中国進出インタビュー

第 97 回「ファッション資材のワンストップショッピング」株式会社クロップオザキ 上海褲洛布貿易有限公司

 上海では日本より安い値段で服のオーダーメイドを頼むことができますが、オーダーメイドの際にイメージ通りにならないのがボタンです。服全体はイメージどおりになっても、ボタンがイメージ通りではないと、オーダーした服の満足度も低くなってしまいます。

ボタンやファスナー、洋服の価値を高めるファッション資材を専門的に取り扱うのが今回インタビューに対応頂いた株式会社クロップオザキです。ファッション資材を扱う当社が中国でどう活動されてきたのか、総経理の木川氏にお話を伺いましたので、ご紹介します。

 

 

u  上海クロップオザキ貿易有限公司

 

1.jpg 弊社が中国・上海に事務所を構えたのは2004年。当時は中国の安価な製造コストに注目して資材調達先の調査や開拓を中心に行っていましたが、主要取引先のゴルフメーカーが中国でゴルフウェアを製造することとなり、弊社は2007年に改めて上海現地法人を設立することになりました。私自身の話も少ししますと、以前、生地の専門商社に勤務していたのですが、前職も2年半ほど上海に駐在していました。その後、縁あって当社に入社しまして、2008年から再び上海に駐在しています。

 

 当初、主要取引先のゴルフメーカーはボタンやファスナーなど付属品を日本製のものを中国で輸入していたのですが、付属品を中国製に切り替えることとなりました。以前は、日本のボタンメーカーも中国に工場をもっていました。日系メーカーは値段が高かったため、中国国内で日本製と同水準の製造が出来るローカル工場を探す必要がありました。当時はインターネットや交通網も発達されておらず、紹介してもらったローカル工場へ地図を片手に会いに行き、製造を委託しました。しかし、実際に出来上がったものは質が悪かったことも多く、どんなに立派な工場でも、一度製造してもらわないと良し悪しは分からないと感じたことが多々ありました。

 

 

u  中国国内販売へ

 

2.jpg 主要取引先のゴルフメーカーのゴルフウェアの付属品は100%中国製に切り替えることができたのですが、そのゴルフメーカーがゴルフウェアの製造を中国からベトナムへ移行することになりました。弊社にとっては主要取引先がなくなってしまう一大事です。とはいえ、会社は存続させなければなりません。そこで、日本の生地や付属品を中国のアパレルメーカーへ販売することに企業の方向性を切り替えました。

 

 当社が従来取り扱ってきた付属品は、服を作る際の選定がどうしても後回しにされがちになるので、付属品だけの販売では市場開拓が難しい状況でした。そこで、私の前職の生地専門商社に在籍していた経験と人脈を活かして、日本の生地メーカーから生地を調達し、中国のアパレルメーカーへの販売を開始しました。アパレルメーカーは服を作る際に、まずは生地から選定しますので、生地の提案と合わせて得意の付属品の紹介に繋げることが出来ました。

 

 

u  中国市場・中国企業の変化

 

 最近は人件費などコスト上昇を背景に中国からASEANやバングラディッシュへ製造拠点を移すケースが多いですが、日本が中国からアパレルを輸入している割合は、いまだ世界からの輸入の70%と高い割合を占めています。作業服などの既製服はASEANやバングラディッシュへ製造委託は出来るかもしれませんが、サイクルが短い一般のアパレルの製造委託は日本から距離がある国には委託しづらいです。また中国の縫製工場は日本企業の長年の技術指導があったからこそ、今の高い縫製技術があります。この中国での長年の技術指導の歴史を見ていますと、ASEANやバングラディッシュがアパレルの製造拠点として、すぐに中国にとって変わることは難しいかもしれません。

 その中国の縫製工場ですが、今は日本を重要視していません。なぜならば、日本企業は品質の要求が高い上、ロットも少なく、最近では値下げを要望する会社もあるそうです。その日本企業と比較して、欧米企業は品質の要求は低い上、大きなロットが見込めます。また中国国内には巨大なマーケットがありますから中国国内で取引を行えばよいわけで、わざわざ日本企業と取引する理由が無いのです。

 更に最近は中国も環境規制が強化され、染めの工程を行うために巨額の投資が必要であることから、投資が出来ない小さい工場が倒産し、規模の大きい工場のみが生き残っている状況です。規模が大きい工場ですので、小ロットの仕事はやりません。ますます日本のアパレルメーカーが中国へ製造委託しづらい環境になってきているのです。

 一方、中国は生活レベルが向上してきたことで、求められる服の品質が上がってきました。更に中国人デザイナーがヨーロッパや日本のデザインを良く勉強してきたことで、服のデザインや品質が向上してきました。だからこそ、高品質である日本の生地のニーズが高まり、その日本製を取り扱う弊社が中国市場・中国企業へ入り込めることが出来たのです。

 

 

u  中国市場への更なる挑戦

 

 総経理として上海に着任してから12年目を迎えました。弊社の従業員は10年以上働いてくれている人も多く在籍していますが、先ほどお話した通り、取引先の中国撤退に伴い、事業の方向性を大きく変えた苦しい時期もありました。その中でも働き続けてくれたのは、従業員の仕事を評価し給与として反映させてきたこともありますが、従業員個人の性格が良かった点も挙げられます。また長年上海で働いて感じているのが、仕事のやり方や考え方などを日本と比較して日本のものを押し付けるのではなく、郷に入れば郷に従え、中国の場所を借りて、中国人に働いてもらっているという気持ちが大事なのではないでしょうか。

 現在主要業務である中国国内販売では、日本の生地だけでなく、ブランド品の偽造防止フィルムも行っています。しかし今年売れた商品が来年売れるかどうかは分かりません。そこで現在注目しているのがECO商品です。ヨーロッパから始まった動きですが、世界的な環境問題を背景に、製造の持続可能性をするためには環境に影響がない生地・資材が求められています。例えば、今後ファーやレザーが、フェイクファーやフェイクレザーに代替されていくでしょう。このECOの動きは日本や中国でも始まるでしょうから、この動きを捉え、新しい事業の柱とすることが今後も目標ですね。

 

※会社情報

日本本社  :株式会社クロップオザキ(きらぼし銀行 神田中央支店取引先)

ホームページ:http://www.cropozaki.com/

中国現地法人:上海洛布貿易有限公司

ホームページ:http://www.cropozakish.com/

      

聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 蓑田

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