きらぼし中国ビジネスQ&A

第 137 回「出資者変更時の従業員説明について」

<質問>
私は日本企業が出資する製造現法の総経理を務めています。今般、日本本社が中国からの事業撤退を決断し、現地法人持分を中国企業へ譲渡することが決まりました。今後、日本本社による従業員への説明を控えているのですが、今はコロナ禍による日中間の往来制限もあり、親会社からの渡航者はおらず、現地では日本人である私が対応する予定です。従業員は300名近くおり、持分譲渡を発表する時に、従業員がどのような反応を示すか不安でなりません。少しでも従業員との衝突を少なくするため、説明会を迎えるまでの流れや留意点についてご教示頂けますと幸いです。

<回答> 
持分譲渡を行う際に従業員への対応は非常に重要です。説明の仕方によっては従業員全員が退職してしまい、新出資者による事業継続に大きな支障をきたすこととなります。従業員への説明方法に正解はなかなか無いのですが、以下に弊社の経験談を踏まえた対応方法の一例を記載しますのでご参考にして頂ければと思います。
 

従業員説明には弁護士を活用

まず従業員説明を行う際は、持分譲渡対応の経験豊富な弁護士に依頼して下さい。総経理は矢面に立たず、弁護士には日本本社から委託されていることを従業員に理解させて下さい。そうすることで、総経理は従業員と同じ立場で説明会を聞くことが出来、従業員との衝突を防ぐ狙いがあります。また説明会では従業員に不安が残らないように、今回の持分譲渡に至った経緯、新出資者による新しい会社のビジョン、今後の従業員の処遇(福利厚生含め)は最低限説明頂きたいと思いますので、弁護士とは事前の打合せを念入りに行ってください。

 

説明会前には地元労働局へ事前説明を行う。

労働局には事前に、「持分譲渡を行う旨の従業員説明会を行うこと」を説明しておくことで、不服がある従業員が万が一、説明会を聞いて労働局へ駆け込んだ時に労働局側は会社側の立場に立って従業員への説得を行ってくれます。なお労働局への説明は一般的に弁護士が対応しますので、弁護士とよくご相談下さい。

 

説明会当日の流れは、管理職 → 工会(従業員組合) → 従業員全員

中国人はメンツを重視する国民性ですので、管理職に対しては他の従業員とは別に、前もって説明することが望ましいです。そして管理職の理解を得られた後に従業員説明の流れとなりますが、会社内に工会が設置されている場合には工会メンバーにまず説明を行う必要があります。なお工会メンバーへの説明時には、既に理解を得られた管理職にオブザーバーとして同席してもらうのも効果的です。
従業員全員への説明の際に、日本本社からのメッセージ(社長動画メッセージなど)を用意することも一つの方法です。コロナ禍で日本本社の方から直接従業員に説明が出来ない中で、いかに従業員に対して誠意を示すかは非常に重要となります。

 

説明会実施後の弁護士相談窓口の設置

説明会実施後は従業員の不安を和らげるために、対応頂いた弁護士に数日社内に滞在してもらい、相談窓口を設置することを推奨致します。説明会直後は従業員も事実を受け入れるのに精一杯ですが、徐々に自分たちの処遇などの不安が増幅していきます。その際にいつでも相談できる弁護士が傍にいることで従業員の不安を和らげることができます。

 

上記は従業員説明を行う一般的な対応事例ですが、冒頭申し上げた通り、これは人と人とのやり取りになるため、やり方に正解はありません。会社ごとの状況に応じて対応方法を弁護士とよく相談の上、従業員説明会に臨んで下さい。従業員に無事理解してもらえることを祈っております。

 

綺羅商務諮詢(上海)有限公司 小林

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