上海駐在レポート

第 82 回「深センの日本人向け病院事情」
これから海外に赴任する予定がある方の中には、仮に体調を崩した場合に現地の病院で適切な処置をしてもらえるのかと不安になる方も多くいると思います。そこで今回は、深センの駐在員向けの病院のご紹介を中心に深センの病院事情をご紹介いたします。
 
○ 中国の病院の特徴
深センでは「医院分級管理弁法」(1983年施行)により広東省社会保険局が毎年医療機関の調査を行い中国の公立病院の等級分けを行っています。
下の左表をご覧いただきますと省、衛生部直轄や大学病院などで病床数500床以上の最も等級の高い等級を「三級」、病床100~499床以下を「二級」、市や居住区レベルで病床数20~99床以下を「一級」としています。さらに、医療条件、管理水準などを点数化し、高い方から「甲」、「乙」、「丙」と分類し、等級の最も高いとされている三級甲の大病院では、CT、MRI等の先進的な医療設備が導入され、海外交流等でスタッフの教育が行われている等されています。
日本人の駐在者が多く利用されるのは、ほとんどが三級甲等の総合病院と等級による区別のない私立病院になります。
病院の等級の他にも、医師のランクも定義づけされています。医師レベル、肩書は以下の右表のように定められており、自分の病状と医師のレベルを見極めて受診することが可能になっています。
日本の病院と比較した際、私がまず大きな相違を感じたのは治療費の支払い方法です。日本では会計は外来であれば診察後になります。中国では病院に着くと、まず「問診部」と言われるところで受付を済ませる必要があり、受診に際し、カルテを作成するための費用(掛号費)を「掛号処」で支払います。その後に、診察、採血、薬の受取り等その都度で全ての処置の前に料金を支払う必要があります。
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<中国の病院の等級> <中国の医師のランク>
 
 
○ 深センの日本人向け病院の紹介
以下に実際に筆者が通院した公立病院と私立病院のご紹介を致します。
①北京大学深セン医院(公立病院)
北京大学深セン医院は、深セン市政府によって設立された総合病院で、等級は3級甲になります。以前は 「深セン中央病院」と呼ばれていましたが、深セン市政府は、北京大学と香港科学技術大学と協力して、当院を「北京大学深セン医院」に改称し、当医院を北京大学加盟病院の管理システムに含めました。
また、東京の「公益財団法人がん研究会有明病院」の姉妹医院にもなっています。ベッド数1,600床以上、総面積22,300㎡、従業員数2,000名以上と深セン一の規模と設備を持つ総合病院です。
 
②深センVISTA-SK(私立病院)
深センVISTA-SKは、北京VISTAメディカルセンターと韓国のSKテレコム(韓国最大の携帯電話事業者)が提携して設立され、日本の大学病院で長年勤められていた医師や日本人の医師の方も在籍しており、非常に安心して診察を受けることが可能になっています。医院の場所は、南山区の深センソフトウェア産業基地と呼ばれるテンセント本社や百度(バイドゥ)、アリババのIT大手企業の深セン拠点のビルやアクセラレータやベンチャー企業が集積している最新かつ綺麗な地区の中心にあり、非常に清潔感があります。
 
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<公立病院 北京大学深セン医院> <私立病院 深センVISTA-SK>
 
○ 実際に診察を受けてみて
筆者は、風邪の症状で上記の公立病院の『北京大学深セン医院(三級・甲)』と私立病院の『深センVISTA-SK』の両方で診察を受けました。
次頁表は、上記の2つの病院の費用を比較したものです。風邪といっても全く同じ症状ではないので完全に正確な比較ではないかもしれませんが参考にご覧ください。中国では疾病の場合、診察の前にまず血液検査を行うことが多いようです。
公立病院では診察費用と血液検査を含めて70.9元(約1,205円)、私立病院では同様の費用が936元(約15,912円)と同じ風邪の症状の診断結果でも約13倍も費用の差が生じました。
公立病院では、低額な医療費と24時間体制で診療を受けられるメリットがありますが、診察までの待ち時間が非常に長い事と実際の医師で日本語を話せる方がほとんどいない点が難点として挙げられます。筆者が通院した際は日本語に翻訳してくれるスタッフの方に立ち会ってもらいました。
私立病院は、医療費が高額であり、保険未加入の方ですと医療費のほとんどは自己負担となり、駐在者の負担が大きくなる事が多いです。しかし、私立病院では日本人医師の方や日本語が堪能な医師が在籍している事が多いので、日本人駐在者は安心して利用する事が出来るのではないでしょうか。
またその他に感じた事としては、北京大学深セン医院では、診療室には待合室に非常に多くの患者がおり診察が完了するまでに1時間30分以上ほど掛かりました。春節直前に行ったのですが、翻訳スタッフの方に聞いてみるとそれでも普段の1/5程の患者の数だったそうです。
また、患者数が多いために流れ作業の様にこなされている感じもあり、直前で診察を受けた方と同室で待合をしましたが、直前の方の診察風景や診察内容が丸分かりなのは少し驚きを覚えました。また採血後の止血の方法等具体的な対応も私立病院の方が丁寧な感じを受けました。
 
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<風邪の症状による公立病院と私立病院の費用の違い> <現地で処方された風邪薬>
 
○ 終わりに
公立と私立の両方の病院にて診察を受けましたが、支払方法やその他細かい点は、日本の病院との相違点を感じるところはありました。診察内容に関しては、公立の病院でも等級が高い医院や日本人医師が在籍している病院であれば、駐在員の方やご家族の方でも安心して診察を受けることができるのではないでしょうか。しかし、上記写真は、処方された薬なのですが、日本の薬局で処方される薬とは種類が違うので内服する際は、病院側から言われたことだけを鵜呑みにせず、自分で効能や飲み合わせ等も確認していくことは、日本はもとより海外で駐在する際にはさらに重要なのではないでしょうか。
 
(1元≒17円)
以上 
深圳駐在 掛川 貴史
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 

 

 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 
 
 
 

 

 
 

 

 

 

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