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<質問>
私は上海市を所在とする商社の総経理を務めています。新年度に入ってから、去年の監査報告や当局への届出など総務担当が対応してくれて、作業は問題なく進んでいるそうです。しかし、私に回ってくる書類に印鑑は押しているものの、実は、実際にどういう報告や届出をしているのか分かっていません。管理者として、おおまかな流れを理解しておきたく、教えてください。
<回答>
中国はご存知の通り、全ての会社の決算が1月から始まり、12月で終わります。そして、この終了した年度の報告を、翌年の6月までに各種手続きを行う必要があります。
企業は具体的に、①監査報告書の承認、②確定申告(中国語:汇算清缴)、③工商年度報告、④外商投資企業投資経営信息聯合報告を行う必要があります。
① 監査報告書の承認
昨年度の決算について5月までに監査報告書を完成させて、②の確定申告を行わなければなりません。そのため、新しい年度に入り、昨年度の会計帳票が全て揃った時点で、速やかに監査法人に依頼して監査報告書の作成を依頼する必要があります。そして、監査法人が作成した昨年度の監査報告書を董事会で決議します。
② 確定申告(中国語:汇算清缴)
董事会で決議された監査報告書に基づいて、5月までに確定申告を行います。その際、留意すべきなのは、各種税制優遇の申請です。中国でも企業所得税の優遇や、研究開発費や新規設備購入の税制優遇があります。昨年度の税制優遇で該当するものが無いか確認を行い、確定申告時に申請しなければ優遇を享受できませんので、この点は財務担当や会計事務所へ確認されることをお薦め致します。なお、前年度に利益が出ている場合、確定申告した翌月が企業所得税の納税月になりますので、確定申告するタイミングもご留意下さい。
なお、決算終了後、董事会では決算内容に基づいて会社の利益積立金や配当に関する決議を行う必要があります。詳細は、下記URLをご参照下さい。
第 14 回「董事会で決めること」
http://www.kiraboshi-bc.com.cn/topics/business/30.html
この利益準備金や配当金額の根拠となる前年度の利益ですが、これは監査報告書に記載されている金額ではなく、確定申告を行い、税務局が認定した利益の金額が基準となります。監査報告書の金額がそのまま認められるケースもありますし、税務局の見解の違いから金額が変わる可能性もゼロではありません。そのため、上記、利益積立金や配当に関する決議は確定申告後に行う企業もあります。
③ 工商年度報告
工商年度報告とは工商局のホームページ上で、昨年度の会社の状況を自己申告する制度です。例えば住所や従業員数、株主構成などを申告します。留意すべき点は3つです。
1つ目が真実とは異なる内容を申告しないこと。工商局が抜き打ちで検査しており、真実と異なると警告されます。
2つ目が申告漏れ。仮にこの報告をせず、当局からの指摘にも応じなかった場合はブラックリストに企業名が載り、会社だけでなく法定代表者にも処罰が下されます。
そして、最後が情報開示の可否です。申告する内容には住所など公表しなければならない内容の他、会社の決算内容や納税状況も申告する必要があります。そして、この決算内容や納税状況は企業が公表するか否かを選択することができます。総経理の知らないところで、公表したくない内容が公表されているかもしれませんので、この点は担当者にご確認下さい。
④ 外商投資企業投資経営信息聯合報告
これは③の工商局の申請同様に、昨年度の会社の状況を自己申告する制度ですが、申告先が商務部門、税関、統計局など関連する各当局となります。以前は紙の申告書を提出していたのですが、今はオンラインで申告出来ますので、手続きの負担が軽くなりました。こちらも、工商局への申請同様、真実の報告をしなければ、後日処分が下されますので、ご留意下さい。
ご紹介した手続きは担当者や委託する会計事務所が作業しますので、総経理自ら行うことはありません。しかし仮に申告が漏れている場合や、真実と異なる内容を申告している場合は、将来、会社だけでなく、代表者にも影響を及ぼしかねません。作業が問題なく行われているか、定期的に確認されることをお薦め致します。
以上
綺羅商務諮詢(上海)有限公司 蓑田