上海駐在レポート

第 74 回「中国の自動車事情について」
中国の自動車市場は、2009年に生産台数・販売台数とも初めて1,300万台を突破し、米国を抜いて世界第1位となりました。既に日本、米国、欧州の各世界的メーカーが激しい競争を繰り広げていますが、最近ある国産メーカーが長安と広汽に開発の新拠点を作る計画を発表するなど中国独自のブランド車も増加していく事が予想されています。
今月は現在の中国の自動車事情についてレポートしたいと思います。
 
○ 中国自動車市場の現状
中国国内での自動車の販売台数は、2009年に米国を抜いてから8年連続世界一となっています。2016年の販売台数は、約2,800万台となりました。その中でもSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)は905万台が販売され、過去最高の販売台数(年間)を記録しました。また、MPV(ミニバンなど)も好調で、中国の消費者はSUVやMPVのような大型車を好むと言えます(※表1参照)。
一方、排気量で比べてみると1.6L以下の小型車の販売も好調でした。これは2015年10月から始まった排気量1.6L以下の車に対して自動車税を半減する優遇政策の効果だと思われます。日系主要メーカーの中国国内販売は、日産(135.5万台)、ホンダ(124.8万台)トヨタ(121.4万台)となっています。
 
<表1:車種別自動車販売台数推移>
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(出所:中国汽車工業協会)
 
 
○ 中国のエコカー市場
PM2.5をはじめとする大気汚染問題が深刻化している中国では、解決策として省エネルギー車と新エネルギー車の開発・導入を推進しています。特に、中国政府は新エネルギー車の普及に注力しており、補助金の支給や充電設備の拡充などの各種政策を実施しています。例えば、2012 年に政府が発表した 「省エネ・新エネ自動車産業発展計画」 に伴う諸施策では、新エネルギー車の生産・販売時に企業に対して高額の補助金支給を行いました。これによって、ユーザーも新エネルギ―車(乗用車) 購入時に最大で10 万元 (約160万円)という高額の補助を受けることができました。
この他中国政府の政策により、新エネルギー車の販売台数は急増し2016年の販売台数は約50万台となりました。中国全体の自動車販売台数と比較すると約2%に留まりますが、2020年までに新エネルギー車の販売台数を500万台、2030年までに1,500万台と目標を掲げるなど、今後も急速に市場が拡大すると見込まれています。
<図1:新エネルギー車の分類>
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(各資料を基に筆者作成)
 
○ 深セン市のエコカー事情
筆者が駐在する深セン市は、2010年に中国で初めて電気自動車のタクシー(E-Taxi)を導入し、年々台数は増加しています。ガソリン車のタクシーは燃油サーチャージである「燃油附加費」が1~2元(約16~32円)掛かりますが、E-Taxiの場合は掛かりません。E-Taxiを実際に乗ってみましたが、ガソリン車と比較すると車体が大きく、車内も新しく綺麗な車両が多いと感じました。また、タクシーだけでなく電気バス、ハイブリッド・バスについてもエコカー化が進んでおり、深センは、環境対応に関する先進都市となっています。深センにおいてエコカーの普及が進んだ理由として考えられるのは、市内に有力な電気自動車・ハイブリッド車メーカーである比亜迪(BYD)や、電気バスメーカーである深セン五洲龍汽車があるからだと思われます。市内を走る路線バスは、2016年に約15,000台のEVバスを導入され、2017年までにすべての路線バスをEVバス化する事を決定しています。
しかし、新エネ車の販売が急増するにつれ様々な問題も発生しています。一部の企業が補助金を得る為に粗悪な車を製造して関係会社に販売した後で、電池を取り出して不正に転売するなどの補助金詐取の事案が頻発しました。また、五洲龍汽車有限公司が製造したEV ・PHV両タイプの路線バスが走行中に過充電が原因とみられる炎上事故を起こすなど安全性の問題も取り沙汰されています。
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<深セン市の電気自動車タクシー(E-Taxi)> <深セン市の電動路線バス>
 
○ 終わりに
既述の通り、中国自動車業界で新エネルギ―市場は拡大を続けていますが、今後は補助金の減額、認定基準の厳格化、メーカーへの取り締まりの強化等が実施され、販売台数の上昇率低下を予想するニュースも目にします。また利用者からは、ガソリン車と比べると航続距離が短く、充電時間が長いと感じる意見も多いようです。しかし日系メーカーは、トヨタが2018 年から中国でPHEV の生産を行うこと発表しているほか、日産も低価格のEV を導入する計画を明らかにしています。更にそれに付随する日系の部品・材料メーカーの中国の新エネルギー車産業への参入が期待されます。
世界の自動車市場を牽引する深センの動向を把握することは、今後のビジネスチャンスに繋がる可能性も大いにあると感じています。深センにお越しの際は、街中を走る乗用車(タクシー含)やバスなどに目を向けてみてはいかがでしょうか。
 
 
 
 
 
 (1元≒16円)
以上 
深圳駐在 掛川 貴史
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 

 

 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 
 
 
 

 

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