きらぼし中国ビジネスQ&A

第 103 回「外商投資法施行への対応」

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<質問>
私は上海市にある合弁会社の総経理です。今年から外商投資法が施行されることは聞いていましたが、どのような対応を取るべきかがわかりません。変更すべき事項等について教えてください。

<回答>
〇外商投資法について
2019年3月20日に「外商投資法」、2019年12月31日に外商投資法の細則を規定した「外商投資法実施条例」が公布され、2020年1月1日より同時に施行されました。外商投資法の概要については、2019年4月号の中国ビジネスQ&A/第94回「外商投資法?」(http://www.kiraboshi-bc.com.cn/topics/business/1042.html)をご覧ください。
2020年1月の外商投資法施行以降の主な変更点を挙げますと、①「中外合弁経営企業法」、「中外合作経営企業法」、「外資企業法」(=外資三法)が廃止され、外商投資企業は「会社法」、「パートナーシップ企業法(合伙企業法)」の規定を適用しなければならない点や、②外資三法では認められていなかった、「中国人個人」が出資者となることが認められる点等が挙げられます。ここで、①につきまして、既に進出している中外合弁会社が取るべき対応についてご説明します。(なお、既に進出している外資独資企業は、従来から主に「会社法」の規定を適用しています。)

○既に進出している合弁会社が取るべき対応


外商投資法施行後5年間は、組織形態や機構を「会社法」等に合わせて変更登記手続を行うことも、現状の組織や機構を継続することも可能です。しかし、2025年1月以降は、変更登記手続をしていない会社はその他の変更登記手続を行うことができなくなります。変更するべき具体的事項として、①株主会を設置のうえ、最高権力機関を「董事会」から「株主会」に変更し、株主会における決議事項や要件、議決権等を設定します。②董事会における議決事項や董事会の招集条件等の調整等が必要となります。
また、合弁・合作企業法と会社法で異なる重要点として、重大事項(定款修正、清算、増資・減資、合弁分割等)の決議が、「董事会の全会一致」から「株主会の3分の2以上の議決権」となる点が挙げられます。こちらに関しては、合弁会社の状況を鑑みて、合弁パートナーとの交渉の上、引き続き現状の全員一致形式の採用をする等の検討も必要となります。
これらの変更手続きの具体的事項に関しては、国務院市場監督管理局が規定を公布する予定であることから、今後の動向を注視する必要があります。
上記で述べたように、「組織の形式や機関」は変更手続きを必須としていますが、合弁・合作当事者が契約書で合意した「持分譲渡方法、収益分配や残余財産の分配方法等」に関しては、合弁・合作期間の満了まで引き継ぐことができます。

〇今後合弁・合作企業を設立する企業の留意点
株主会の議決権に関しては、原則は出資比率に基づいて定められるため、少数株主は不利な立場になりやすいことから、出資比率の決定が重要となります。
また、外商投資法施行前の合作経営企業法では、「規定に従い収益分配やリスク・損失を負担できていた」点が、会社法の規定では難しくなります。そこで、「パートナーシップ企業法(合伙企業法)」の規定に基づき、外商パートナーシップ企業の設立を検討することも一つかもしれません。パートナーシップ企業は、企業債務に対して無限責任を負うパートナーが最低1名以上必要となりますが、議決権や利益配分、損失負担については契約の定めに基づくことができるため、比較的自由な経営を行うことができます。 



<参考>
・「中華人民共和国外商投資法」
http://www.gov.cn/xinwen/2019-03/20/content_5375360.htm
・「中華人民共和国外商投資法実施条例」
http://www.gov.cn/zhengce/content/2019-12/31/content_5465449.htm

以上
綺羅商務諮詢(上海)有限公司 佐藤

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