きらぼし中国ビジネスQ&A

第88回「工場移転における留意点について」

 

<質問>

 

弊社は上海にて自動車部品を製造している工場です(敷地面積は1,500㎡程度)。現在の工場は上海市より賃貸借しており、2020年まで賃貸借期間は残っているのですが、先日「次回以降、賃貸借契約を更新することができない」と言い渡されてしまい、現在、急遽移転を検討し始めました。そこで、移転に関して一般的な注意点などを教えていただけないでしょうか?また立退きを要請された場合、補償金をもらえるケースがあると聞いたことがあるのですが、弊社のような事例の場合はいかがなものでしょうか?

 

 

 

<回答>

 

 中国、特に都心部においては、ここ数年、環境面・安全面に関する規制強化の影響や、商業施設・交通機関の建設に伴う立退き要請などを理由に、移転を検討する企業が続出しております。企業が移転を検討する際、考慮しなければならない事項は無数にありますが、ここでは特に重要となる事項につき、いくつかご紹介をさせて頂きたいと思います。

 

 さて、まずは貴社の事例における補償金についてですが、貴社においては、土地使用権を取得して自社で工場を運営しているケースとは異なり、立退きに関する補償金は一切支給されません。「移転に関する補償金が支給される」、「代替地の提供を受ける」などの補助があるのは、あくまで土地使用権を有しているケースになります。よって自社で移転候補地を探す必要性があります。

 

 ここで問題となってくるのが、貴社のケースの場合、近隣のレンタル工場を探すのが最も有効な事業継続の手段となるかと思いますが、前段でご案内した通り、近年多くの企業が移転を検討していることより、移転候補地がなかなか見つからないといった事態が想定されます。特に1,000㎡、1,500㎡クラスの物件はもともと少なく、上海市が管轄するレンタル工場についても数が限られていることより、候補地探しは早々に開始されることを推奨します。

 

 続いて実際に移転手続きを開始するにあたっての留意点ですが、主に「税務登記の移転」「従業員への対応」は重要となってくるでしょう。中国においては、管轄する税務局毎に税収が分かれているため、例えば上海市内でも異なる区に移転することとなった場合、税務登記を移転先である新たな区に変更しなければならず、この手続きに多くの時間と労力を要することとなります。また仮に、上海市以外のエリアに、市や省を跨いで移転しようとした場合、更にハードルが高くなり、実務的には単純な住所移転では対応が難しく、新たな省に先に別の会社を設立し、事業を移管することとなるのが一般的です。

 

 続いて「従業員への対応」ですが、例えば前述の様に、上海市から別のエリアに移転することとなった場合、従業員が退職してしまうリスクが高くなります。会社都合による移転においては、当該従業員に経済補償金の支払いが必要となることもあります。「キーマンが辞めてしまった」「移転先で思うように新たな従業員を採用できなかった」などといった問題も良く聞かれるところです。

 

 この他にも、「移転先において環境許可が下りるか」「特殊なライセンスを有する企業の場合、そもそも移転先で生産が可能か」「移転に際し、発票(領収書)の発行に問題は生じないか」など考え出したらきりがなく、移転検討においては専門家に相談されることも必要かと思われます。

 

 

 

以上

 

 綺羅商務諮詢(上海)有限公司 小原

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号