上海駐在レポート

第 80 回「深センの日本人学校事情」
今月は、深センの日本人学校についてレポートしていきたいと思います。実際に、深セン日本人学校へ訪問しお話しを伺ってきましたので、現状とその様子もお伝えしたいと思います。
 
○ 深センの日本人学校の概要
深センの日本人学校は、中国の法律である「中華人民共和国国家教育委員会外国人学校暫時管理弁法」に基づいて「日本国政府の援助を受けた海外子女教育機関として深セン市近隣地域に在住し、日本人国籍を有する日本人子女を対象に、学校教育法に規定に準じ心身の発達に応じて、初等・中等教育を行うこと」と『国際社会において、心身ともにたくましく生きる児童・生徒の育成』を教育目標として2008年に設立された私立の学校です。
設立当初は、全校生徒数37名ということもあり、深セン市内のホテルの1階と2階部分をレンタルして授業を行っていたそうです。その後、徐々に生徒数は増加し、2012年には生徒数が180名を超えたため、深センの中でも開発が進んでいる南山(ナンシャン)地区の閑静な場所に移転されました。南山地区は、羅湖や福田地区等のビジネス街や繁華街が多い地区と比較しても、家族連れの日本人駐在者も多く居住し、子供たちが安心して教育を受けられる生活環境になります。
 
➢ 深セン日本人学校の基本情報
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<深セン日本人学校校門の様子>
深セン日本人学校は、8階建の校舎の中で小学部と中学部が一緒に学んでいます。日本と同様に小学部は6年間、中学部は3年間の授業を受けます。
現在では小学校の生徒の人数が231名、中学生が54名で合わせて285名で、生徒数は、2008年の設立以来9年間で約7倍になりました。
また外部からの支援として、日本からは外務省、文部科学省、海外子女教育財団、在広州日本国総領事館、広東省からは広東省教育庁、深セン日本商工会などから当校設立や運営に関して支援を受けています。
 
 
➢ 教育方針
深セン日本人学校の教育方針について伺うと、中国・深センでの学校生活を通した教育目標にあるように、国際社会の中で生き抜くことのできる児童生徒の育成だが、もうひとつの側面として、いずれ日本に帰国する子供たちの日本語学習言語力の保持や、日本の学習習慣を身に着けさせることが現地で教育を行う上で大事であるとの事でした。
 
 
○ 深センならではの事情
➢ 通勤・通学
2008年に当校が設立されるまで深センに補習授業校しかなく、深センの日系企業に家族連れで駐在されていた方々には、香港にある日本人学校に通わせていた例もあったそうです。
その為、駐在者の方は深センに職場があるにもかかわらず香港に生活基盤を置く事を余儀なくされていました。香港と深センは隣接しており距離的にはさほど離れていないものの(2017年10月号参照)、イミグレーションでの手続きなどがあり、通勤がとても大変だったそうです。しかし2008年以降は、深センの日系企業に家族連れで駐在されている方々も、子供を深センの日本人学校に通学させる事が可能になった為、以前のように香港に居住する方はほとんどいなくなったようです。
 
➢ 授業(語学)
最近では日本でも小学5年生からの英語教育が義務化され、今後さらに中学年から英語教育を開始されます(2020年度から完全実施)。深センの日本人小学校の語学の授業では、英会話と中国語会話が小学1年生からカリキュラムに入っており、海外の学校ならではのカリキュラムであるように見受けられます。また深センは英語と中国語の通じる香港が隣接している為、現地の子供たちが早くから英語と中国語の両方の言語を学ぶ事は、深センという都市で生活するには特に重要な事だと思います。
 
➢ 授業(課外授業)
課外授業について、深センでは電子部品を初めとした製造工場が多いため、課外授業として現地企業の工場に見学にもよく行かれています。最近では、日本のテレビや雑誌などで深センが『紅いシリコンバレー』と呼ばれイノベーションのメッカとして知名度を上げつつある事からそういった深センの現状も社会科の授業の中に折り込んで指導されています。また日本の教育現場でもプログラミング教育が2020年から必修化されることから、STEM教育(Science, Technology, Engineering and Mathematics)に関するハードウェア商品が数多く産み出されている深センならではのプログラミングの授業も今後カリキュラムに組み込まれる可能性もあるようです。
 
○ 学費負担について
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<ヒアリングにより筆者作成>
右表の通り、深センの日本人学校の学費は約90万円ですが、日本の私立小学校の平均学費の年間約150万円(文科省調べ)と比較してみますと、深センの日本人学校の学費は、日本の私立小学校よりは低めの設定となっています。
一方、深センのインターナショナルスクールの学費は、深センで最も学費の高い学校では年間約18万元(約314万円)程度となっており、その他の深センのインターナショナルスクールでも深セン日本人学校の学費の約2~3倍の費用が掛かる学校が多いようです。
駐在者の方に会社から学費の補助が出ているのかお伺いしたところ、日本人学校では全額補助金が支給されている方や3割ほどご自身でご負担されている方等さまざまでした。
インターナショナルスクールの学費は、日本人学校よりも少々高めに設定されており、1/3~2/3程度の学費を自己負担されている方が多い事やまだお子様が何人もいる駐在者の方の金銭面での負担についてもお伺いすることが出来ました。
 
○ 終わりに
今回レポート作成にあたり日本人学校を取材させて頂きましたが、深センの日本人学校の教育方針も基本的には日本の文部科学省の指導に沿っており、中国の都市毎に大きな違いを作らないようにしていることが分かりました。また日本人駐在者の子供たちも安心して通学させる環境が整っていることも分かりました。今後、家族同伴で深センに駐在されることを検討される方も是非本レポートを参考にして頂ければ幸いです。
 
(1元≒17円)
以上 
深圳駐在 掛川 貴史
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