中国では、2000年代半ばから賃金が高騰し、廉価で豊富な労働力を活かした加工・組立が困難になった事から2015年より大衆創業・万衆創新(国民による創業・イノベーションを呼びかけるスローガン)等の各種政策や政府の支援によって新興企業の新規登録社数が増加しています。
特に深センでは、個人的な欲求や動機に基づいてものづくりを行うメイカーズと呼ばれる個人や小規模チームが多く集まり、大企業の製品と同様に世に流通しうる製品開発を行っています。このような流れから、深センの2016年の新規登録企業数は386,704社と、中国主要都市の中で最多となっています。※右図1参照
深センでは、ある業界の中での創業企業から世界トップ企業までの関係を生物学の生態系になぞらえて、エコシステムと表現されます。※次ページ図2参照
昨今の深センではエコシステムの中で、短期間で大企業並みの企業価値を生み出すことを目的とするスタートアップ企業という企業群が増加しています。さらに、従来の企業が行う開発や製造とは異なり、上述したメイカーズと呼ばれる人々が複数の企業と商品開発や事業活動などでパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら、業界の枠を超えて広く共存共栄しています。
深センでは、世界最高レベルの電子・電器産業の集積地としてのメリットやアジア最大級の電子部品街として部品の調達から組立まで可能な地域(華強北地区)の特性を活かし、ハードウェアのスタートアップ企業をはじめ新しい企業が増加しつつあります。深センのエコシステムの形成は、メイカーズやスタートアップ企業を支援するアクセラレイターと呼ばれるファンドによる支援からスタートしています。深センの代表的なアクセラレイターにHAXという企業がありますが、HAXはハイテク分野のスタートアップ企業に出資やオフィス、設備の提供を行いサポートしているのです。※右下図3参照
そしてアクセラレイターに支援を受けたメイカーズ、スタートアップ企業群からはUnicorn企業と呼ばれる企業価値が10億ドル(約1,130億円)を超える企業群へと成長し、ドローンの製造会社として有名なDJIの様な世界のトップクラス企業に成長する企業も誕生しています。