上海駐在レポート

第 79 回「ハイテク都市深センの現状」
深センには、優秀な若者が中国国内だけでなく近隣諸国等からも多く集まってきています。その理由として、深センが紅いシリコンバレーと呼ばれるほどにIoTを武器にハイテク都市へと変貌したことが挙げられます(2017年4月号参照)。
今月のレポートでは、その優秀な若者たちが深センの特性を活かし、出資金を集めて作り上げる深セン特有の企業体系、また11/16~21日まで深センで開催された中国国際ハイテクフェアの様子を含めたハイテク都市深センの現状をレポートしていきたいと思います。
 
1.中国主要都市の新規登録企業の現状
<図1:2016年中国主要都市新規登録企業(単位:社)>
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<各都市統計を基に筆者作成>
中国では、2000年代半ばから賃金が高騰し、廉価で豊富な労働力を活かした加工・組立が困難になった事から2015年より大衆創業・万衆創新(国民による創業・イノベーションを呼びかけるスローガン)等の各種政策や政府の支援によって新興企業の新規登録社数が増加しています。
特に深センでは、個人的な欲求や動機に基づいてものづくりを行うメイカーズと呼ばれる個人や小規模チームが多く集まり、大企業の製品と同様に世に流通しうる製品開発を行っています。このような流れから、深センの2016年の新規登録企業数は386,704社と、中国主要都市の中で最多となっています。※右図1参照
 
2.  深センのエコシステム
深センでは、ある業界の中での創業企業から世界トップ企業までの関係を生物学の生態系になぞらえて、エコシステムと表現されます。※次ページ図2参照
昨今の深センではエコシステムの中で、短期間で大企業並みの企業価値を生み出すことを目的とするスタートアップ企業という企業群が増加しています。さらに、従来の企業が行う開発や製造とは異なり、上述したメイカーズと呼ばれる人々が複数の企業と商品開発や事業活動などでパートナーシップを組み、互いの技術や資本を生かしながら、業界の枠を超えて広く共存共栄しています。
深センでは、世界最高レベルの電子・電器産業の集積地としてのメリットやアジア最大級の電子部品街として部品の調達から組立まで可能な地域(華強北地区)の特性を活かし、ハードウェアのスタートアップ企業をはじめ新しい企業が増加しつつあります。深センのエコシステムの形成は、メイカーズやスタートアップ企業を支援するアクセラレイターと呼ばれるファンドによる支援からスタートしています。深センの代表的なアクセラレイターにHAXという企業がありますが、HAXはハイテク分野のスタートアップ企業に出資やオフィス、設備の提供を行いサポートしているのです。※右下図3参照
そしてアクセラレイターに支援を受けたメイカーズ、スタートアップ企業群からはUnicorn企業と呼ばれる企業価値が10億ドル(約1,130億円)を超える企業群へと成長し、ドローンの製造会社として有名なDJIの様な世界のトップクラス企業に成長する企業も誕生しています。
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3.中国国際ハイテクフェア2017
2017年11月16日(木)~21日(火)に深センで開催された中国国際ハイテクフェアを視察しました。1999年に中国国務院により承認されてから今年で19回目の開催となりました。開催場所は、深センの福田地区にある会展中心という9つの展示会場からなる約105,000㎡と広大な会場で開催されました。このイベントは、商務部、その他の国家部局、深セン市人民政府が共催し、中国の技術展示会として最大で「中国随一の技術見本市」として知られています。
今回参加したフェアでは3,000社以上、10,000件以上のプロジェクトが出展され、開催期間の6日間合計で延べ50万人以上が来場しました。2017年は「イノベーション主導の開発およびサプライ品質アップグレード」をテーマとし、エネルギー保全および環境保護、新世代IT、5G回線、生物学、ハイエンド機器製造、そして新エネルギー車両が取り上げられ、ロボットやAI、VR等の発展から見る将来のサービスのあり方を提示する展示が多い様に見受けられました。
 
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<展示会場『会展中心』外観> <中国国際ハイテクフェア内観> <VR体験コーナー>
 
4.おわりに
深センでは、ハードウェア系スタートアップ企業が急拡大しているため、様々な技術を組み合わせて新しいタイプのイノベーションが今後も増加していき、製品開発のスピードがさらに上がることが期待されます。
アクセラレイターに支援を受けたスタートアップ企業の中でも、日本市場を新たな販路と位置づけ日系企業と代理店契約を締結する企業も多く見受けられます。さらに、今回視察した会展中心では、今後深センのスタートアップ企業と日系企業とのビジネスマッチングが可能な展示会も計画されています。ハイテク都市として成長する深センの市場が日系企業とどのように関わっていくのか、引き続き注目していきたいと思います。
 
 
 
 
(1ドル≒113円)
以上 
深圳駐在 掛川 貴史
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 

 

 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 
 
 
 

 

 
 

 

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