T-mallや京東を代表とした中国国内のオンライン販売、日本から中国への越境ECなどここ数年、中国での売上拡大にはオンラインの活用が欠かせません。一方、「体験」や「感動」を提供できる「場」として、リアル店舗の役割も大きいのが実態です。
今回は日本企業を中心にオフラインからKOLプロモーション、E-コマースの運用まで一貫してサポートしている上海潤世企業営銷管理股份有限公司/株式会社ルイスマーケティングの田中宏明氏に中国の現状についてお話を伺いましたので、ご紹介します。
u 上海潤世企業営銷管理股份有限公司
弊社サービスの全体像をご説明しますと、オフライン(百貨店などのイベント企画運営やサンプリングなど)やオンライン(KOLを活用したプロモーション、Wechat、Weiboの運営等)、
EC運営代行支援(T-mallや越境ECなどの運用代行)などを展開しております。
オフラインのみやオンラインのみのサービスを提供する会社は中国や日本に数多く存在しますが、弊社ではどちらもワンストップでご支援させて頂いております。また、弊社は日本企業ではなく、中国人が立ち上げた中国企業です。しかし中国企業ではあるものの、長年日系企業向けのマーケティング支援と国内/海外EC運営支援事業を行ってきた副総裁の沢登秀明を筆頭に、日本人が数名在籍し、中国企業というコストの優位性を活かしながら、日本企業同様のサービス水準を提供できるというのが弊社の強みです。
また日本では中国人消費者向けPRや越境ECの運営支援などを実施するために株式会社ルイスマーケティングを立ち上げ、中国では全国規模の店頭上場市場である新三板市場に株式上場していることも、日本のお客様から他の中国企業とは違う信頼を頂いている要因だと考えています。
u サービス内容
弊社サービスは具体的に①百貨店でのイベント開催によるサンプリング提供(オフラインマーケティング)、②「小紅書」など人気アプリでの口コミマーケティング、③フォロワー獲得の為の微信(Wechat、Weibo)などのSNS運営代行、④T-mallや京東などe-コマースの運用代行に分かれます。口コミマーケティングやe-コマースの運用代行などの業務を単独で行う会社はありますが、オフラインマーケティング含め、全てのサービスを連動させて行える会社は少なく、そこが弊社の強みでもあります。
最近ではオフラインマーケティングの重要性が改めて見直されています。その背景にSNSなどを活用したオンラインマーケティングは広告費が高騰し始めたり、SNSのなりすましが増えたり、オンラインだけでのマーケティングでは消費者の動きが捉えきれなくなってきています。またメーカーの立場からすると、中国では国内販売を代理店に任せるケースが多い為、エンドユーザーとの接点が少なく、ユーザーの声が商品開発などに活かせないこともオフラインマーケティングを選択する企業が増えた要因でしょう。
u オー・ツー・オー (O20)から オー・エム・オー(OMO) へ
日本ではオー・ツー・オー(O2O)の概念が浸透してきましたが、世界ではオー・ツー・オー(O2O)からオー・エム・オー(OMO)へ概念が更に変わってきています。特にアメリカと中国が進んでいます。
オー・ツー・オー(O2O)は店舗販売とオンライン販売両方が存在し、オンラインを活用して店舗へ顧客を誘致し店舗販売を伸ばすことを目的としていますが、オー・エム・オー、Online Merges with Offlineはリアルとデジタルを融合させ、デジタル×顧客体験(UX)を高め、顧客の満足度をより高めていくことで、企業全体の売上を伸ばすことを考えるものです。
代表的なのが、アリババグループが運用するスーパー「フーマ」です。「フーマ」は店舗で新鮮な食材を販売しているだけでなく、オンラインで購入した店舗周辺の顧客へ30分以内に商品を配送するサービスを提供していますが、店舗誘致を目的としておらず、店舗でもオンラインでも販売を伸ばしています。「フーマ」は中国最大のEコマースを運営するアリババグループが経営していることから、ネットで商品を購入する膨大な顧客情報(ビッグデータ)を持っており、その顧客情報を元に店舗の立地を決めているので、店舗を出す前に採算が見込めているという話も聞いたことがあります。
日系企業は日本では、オフラインとオンラインの部門と責任者を分け、別々に事業を考えているケースを見かけますが、日本企業をサポートする中で、中国では両軸を見据えオンライン・リアル店舗関係なく、いかに双方で望ましい顧客体験(UX)を作っていけるかという視点が重要になってくると思います。
u 日本企業・日本商品が中国で成功するためには
現在日本企業から依頼を頂くことが多いのが化粧品や食品です。中国でも日本の化粧品と食品のニーズは強く、これは日本の商品に対する安心・安全というイメージが根付いているからです。しかし、日本企業・日本商品の全てが成功している訳ではありません。私もさまざまな企業のご相談を受けますが、中国で売れるためには①日本で売れている商品か、②商品に特徴があるか、③中国の事情にあっているか、他にも色々な要件はありますが、日本で全く売れていない商品が中国で売れることは考えづらいです。
ご相談頂く企業の中には、売りたい気持ちは強いけれども、売る為の準備が出来ていない企業もいらっしゃいます。①商品を買える場所(店舗やサイト)、②商品の魅力の伝え方(PR方法)、③関連法律・市場動向の調査、最低限この準備をしておかなければ、どんなに良い商品でも売れません。
そして日本企業は、マーケティングや販売方法まで全てを自社で完結しようとする傾向があります。しかし、中国は変化のスピードが早く、自社で全てを行おうとするとそのスピード感に追いつけません。例えば、人気のアプリ「小紅書」もこの1、2年で注目されてきましたが、5年後には無くなっている可能性がある程トレンドの移り変わりは早いのです。その為にもマーケティング会社の活用は重要だとお考え下さい。
私個人として日本のFM三重で「上海の今」というラジオ番組でDJを担当しており、移り変わりが早い上海の現状を日本の皆様に伝えているのですが、これからは仕事を通じて、中国へ日本の良さや日本商品を伝えていけるようにしていきたいですね。
※会社情報
中国/上海潤世企業営銷管理股份有限公司
住所 :上海市長寧区楼山関路523号金虹橋国際中心南楼902-903室
業務内容:オフライン(百貨店などのイベント企画運営やサンプリングなど)やオンライン(KOL を活用したプロモーション、Wechat、Weiboの運営等)、EC運営代行支援(天猫や越境ECなどの運用代行)など
日本/株式会社ルイスマーケティング
住所 :東京都千代田区丸の内 1-6-5丸の内北口ビルディング9F
業務内容:中国人消費者向けPR・プロモーションの企画、実施。越境ECの運営代行など
聞き手=綺羅商務諮詢(上海)有限公司 蓑田