<質問>
私は来年1月から上海に赴任することが決まりました。現在、ビザ手続きを進めているのですが、参考に最近駐在を始めた方にお話を聞いてみると「赴任当初は個人の銀行口座が開設できなくて困った」という話を聞きました。中国上海で銀行口座開設するのは大変なのでしょうか?
<回答>
中国上海で銀行口座開設する場合、数年前はパスポートを銀行へ提示して、特定の住所を申請書に記入すれば、簡単に銀行で個人口座を開設することが出来ました。そのため、昔、中国へ出張されていた方の中には、中国に駐在していなくとも、銀行口座を簡単に開設できた方は多かったのではないでしょうか。
しかし2017年7月から中国では非居住者の銀行口座開設・管理が強化されました。実はこの非居住者の口座管理強化は、中国に限った話ではありません。これは経済協力開発機構(OECD)租税委員会が2014年に承認した「共通報告基準(CRS)」に基づくもので、中国や日本を含む102カ国・地域の税務局が非居住者の口座情報を提供しあう仕組みになったことが背景にあり、中国では「非居住者銀行口座税務状況調査管理弁法」が2017年7月から施行されました。
※日本の非居住者口座管理強化については下記URLをご参照下さい。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/crs/pdf/04.pdf
※「非居住者銀行口座税務状況調査管理弁法」については下記URLをご参照下さい。
http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c2623078/content.html
現在、上海で日本人が銀行口座を開設する場合、中国四大銀行の一つである中国工商銀行へ口座開設の必要書類を聞いたところ、①臨時居留許可(公安が発行する居住証明)、②工作証(就業許可証)、③中国での労働契約書の提出が求められます。この厳格な対応は中国工商銀行に限った話でありません。他の銀行も居留許可(Zビザ)を口座開設の必要書類として求めるなど厳格な対応をとっています。
上海の現状では原則、日本人個人は中国で働いていないと銀行口座を新規で開設できません。日本からの出張者の方が銀行口座を開設する必要性は少ないでしょうが、一番困るのが就業許可証取得前の方々です。就業許可や居留許可取得には一定の時間を要します。手続きがスムーズにいけばまだよいですが、2ヶ月程度時間を要した方もいらっしゃいます。
個人の銀行口座が開設できない場合、経費精算など業務面で困る他、AlipayやWechatなど電子決済に支障をきたし生活面でも困ることが多いでしょう。
新たに中国へ赴任する場合は、中国渡航後のビザ取得スケジュールを予め確認し、事前に個人口座を開設予定の銀行へ必要書類を確認することをお薦め致します(銀行によってはMビザで口座開設できるケースもあります)。
なお、口座開設まで時間を要しますので、日本から中国へ現金を持参されることになりますが、現金の持込についても規制がありますので、下記URLを参照に上海へ渡航下さいませ。上海へのご赴任お待ちしております。
【第17回】 現金の持ち込み
http://www.kiraboshi-bc.com.cn/topics/business/33.html
以上
綺羅商務諮詢(上海)有限公司 蓑田