上海駐在レポート

第 81 回「中国のインターネット通販の現状」
中国では、Alipay(支付宝)やWeChatPay(微信支付)などのスマートフォンアプリにより日常の決済が非常に便利になりました。特に、筆者が最近利用していて便利だと感じるものにインターネット通販があり、中国では日本よりも身近に利用している方が多いようです。今月は中国のインターネット通販の現状についてレポートいたします。
 
○ 中国のインターネット通販市場
2018年1月18日、中国国家統計局より2017年のGDP成長率が発表され、中国政府主導のインフラ投資や輸出の回復、堅調な個人消費が下支えし、前年比6.9%増の82兆7,211億元(約1,400兆円)と、中国政府のGDP成長率目標である「6.5%前後」を大きく上回る結果となりまし。
下図を見ていただきますと、中国の2016年小売の市場規模は約33兆元(約561兆円)となっており、そのうちモバイルネット通販(スマートフォン等を利用したもの)による売上が約4.5兆元(76.5兆円)で、全小売売上の約13.6%を占めています。一方、日本では小売の市場規模は約139兆円、そのうちモバイルネット通販市場は約2.5兆円と小売売上高の約1.8%で、中国と比較すると低水準となっています。中国GDP成長率の高さは、小売の中でも特にモバイルネット通販の普及率の上昇が大きな要因となっていることが推測されます。
4.jpg
<2016年中国と日本の市場比較、(中国国家統計局、経済産業省等HP参照)>
 
 
○ 中国のインターネット通販企業
インターネット通販市場の企業別シェアについては、第1位の「Tmall(天(テン)猫(マオ))」と第2位の「JD.com(京(ジン)東(ドン))」の2社で約8割を占めています。中国では2009年より毎年11月11日は、インターネット上で大セールが行われ、個人の消費が最も活発になる「独身の日」とされており、昨年Tmallでは1日で約1,682億元(約2.8兆円)の売上を計上しました。この日だけで、日本でインターネットショッピングモールを運営する楽天の国内電子商取引の年間流通総額(約3兆円)に匹敵する売上規模となりました。
JD.comは、昨年11月1日~11日のキャンペーン期間中の集計ではあるものの、約1,271億元(約2.1兆円)の売上を計上し、2社ともに驚異的な販売額を記録いたしました。以下に、この2社の主な特徴について述べていきます。
5.jpg
<Tmall モバイル画面>
6.jpg
<Tmall 日本館>
 
➢ Tmall(天(テン)猫(マオ))
Tmallは、Alibabaグループが運営するBtoC(企業と個人消費者間取引)向けの通販サイトです。通販サイトが開設された2003年当初は、Tmallはまだなく、CtoC(消費者間取引)のTaobao(淘宝網)から始まり、個人取引には一般の個人のみならず、個人商店が主に出店するショッピングモールも含まれていました。
Taobao(淘宝網)の強みは、安価な商品が数多く揃っていることでしたが、個人でも簡単に参入が可能であるため、中には偽物や欠陥品の発送等も行う悪質な出店者もいたようで、これを背景として、2008年にAlibabaグループはBtoCのモールである「Tmall(天猫)」を開設し、企業から個人への販売に限定する事により取引の信頼性を向上させました。
その後、中国人消費者は「高品質の商品」を求めるようになり、2013年にAlibabaグループは中国国内にいながら海外の商品を購入可能な越境EC(国際的な電子商取引)専門の「Tmall Global(天猫国際)」を開設することで、インターネット通販の市場シェアを拡大していきました。
 
 
➢ JD.com(京(ジン)東(ドン))
JD.comは2004年に開設した総合モールで、元々はPC機器や携帯電話のインターネット販売からスタートした会社です。そのため、現在でも電化製品については他社と比較しても商品が充実しており、また、取扱商品の約70%は当日もしくは翌日配達されるスピードの速さも特徴的となっています。
2014年3月には深センに本社を置くTencent(騰訊控股)が2.15億米ドル(約236億円)で、JD.comの株式15%を取得しました。その後、Alibabaに先駆けて米国NASDAQ上場を果たし、中国最大級のIT企業へと成長し、現在も急成長を続けており、Tmallの市場シェアに迫る勢いを見せています。2016年の売上高は2,602億元(約4.4兆円)を超え、アクティブユーザー数は約2.3億人となっています。第1位のTmallとの差を縮めるために、今後は米国小売最大手のWallMart Stores(ウォルマート)と提携するなどの動きもあるようです。
 
➢ その他
7.jpg
<2016年インターネット通販企業別市場シェア率、
(中国電子商務研究センター資料参照)>
最近では、上記の2社以外にも、2008年設立のVIP.com(唯品(ウェイピン))というモールも急成長しており、2015年の総会員数は約1億人、総売上は565.9億元(約9,620億円)を超え、中国国内において、特に女性向けのフラッシュセールスサイトと呼ばれる、期間限定や割引価格などの特典付き商品の販売では最大規模のシェアを誇っています。
 
○ 実際の使用例
JD.comの実際の使用例をご紹介いたします。筆者がインターネット通販を利用するのは、店舗で買い物した場合に荷物がかさばってしまう物を購入する時が多いです。アプリを利用するためには、①個人情報と②配達先の住所の事前登録が必要になります。中国のスタッフは、個人の宅配物も勤務先に配達する方が多いようで日本との違いが感じられました。
具体的に、トイレットペーパーの10個セットを価格20元(約340円)で注文した例をご紹介いたします。先ずは、アプリから商品名を検索して商品(写真)を選び、その後に支払方法の選択画面に移り、クレジットカードのほか、ApplePay(苹果支付)やWeChatPay等から選択します。今回は深センに隣接する恵州市の店舗から発送されたのですが、当日中に深センの自宅まで届きました。家に不在時でもマンション等にお住いの方でしたらフロントに預かってもらう事が可能になっており、非常に細かく商品の現在位置の通知があるため、アプリ上でいつでも追跡確認ができます。大抵の商品は1~2日程度で配達希望先に届き、普段忙しく買い物に行けないような方でも、いつでも簡単に必要な物が手に入るので非常に便利に感じられます。
9.jpg 10.jpg 11.jpg
  <JD.comの各モバイル画面>  
 
 
○ 終わりに
今回レポートしたインターネット通販の他にも、中国ではインターネット出前の市場が2016年に取扱高が1,662億元(約2.8兆円)となり、ここ5年間で5倍にも拡大しています。中国ではWeChatPay等の決済アプリが非常に身近なので、日本より更に注文がしやすくなっているように感じられます。
しかし、インターネット通販が消費者にとって便利になるにつれ、配達員の不足とそれに伴う人件費の高騰が問題になっています。その対策として、指定の場所まで自動で移動可能な無人カートやドローン輸送による配送も徐々に導入し、配達の自動化を開始しているようです。これらは配達員不足の問題を解決するだけでなく、都市圏以外の内陸部の農村までも24時間以内に配達可能なサービスも可能にしていくと見られています。
インターネット通販の市場規模は今後、中国の最先端の技術を駆使することによって、更に成長していくのではないのでしょうか。
 
(1元≒17円)
以上 
深圳駐在 掛川 貴史
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 

 

 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 
 
 
 

 

 
 

 

 

 

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号