第 99 回「繰越欠損金の取扱い」
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<質問>
私は日本本社の経理部長を務めています。弊社は中国上海に貿易会社があり、設立当初から赤字経営だったため、会社の清算を検討しています。 会社清算にあたり、労務や税務・会計についていくつかの検討課題はあるのは理解しているのですが、日本本社から上海現地法人に債権が残っており、その債権の取扱いについては日本本社として考えなければなりません。検討にあたり留意点はありますか?
<回答>
日本本社の決算にある上海子会社への債権の取扱いについて、日本側での会計税務処理については日本の会計・税理士事務所と事前にご相談ください。
さて、中国側での債務免除の取扱いについてですが、会社清算にあたって債務免除の税務申告を行うことは可能です。しかしご留意いただきたいのが、債務免除された金額は、清算期の当期収益(営業外収益)として計上されるため、企業所得税の課税対象となる点です。
会社清算を検討されているということは、上海現地法人のキャッシュも多額ではないでしょうし、従業員への退職金(経済補償金)など支払うべき費用はあるでしょうから、余分な税金は払いたくないところでしょう。
そこで活用できるのが繰越欠損金です。過去赤字経営が続いているのであれば、繰越欠損金が計上されていらっしゃるでしょうから、その繰越欠損金と今回の債務免除益を相殺することはスキームとして検討できます。
しかし、この繰越欠損金でご留意頂きたいのが、繰越欠損金の税務上の有効期間は赤字を計上した当年を含み6年間という点です。例えば2019年XX月に、税務向けの清算申請が受理された場合、過去の2014年度~2018年度までの欠損金についてのみ相殺可能となり、相殺しきれない部分は課税対象となります。
そのため、上海現地法人の決算書上で繰越欠損金が確認できたとしても、その繰越欠損金が6年以上前に赤字計上したものであれば、この繰越欠損金は活用できないことになります。
まずは、この税務上の繰越欠損金を確認されることをお奨め致します。税務上の繰越欠損金は、毎年の企業所得税確定申告で、単独の申告用紙があり、詳細が記載されています。現在、上海の確定申告はe-Tax税務申告システム(月次申告のシステム)で行われているため、貴社上海現地法人を担当している会計事務所に依頼すれば、金額は把握できます。
以上が、中国で会社清算時に債務免除を受ける場合の留意点になりますが、税務処理については実務上他にも留意すべき点も出てくるかもしれませんので、対応する前に、日本と中国それぞれの会計・税理士事務所にスキームをご相談下さい。
以上
綺羅商務諮詢(上海)有限公司 蓑田