きらぼし中国ビジネスQ&A

第85回「為替差損がどうして財務費用?」

<質問>

私は日本で某会社の経理部長を務めていましたが、今年から上海子会社の監事(監査役)も兼務することになりました。監事になって初めて中国の決算を見ることになったのですが、理解出来ない点が多々あります。最近は為替変動も激しいため、為替が会社に与える影響を把握して会社に指導や提議したいのですが、上海子会社の月次の試算表を見ていますと、為替差益が「営業外収入」に、為替差損が「財務費用」に計上されています。差益と差損で別の会計処理するのが中国では一般的なのでしょうか?

 

<回答>

 ご存知の通り、中国では原則、毎月決算を行い、税務局に申告しています。そして、申告する際は全て人民建てで申告しなければなりません。そこで、会社に外貨建ての債権債務がある場合は、毎月、その外貨建て債権債務を人民元に換算する必要があります。

そして、外貨から人民元に換算する債権債務ですが、主に下記債権債務が対象になります。

 ①外貨建て債権・・・日本円などの外貨建て預金、海外(日本)への売掛金や未収金など

 ②外貨建て債務・・・海外(日本)からの買掛金や未払金、日本本社からの借入金など

 

 外貨建て債権債務の人民元への換算方法ですが、外貨建て債権債務の取引が発生した際の為替レートを用いることを原則としていますが、会社が状況に応じて別のレート(月初レートや前月末レートなど)を選択することが可能です。そして、その外貨建て債権債務の月末残高は毎月、月末のレートを用いて人民元に換算します。このレートは中国人民銀行が公表する仲値を用います。

取引発生時のレートを月初レートを採用している場合を例にしますと

① 5月1日   日本円残高100万円。前月末レート/100日本円=5.80人民元

② 5月10日  日本向け輸出で100万日本円の入金。月初レート/100万日本円=5.90人民元

③ 5月31日  日本円残高200万円。月末レート/100日本円=5.95人民元

 <人民元換算の考え方>

  ①100万円=58,000元 、 ②100万円=59,000元 、 ③200万円=119,000元

  ③119,000元 - (①58,000元+②59,000元) = 2,000元の為替差益

そして為替差損益を記帳する場合、会社が採用する会計準則が、大企業会計準則か小企業会計準則かで処理方法が異なります。

大企業会計準則:為替差損と為替差損は全て「財務費用」に計上

小企業会計準則:為替差益は「営業外収入」に計上、為替差損は「財務費用」に計上

 

貴社では為替差益が営業外収入として計上されていますので、恐らく小企業会計準則を採用されているのではないでしょうか。

 ご留意頂きたいのが、受け取られた日本円を銀行で実際に両替した際は、両替した際の銀行レートと会社採用レートの差額を為替差損益として認識します。つまり、会社採用レートが月初レートの場合、

① 6月1日   月初レート/100万日本円=5.90人民元

② 6月5日  100万円を人民元に両替。両替レート/100万日本円=5.95人民元

③ 6月30日  日本円残高ゼロ円。

 <人民元換算の考え方>

 ①100万円=59,000元 、 ②100万円=59,500元 

  ③59,500元 - 59,000元 = 500元の為替差益

と計算しますので、両替する際に採用レートが幾らかなのかを認識しておく必要があります。

 

 ご紹介した計算方式・会計処理等はあくまで取引レートは月初レートを採用し、小企業会計準則を採用している場合のケースであり、これは会社ごとの状況や会社並びに会計事務所の方針によって異なります。

 まずは監査する上海子会社の会計方針・処理を把握され、為替に対する対応を上海子会社に指導・提議されてはいかがでしょうか。

 

  以上

 綺羅商務諮詢(上海)有限公司 蓑田

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号