上海駐在レポート

第 78 回「深センから見た香港 Part1」
深センは、中国の政治家である鄧小平が推進した改革開放路線をきっかけに、経済的にも文化的にも開かれた都市に姿を変えてきました。小さな漁村であった深センがここまで大きな変貌を遂げた理由として、真南に位置している香港の影響が多分にあります。深センと香港は互いに色々な面で影響しあって発展してきました。今回は、深センから見た香港について来月号と2回に分けてレポートしたいと思います。
 
○ 香港の概要
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<各種資料から筆者作成>
香港の正式名称は中華人民共和国香港特別行政区といいます。1997年にイギリスから返還され2017年7月1日に返還20周年を迎えました。1,104㎢ 余の面積に約730万人を超える人々が居住する香港は、深センと同じく世界有数の人口密集地域です。気候は、亜熱帯モンスーン気候で6~9月が雨季であり、深センと同様に夏は高温多湿で台風が多く、秋から冬にかけては暖かくて乾燥しています。
GDPは2016年深センが2,934億米ドル(約3兆2,270億円)、香港が3,207億米ドル(約3兆5,270億円)で香港が深センを上回っています。しかし近年の深センは、近年ハイテク産業を中心に急速に発展し、GDP成長率も2010年以降年平均10%を維持しています。一方香港は、物流や貿易の伸びが鈍化している影響で同成長率は年平均約3%に留まり、両地区のGDPの差は縮小傾向が続いています。
そして2017年には、初めて深センが香港のGDPを抜くのではないかとも言われています。以下の項目では、深センと香港の関係を地理、歴史、政治・経済的に分けて述べていきます。
 
○ 地理的な関係
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香港は、深センの南に位置し深センから近い順に大陸部の新界(シンカイ)、九龍(クーロン)地区と香港島、ランタオ島の4つの地区と周辺の約230の島々から構成されています。
各地区の特徴を下記に簡単に紹介します。
・新界…1970年代頃までは山林や農村地区に過ぎませんでしたが、近年香港のベッドタウンとして発展を遂げた地区。
・九龍…香港最大の繁華街の尖沙咀(チムシャツイ)があり、ショッピング目当ての観光客が多い地区。
・香港島…香港の政治・経済の中心地である中環(セントラル)や銅鑼湾(コーズベイ)、観光ポイントとして有名なヴィクトリア・ピークのある香港を代表とする地区。
・ランタオ等…島の北側には、香港国際空港、北東部には香港ディズニーランドがある地区。
また、深センから香港への入国方法は、口岸(イミグレーション)にて入国手続きが必要になります(香港から中国へ戻る際も同様です)。入国方法は①鉄道、②長距離バス、③フェリー等を利用し入国する方法があります。筆者の駐在地区である『羅湖(ローフー」)駅』、『落馬洲(ロクマチョウ)駅』からは鉄道で向かうのが一般的です。所要時間は、香港中心部の九龍や香港島まで約1時間程度、深センから最も近い新界までであれば約15分程度で入ることが可能です。フェリーでは、深センの『蛇口(ジャコウ)』から約30分で香港島へ到着する事が可能です。
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<銅鑼湾の香港そごう外観の様子> <尖沙咀の繁華街の様子>
 
 
○ 歴史的関係
1840年に当時の清朝とイギリスの間で起きたアヘン戦争により、九龍半島と香港島の領域はイギリス領となりましたが、1984年12月の中英共同声明により返還が決定されました。1953年には深センと香港を結びつける鉄道(広深線)が開通したことによって、香港との境界に深セン墟と呼ばれる町が作られ、香港国境の街として人口を徐々に増加させていきました。その後は鄧小平の改革開放政策によって、深センは経済特区に指定され飛躍的な発展を遂げます。
香港の人口の大半は広東人で公用語は広東語になりますが、イギリス領であったことから英語もほとんどの地区で使用できます。一方で深センは広東省の中にあるのですが、移民が多い都市であるため広東語はほとんど話されず、北京語が公用語として使用されます。香港の土地名は、元々イギリス領であった為に九龍や香港島では、太子(Prince Edward)、佐敦(Jordan)の様な英語読みの地区が数多くあります。
 
○ 政治的・経済的関係
香港は、イギリス領から中国に返還された1997年以降、社会主義国である中国の中で2047年まで資本主義が継続して採用される予定であり、行政、立法、司法共に特別な状態を維持しています。香港の外交権は中国政府に帰属しますが、基本法の規定により香港特別行政区は経済社会分野の条約の締結や国際会議等への参加が単独で行う事が認められ、外交上も一定の独立性を保っています。深センも経済特区に指定されて以来、外国投資を誘致し、近年はハイテク産業やサービス業も急速に発展し、香港との交流もより一層強くなっています。日系企業でも香港出資の深センの会社が中国国内でビジネスを展開するといった資本の結びつきや、また日本人駐在員の中には香港に住み、香港・深セン両拠点で仕事をするといった方も多く見受けられます。
 
○ 終わりに
今月は、主に深センから見た香港の概要を紹介しました。香港は、国際的に非常に開かれた見どころの多い都市というイメージを持たれると思います。一方で、深センをはじめとする中国の都市部でも人々の生活水準は向上し、海外の駐在員もほとんど不自由無く生活することが出来るようになってきています。最近では深センで起業したり、香港の物価高を理由に香港から深センに生活拠点を移すというヒトの流れも多く聞かれるようになりました。今後益々、深センと香港の交流は活発になるのではないかと思われます。
来月は、深センからみた香港を経済的な面に焦点を当て現状をお伝え出来たらと思います。
 
 
 
以上 
深圳駐在 掛川 貴史
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 

 

 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 
 
 
 

 

 
 

 

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