上海駐在レポート

第 75 回「外国人就労許可の新制度」
外国人の就業許可に関する新制度が、2016年10月より広東省をはじめとする一部地域で試行され、2017年4月より正式に全国で運用が開始されました。この法令により、日系企業の中国駐在員選定の際の手続きにも影響が出てきている様です。今月は、外国人就労許可の新制度についてレポート致します。
 
○ 外国人就業許可にかかる最新政策状
1.「両証整合」の概要
今回の新制度では、これまで一般外国人に対する就業許可であった「外国人入境就業許可」と政府機関・大学・ 研究所などで働かれる専門家の就業許可である「外国専門家来華工作許可」を「外国人来業就業許可」に一本化する「両証整合」を実施することを決定しました。北京市、天津市、河北省、上海市、安徽省、山東省、広東省、四川省、雲南省、寧夏回族自治区の10省・自治区では2016年10月より運営が開始されていましたが、2017年4月より全国で実施されています。
「両証整合」は国家外国専門家局によって実施され、申請資料の簡素化やオペレーションの最適化が期待されています。
 
2.「両証整合」の目的
「両証整合」の目的は、中国で就労する外国人を年収、学歴、年齢、勤続年数、中国語レベル等の採点基準でA類(ハイエンド人材)・B類(専門人材)・C類(一般人材)の3つのランクに分類することで、A類(ハイエンド人材)の流入は積極的に誘致し、B類(専門人材)の流入を適宜制限、C類(一般人材)の流入を厳格に制限することにあります。分類条件の項目の内いずれか1つの条件を満たしていればそれぞれ該当する分類に認定されます。※次頁図1・図2参照
2017年5月より新システム「外国人来華就業管理サービスシステム」が稼働開始され、大使館や領事館で申請を行う事前の手続きは、WEBシステム上で行う事になりました。従業員を雇用する企業や委託を受けた専門サービス業者は、当該システムでアカウント登録を行った後、各種申請手続きを行う事が可能となっています。この手続きを行う事により、各就労者に生涯不変のコードが1人につき1つ与えられる事になります。なお、手続きは各地域で異なる可能性がありますので、事前に各当局にご確認下さい(次頁図3参照)。
(申請用WEBサイトの参照URL:http://fwp.safea.gov.cn/)
 
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※図1<外国人就労者の分類と条件>
(国家外国専門家局サイトを基に筆者作成) 
※図2<ポイント加算表>
(国家外国専門家局サイトを基に筆者作成)
 
3.採点基準の試行版からの変更点について
2016年に試行されていた基準からやや緩和されている箇所があります。
<外国人就労者の分類と条件の変更点について>
【A類】
・「優秀な青年人材」の基準年齢が35歳以下から40歳以下に変更。
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※図3<就業許可申請フロー>
(国家外国専門家局サイトを基に筆者作成)
・「市場志向に合致する・奨励される職位に就く者」の中に、所得が前年の雇用先所在地域の平均所得の6倍以上」などが追加。
【B類】
・下記3項目の追加
① 「国際的に通用する職業技能資格証書を有する、または緊急に必要とされる技能タイプの人材」
② 「所得が前年の雇用先所在地域の平均所得の4倍以上」
③ 「国の関連部門が規定する専門人員およびプロジェクト実施の人員に該当する者」
以上3項目が追加されました。
【C類】
・“政府間協議に基づき訪中し実習を受ける外国青年”“遠洋漁業等特殊な労働に携わる外国人等”などを「割当管理を実施する人員」として1つの項目にまとめ。
・下記2項目の追加
① 「現行の『外国人在中国工作管理規定』の基準に合致する外国人」
② 「臨時もしくは短期(90日以下)労働に従事」
 
<ポイント加算表の変更点について>
主な変更としては、勤続年数の上限が15点から20点に引き上げられ、中国語レベルに関する点数の上限が10点から5点に引き下げられています。
また、新たに「特殊知的財産を有する場合」「中国での就業期間が既に連続して5年及びそれ以上」の2項目が追加され、各5ポイント加算されます。
これは、仮に60歳を超えていらっしゃる方でも、勤続年数中国での年間勤務期間が長期に渡る場合はポイントが加算される為、今回の全国版の運用により試行版では60点に達していなかった方もB類として認められるケースが増加することが見込まれます。
現地日系企業では工場の生産管理等を50~60歳台の経験豊富な人材を駐在させる事が多いことから、語学力や学歴等より、勤務経験を重視した採点基準へと調整された様に見受けられます。
 
○ 終わりに
就業許可の新制度が実施された2017年4月は深センでも多くの企業の日本人駐在員の方が交代される時期でした。新しく赴任された駐在員の方々にお話を伺うとやはり今回の新制度の変更点で、赴任されるまで手間が掛かったり、予定より赴任日が遅れたり等の話を良く耳にします。
今後中国へ赴任されるご予定のあるお客さまがいらっしゃいましたら、事前に手続き方法や赴任までのスケジュールを確認することをお勧め致します。
 
 
 (1元≒16円)
以上 
深圳駐在 掛川 貴史
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 

 

 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 
 
 
 

 

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