上海駐在レポート

第 76 回「中国スマートフォンメーカーの動向」
中国では、支付宝(アリペイ)や微信(ウェイシン)など日常生活の決済にも利用できる便利なアプリが多くある為、筆者は中国で生活するようになってから格段に、スマートフォンを利用する機会が増えました。
街中では携帯電話の販売会社や広告用の看板等を至る所で見かけるほど、中国ではスマートフォンは存在感を高めています。今や、世界のスマートフォンメーカー別出荷台数シェアでは、トップ10の内7社が中国企業であり、そのうち、主に深セン市と東莞市に本社を置くスマートフォンメーカーが4社あります。今月のレポートでは急成長を遂げている中国スマートフォン事情についてレポートしていきます。
 
○ スマートフォン市場の動向
2016年の世界スマ―トフォン出荷台数は14億7000万台と言われています。IDC(International Data Corporation)が2017年3月までにまとめた世界スマートフォン市場リポートによると、2017年における年間出荷台数は15億3480万台となり、2016年実績から4.4%増加する見通しです。
下表でも分かる通り、世界のスマートフォンメーカーのシェアは依然として韓国サムスン電子が22%で世界一ですが、2016年の発火事故の影響を受けて、2015年と比べてシェアが減少しました。2位は米アップルで、市場シェアは約16%となっています。3位~5位には、中国の華為技術(ファーウェイ、Huawei Technologies 以下、「華為」という。)、OPPO (広東欧珀移動通信、OPPO Mobile Telecommunications)と Vivo(維沃移動通信、Vivo Mobile Communications)がシェアを上昇させ、今やトップ10の中に中国企業が7社ランクインするほど中国スマートフォンメーカーの台頭が目立ちます。
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<IDC調査を基に筆者作成>
 
 
○ 中国メーカーの台頭
上述の通りスマートフォンメーカーのシェアに変化が起きています。2016 年のシェア構造はサムスン電子、アップルに次いで華為、OPPO、Vivo といった中国のスマートフォン企業が他国企業を押しのけ、上位進出を果たしています。
3社の中でも特に華為は、SIMフリーの格安スマートフォンで日本でも知名度を上げつつあります。OPPO とVivo は日本ではまだ有名ではありませんが、現在中国全土で急激にシェアを伸ばしています。下記に3社についてご紹介いたします。
 
●華為
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<華為のスマートフォン>
華為は深センに1987年に設立されました。設立当時の主な業務は携帯電話のネットワーク構築に必要な基地局などに通信機器を提供する企業でした。
その後、携帯電話端末の販売を手掛けるようになり、2015年にはスマートフォンの全世界販売台数が1億台を突破し、世界第3位のシェア率となりました。現在は通信機器、端末いずれの分野においても世界有数の企業へと成長しました。
また華為はスマートフォンで多くのヒットモデルを送り出しました。ドイツのライカ社と共同開発のレンズを採用したカメラを2つ搭載した「デュアルレンズ」機能を備えたハイエンドモデル(最上級モデル)の商品は、カメラ機能の楽しさや性能・質の高さなどから人気を呼び、華為の端末を利用する消費者がこれまで好んでいたローエンド、ミドルエンドのモデルだけでなく、ハイエンドでもヒットモデルを生み出しました。
多くの中国スマートフォンメーカーが中国国内や新興国をターゲットとする中、華為は品質、評判の高さから日本等の先進国にも進出を果たしています。さらに2017年度内に華為は、中国企業として初めて日本で大型工場を新設する予定となっているなど勢いは増すばかりです。
 
●OPPOとVivo
OPPOとVivoは、深セン市に隣接する東莞市に本部を置く歩歩高(BBK)傘下の電気機器メーカーです。中国のスマートフォン市場では、この2社のスマートフォンが急速な勢いでシェアを伸ばしています。IDCが発表したリポートによると、2016年の中国での年間出荷台数約4億6,500万台のうち、1位のOPPOが約7,800万台、2位の華為が約7,600万台、3位のVivoが約6,900万台と、中国国内のスマートフォン出荷台数はこの3社だけで中国全体の48%のシェアをを占めています。
OPPOとVivoは本社同士が東莞市内の1km 圏内に位置していますが、位置関係をはじめ流通戦略と海外展開に共通する所が多く見受けられます。
OPPOは、2005年に設立された電気機器メーカーで、設立当初はMP3プレイヤーなどを販売していましたが、2008年に携帯電話市場に参入しスマートフォンの販売を開始しています。当社は緑色のロゴを使用しているのが特徴的です。
当社の端末コンセプトは、ハイエンドスマートフォンを売りにしており、デザインもアップルのiPhoneに近い傾向にあります。当社は、中国でも人気の高いセルフィー(自分撮り)を強く意識したカメラの画素数、5分間の充電で2時間の通話が可能となる充電の早さを売りにしています。
Vivoは、2009年に中国で設立されたスマートフォンメーカーです。こちらは、水色を基調としたロゴとなっています。Vivoのスマートフォンは、原音を忠実に再現できるHi-Fiチップを採用した高音質な端末や2014年には当時世界で最も薄い端末を手がける等、ハイエンドを意識した商品が特徴的です。
端末の薄さや高音質なオーディオなど、ほかにはない高付加価値を提供し、販売を伸ばすことに成功しているようです。
またリアル店舗戦略として、OPPOとVivoは、インターネットが普及していない地方都市の人々をターゲットに、リアル店舗を多く出店しスマートフォンの販売を拡げてきました。インターネットでの販売よりも広告宣伝に多大な費用が掛かったようですが、この2社は地方都市をターゲットとする営業戦略が功を奏し販売を拡大したようです。筆者が訪問した内陸の地方都市でも街中の至る所でOPPOとVivoが連なっている店舗や看板を頻繁に見かけることが出来ました。
また、中国のテレビ番組のコマーシャルなどでも2社のコマーシャルは、良く見かけます。
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<華為のリアル店舗> <OPPO、VIVOのリアル店舗>
 
 
○ 終わりに
今回紹介した華為、OPPO、Vivoも含め、中国のスマートフォンメーカーは、アジア圏や新興国を中心に熾烈なシェア争いを繰り広げています。今後更に競争が激化して、中国スマートフォンメーカーが高級路線のハイスペックスマートフォンを製造し、アップルやサムスンよりも数万円安く購入できるとなれば、更に生産台数を伸ばし、華為のように日本に工場を設立する中国企業が増える事も予想されます。
華為、OPPO、Vivoの3社を始め中国のスマートフォンメーカーが今後どのような展開を図るのか注目していきたいと思います。
 
 
以上 
深圳駐在 掛川 貴史
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 

 

 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 
 
 
 

 

 
 
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