きらぼし中国ビジネスQ&A

第 93 回「中国人社員の税込給与」

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<質問>

弊社は上海市で中国人社員数名を雇用している商社です。従来、中国人社員の給与と社会保険の計算・納付を外部へアウトソーシングしていたのですが、今年に入り、そのアウトソーシング会社から「給与金額を税込給与で教えて欲しい」と依頼を受けました。私も中国へ赴任したばかりで中国人社員の給与計算が税込なのか、税抜なのかさえもわからない状況です。どう対応すれば良いのでしょうか? 

 

<回答>

 今回、アウトソーシング会社が「税込給与」の提示を依頼してきた背景には、2019年の個人所得税の大幅改正が背景にあります。改正点は主に課税所得額の計算方法変更、税率変更、基礎控除額の変更、特定付加控除額の設定など、ここでは説明しきれないほど多岐にわたります。

 

 従来、日系企業は中国人従業員の給与を「税抜」で設定しているケースが多いです。この「税抜給与」とは何を指すのかと言いますと、日本で言う手取給与をイメージして下さい。日本では額面給与から社会保険料や税金、会社によっては団体保険費などを差し引かれて手取給与が支給されていますが、中国では団体保険費などは通常ありませんので、個人所得税と社会保険の個人負担分が差し引かれて支給されます。

 

 

税抜給与 = 税込給与 - 個人所得税 - 社会保険個人負担分


 

       

従業員の採用や昇給の際も従業員と給与を「税抜(手取)」で合意する訳ですが、会社としては手取給与から逆算して個人所得税を計算し、社会保険の個人負担分も勘案して税込給与を設定していました。また、この手取給与からの逆算方式ですと、残業代や交通手当などの諸手当も手取ベースで考えますので、手取給与+残業代+諸手当=手取支給総額から逆算して税込給与を算出していたことになります。

 今回の個人所得税改正によって、特定付加控除が新たに設定されました。特定付加控除とは住宅ローン控除や高齢者扶養控除などの項目があり、日本の年末調整と近しいイメージでお考え下さい。

 個人の事情により特定付加控除枠の金額が異なります。特定付加控除額というのは日本の年末調整同様に個人に還元されるべき制度と考えますと、個人の事情を鑑み「税抜(手取)」から「税込給与」を逆算するのは煩雑です。その上、課税所得額の計算方法の変更も相まって、給与を「税抜(手取)」をベースにして考えるよりも、「税込」で考えた方が個人所得税の計算が簡便になります。この理由から、アウトソーシング会社が貴社に「税込給与の金額を教えて欲しい」と連絡があったのでしょう。

 

今回を機に、中国人従業員との労働契約を「税抜(手取)」から「税込」に切り替えられる企業が増えていると聞いています。まずは昨年従業員と合意した手取給与の金額だけでなく、会社が負担していた個人所得税、社会保険個人負担分の金額を把握して昨年の「税込給与額」を算出し、従業員が不利益を感じないような新しい「税込給与額」を設定されてはいかがでしょうか。なお、従業員の労働条件を変更する際は、プロセス(公示や意見徴収など)に沿って対応している会社もありますので、過去労働条件を変更した事例に沿った対応をされることをお薦めします。

 

≪ご参考≫

中華人民共和国個人所得税法実施条例

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c3960202/content.html

 

個人所得税特定付加控除暫定施行方法についての通知

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c3960435/content.html

 

全国的に実施される新個人所得税法の徴税管理に関する問題の公告

http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c3954941/content.html

            

以上

 綺羅商務諮詢(上海)有限公司 蓑田

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