beaubeau.com.cn)を立ち上げ、まずはメディアで情報を集め、それを基に商品を販売していくプラットフォームを構築しました。



 実は500~1500円程のセルフコスメと呼ばれる日本の化粧品は値段の割に品質が良く、種類も多く、パッケージも個性的なもの等、目を引くものが多いのですが、これは世界でも日本だけといっても過言ではありません。カネボウや資生堂といった会社の商品は誰でも知っており、置けば自然に売れます。それに対し、中小企業の取扱う化粧品でもキラリと光る商品は多数ありますが、商品が良くても、そういった商品をただ置いておくだけでは手にとってもらえません。そこで、陳列や什器を利用し、商品の見せ方を工夫することで実際に売れるようになっていきます。什器を利用した販促を取り入れたのは弊社が初めてで、2009年頃は売り場スペースが無駄になると言われた時期もありましたが、まずは理解を得やすい日系小売り向けに販促を行って売上を伸ばし、実績を作った後にローカル向けにも広めていきました。中国では、例えばイオンやイトーヨーカドーといった日系スーパーは日本製品が多く、良いものを取扱っているイメージが定着し、商品のブランディングにも向いていました。今は上海を本部として、北京、成都、広州に営業&物流拠点、青島には物流拠点がありますが、当社の取り扱う商品はデパートからドラッグストア、化粧品専門店、コンビニ、スーパーマーケットなど様々な場所で販売されており、今では全国約3万店舗のお店で販売されるようになりました。

◆ ブランドを育てて、守る
 化粧品を販売する際はブランドを育てていくことが大事です。例えばパソコン等電化製品には明確なスペックがあり、商品毎に差別化を図れますが、化粧品にはそれが無く、商品を比較しづらいためイメージが大事になります。人気があるからといって大量に販売したり、売れ残ったからと言ってどんどん値引き販売をしていると、ブランドは簡単に傷ついてしまいます。売れるときに売って何がいけないんだと言う人や、ブランドがダメになったら新しいものを持ってくればいいと考える人は多いですが、商品が使い捨てになってしまい長続きはしません。
 長く定番商品として販売するためには徐々に売上を伸ばしていく必要があります。代理店・販売店には毎月の売上を報告してもらったり、商品棚の写真を送ってもらったりと、弊社のルールが守られているか確認します。ルールを守ることは代理店・販売店にすれば手間がかかり煩雑ですが、メーカーのブランドを守るため、弊社の販売方針を理解して頂ける代理店・販売店とだけ取引をしています。
 取引先とは信頼関係を築くことが大切で、弊社だけの都合ではなく、代理店や販売店のことを考えて仕事をしていくことが必要です。その時の売れ筋ではない商品でも、売り場作りのために販売することがありますが、売れにくい旨は正直に話をします。しかし、出来るだけ在庫負担は減らすように商品配架は行い、在庫が残った場合にはプロモーションを掛け不良在庫が残らないよう工夫をすることで、結果として売場全体の売上増加に繋げています。商品の見せ方は広告代理店に勤めていた時のスキルが役立っています。

◆ 蓄積できたノウハウ
 商売をしていく中で、日本とは違う中国の文化に苦労したことはあります。ある大手小売り会社と取引をした時ですが、既に販売したにも関わらず弊社の商品が店舗で売れないと代金を支払ってもらえなかったり、返品条項が無くても勝手に返品してくることがあったりと、当時は大変苦労しました。また、先方の支払いが遅れることも多くありましたが、それでもしっかりと販売をフォローして、商品が売れるようにすることで支払い関係は改善していきました。
 それ以外にも、中国で化粧品を販売するには化粧品衛生許可を取得する必要がありますが、昔は許可取得も苦労しました。許可申請の際は当局に全ての化粧品成分を開示する必要があります。今でこそ周知されて一般的になりましたが、昔はOEM品製造委託元からはどうして化粧品成分を開示しなければいけないのかと言われ、委託元の同意が得られないこともありました。
 然しながら、中国市場は巨大なマーケットなので、最初苦労しても成功すれば大きく花開くと信じてきました。弊社も設立当初は厳しい時期が続いたこともありましたが、腰を据えて地道に活動を続け、信頼関係を築いていくことで商売を軌道に乗せることができました。様々な苦労がありましたが、その代わりに化粧品衛生許可の取得や、どのように商品をアピールしてどういう風に売れば良いか等、多くのノウハウを蓄積することができ、日本のブランドに合った化粧品の販売ができる会社になったと感じています。

◆ 今後の展開
 今後は日本の良い商品を中国を中心にアジア全域に広げていきたいと思っています。中国人はいろいろな国に存在し、各国内で日本の商品は良いという話しが伝わっていくので、中国大陸での販売実績が日本のインバウンドに繋がっていきますし、アジア大陸にも広がって行きます。そういった意味では中国国内でも更に取扱い店舗を増やしていき、弊社中国事業を強固なものにしていきたいと思っています。日本は真面目に良いモノ作りに励む国であり、一方中国は商売を上手に行う国なので、相互補完の関係が築けると感じており、ブランドをしっかりと守りつつ、日本の化粧品を今以上に幅広く伝えていきたいですね。

※会社情報
上海美優文化伝播有限公司、璞優(上海)商貿有限公司
【関連会社:株式会社ビューネットコーポレーション (日本橋支店取引先)】
電話番号:+86-21-5465-9922

 
聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 小林
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