上海駐在レポート

第 77 回「ドローン市場について」
深セン市はハイテク産業が盛んであり、エレクトロニクス関係の商品が数多く取り扱われておりますが、ここ深センで大いに盛り上がりを見せているハイテク産業分野の1つにドローン(無人航空機)があります。休日に街中へ足を運びますと、上空にドローンが飛び交っている光景をよく見かけることができます。実は、世界に出回っているドローンのほとんどが深センで製造されており、世界市場の出荷台数の70%を占めると言われているDJI社も深センに本社を置いています。今月は深センのドローン市場についてレポートいたします。
 
○ ドローン市場の現状
nドローン産業はもともと軍事利用目的から研究開発が始まりました。1990年代頃からは徐々に用途が広がり、近年では農薬等の散布や商品の輸送等に利用できるまで開発が進んでおり、年々用途が拡大しています。強力なCPUや各種センサーやカメラを搭載しており、頭脳部はほぼスマートフォンと変わらない性能のため、ドローンは今や「空飛ぶスマートフォン」とも称されています。
下図は、世界と中国の民生用(一般消費者による使用・一般家庭での使用を目的とする)ドローンの市場規模を示しています。ドローン市場は年々成長し続けており、2020年時点の中国市場は約260億元(約4,420億円)になると予想され、昨年実績に比べて6~7倍まで拡大することが見込まれています。
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<中国産業網を基に筆者作成>
 
 
○ ドローンと規制
中国では、中国民用航空局がドローン運用規制を監督しており、日本を含む海外と比較すると、目視範囲外での飛行や住宅密集地での飛行も認められているなど、非常に広い範囲での利用が可能となっていました。しかし今では、ドローンが普及するにつれ、様々な事故や事件等が発生するようになったため、より安全性を確保するように法律の整備が行われています。具体的には、2017年6月1日から機体重量が250gを超えるドローンについては、航空当局へ事前登録を行った後に、すべて保有者の実名登録が必要になるという規制強化も始まりました。
 
○ 深センのドローン市場
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<ファントム製品>
現在、深センに本社を置くドローン製造企業は300社以上あり、世界屈指のドローン製造都市となっています。これほどまでに深センでのドローン製造が盛んになった主な要因として次の3点が挙げられます。1点目は政府が年間3億元(約51億円)の潤沢な補助金を支給しベンチャー企業の奨励に力を入れていること、2点目は深センが得意とするスマートフォン向けに開発してきた技術の転用または応用が可能であること、3点目はドローン製造に不可欠なチップやGPS、モーター、電池等が他地域よりも比較的安価で大量に調達できることです。
次に、深センを代表するドローン製造企業であるDJI社と、深センで実際に販売されているドローンについてご紹介します。
 
 
【DJI(大疆創新科技有限公司、Da-Jiang Innovations Science and Technology Co.,Ltd.)】
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<DJIショップ>
2005年に香港科技大学を卒業したフランク・ワン氏が創業、民生用ドローンおよびその関連機器の製造企業で、商用ドローン業界の最大手であり世界シェアの70%を占めると言われています。当社は、すべての製品を自社で組み立てており、世界でその高い技術力が評価され、日本においてもレンズと画像処理ソフトの研究を行う製造拠点と開発拠点も進出させています。従業員は約10,000名を擁し、2016年の売上は約100億元(約1,700億円)で、2017年は約150億元(約2,550億円)に達する見込みとなっています。当社は2013年に販売開始した高精度な空撮が可能な機種であるファントムシリーズの発売によって全世界的な成功を収めました。
 
 
【ドローンショップ】
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 <華強電子世界>
深セン有数の電気街「華強北」ではエレクトロニクス商品の取扱いが特に多く、その中の電気ビル「華強電子世界」では、販売員が店内でドローンの操縦を披露し、店の外でも通行人が歩行している頭上でドローンが飛び交っています。販売価格はドローンの性能によりますが、200元(約3,400円)~10,000元(約170,000円)程度の価格帯となっております。DJI社製の商品では、一世代前のモデルのファントム3 スタンダードが2,999元(約50,983円)、最新のハイエンドモデルであるファントム4プロは、9,999元(約169,983円)で販売されています。
 
○ 終わりに
深センに駐在しておりますとドローンの身近さに驚きを覚えますが、ドローン産業は年々市場規模が拡大しており注目度が増している分野である一方、安全性やプライバシー等の問題も取り沙汰されています。昨今、ドローン関連企業はこのような問題点に配慮した商品の開発にも力を入れており、更なる市場の発展が期待できます。スマートフォン市場の成長と共に大きく経済成長した深センですが、今後はドローン市場の拡大に伴いさらに深センも成長していくのではないでしょうか。
 
 
以上 
深圳駐在 掛川 貴史
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