上海駐在レポート

第 85 回「広深港高速鉄道」

 

2018923日に広州-深セン-香港の3都市を通り、中国と香港を繋ぐ初の高速鉄道である「広深港高速鉄道」が開通しました。中国の広州南駅から深センを経由して香港の西九龍駅に至る約142キロを結び、中国から香港中心部への移動を便利なものとしています。今月は、広深港高速鉄道の概要と深セン-香港区間の高速鉄道「動感号」に実際に乗車してみた感想をレポート致します。

 

 

 

0000.png○広深港高速鉄道の概要

 

広深港高速鉄道は、元々中国の国家戦略プロジェクトである広東省・香港・マカオを一体化し、結び付けるグレートベイエリア(粤港澳大湾区)構想の重要な交通ネットワーク政策として建設が計画され、2009年に着工を開始しました。起点となる中国国内の広州南駅―深セン北駅間の高速鉄道は201112月に開業され、今回開通したのは香港の中心部である西九龍駅と深セン、広州を繋ぐ区間となります。

 

 

 

0001.png車両は、香港をイメージした「躍動する」という意味で名付けられた西九龍-広州南間を走行する短距離用の高速鉄道「動感号」(Vibrant Express)と、北京や上海など中国各地の44駅を直結する長距離を走行する高速鉄道「和諧号」や「復興号」によって運行されています。 

 

 

 

 

 

○実際に乗車してみて

 

深セン-香港間を通行する動感号は、深センでは福田駅と深セン北駅の2駅から乗車可能です。今回の路線の開通により、従来は約1時間程度、要した深セン-香港(九龍)間の距離を約14分と大幅に短縮させました。車両は、全席Wi-Fiが接続可能で一等席と二等席に分けられています。一等席は、二等席よりも座席間隔が広めな他、座席が180°回転可能であり、各座席に読書用ライトとオーディオ用のイヤホン差込口がある等の違いがあります。

 

 

【深セン-香港間の高速鉄道の概要 201810月時点】

 

区間

運賃(深セン香港)

運賃(香港深セン)

所要時間

福田駅-西九龍駅

1等車109元(約1,744円)

1等車122.81HKD(約1,719円)

14

2等車 68元(約1,088円)

2等車 76.62HKD(約1,072円)

深セン北駅-西九龍駅

1等車120元(約1,920円)

1等車135.2 HKD(約1,892円)

19

2等車 75元(約1,200円)

2等車 84.5 HKD(約,1183円)

 

 

 

0002.png高速鉄道は、中国大陸部を走行する際には、時速約350kmに達します。香港区間を走行する際には、香港の現有の建築物への影響を考慮し、全行程が地下トンネルを走行し、最高時速は200km以下とすることが規定により求められています。

 

かなりの高速で走行しますが、車内はほとんど揺れを感じず、静かで快適です。しかし、深セン-香港の走行区間は、ほぼ地下トンネルを走行している為、高速鉄道の乗車間に沿線の風景を眺める事が出来ないのは少し寂しく感じました。

 

また、イミグレーションでの入出境の手続きについては普段深センから香港への移動に慣れている方でも負担に感じる方が多いかと思います。広深港高速鉄道に乗車する際のイミグレーション手続きは、すべて香港の西九龍駅に集約されていますので、深セン側では動感号に乗車するまで中国出境の手続きが一切不要である為、香港に入境するまでかなりスムーズに感じられました。

 

逆に香港から深セン(中国本土)へ向かう際には、香港で乗車前のイミグレーションの手続きが必要である為、時間に余裕を持って発車予定時間の約45分以上前には西九龍駅に到着していることを奨励しています。まだ開通して間もないためか、乗客も不慣れな方が多く、チケット購入窓口での手続きに時間の掛かる方が多く見受けられました。

チケット購入窓口の他に自動券売機も設置されていますが、中国本土の身分証明証保持者および香港・マカオ住民で中国本土への渡航に必要な「港澳居民来往内地通行証」(回郷証)を保持し、永久居住権を持つ方のみが使用可能となっています。その為、日本人をはじめ外国人は事前に、チケット予約を行っていても、窓口以外でチケットを受け取る方法がありません。

 

○一地両検と一国二制度

 前述の通り、広深港高速鉄道に乗車する場合は、香港の西九龍駅にて香港側の出境手続きに加え、中国本土側の入境手続きを行います。このシステムは「一地両検」と呼ばれています。

 香港政府はこのシステムにより「広深港高速鉄道は最大限の輸送効果、および経済的、社会的効果を発揮することが可能となる。」とコメントを発表しました。

しかし、一国二制度(単一の国家の中に、異なる2つの制度が敷かれること)で本来は独自の法律が適用される香港にありながら、西九龍駅構内の一部や列車内では中国本土の法律が適用されることになるため、香港の自治が失われると香港民主派の反対勢力もあり、広深港高速鉄道の開通日には、一地両検の撤廃を求める集会等も行われたようです。

 

 

○終わりに

 広深港高速鉄道の開通により、今まで近くに感じていた深センと香港が、より一層身近なものになりました。また、今回レポート致しました広深港高速鉄道の他にも、20181024日には香港、マカオ、珠海(中国)を結ぶ港珠澳大橋が開通するなど中国本土と香港を一体化させるグレートベイエリア(粤港澳大湾区)構想がますます推進されています。

今後、中国と香港のインフラ、経済などの結び付きが一層強まり、中国と香港が相互に成長していく事が期待されています。

 

                                                                                                                    (1≒16円) 

                                                                                                              (1香港ドル≒14円) 

                                                                                                                                                                                     以上

 

深セン駐在 掛川

 

 

 

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