上海駐在レポート

第 70 回「深センの地下鉄事情」
深センに赴任して早3ヵ月が過ぎました。深センでは、新築マンションの価格上昇率が中国で1番になるなど物価高騰が止まりません。しかし、日々生活をしている中のお金を支払う場面では、日本より少額で済む事もしばしば感じます。一番に感じたのは、日々利用する交通機関の安さです。例えば地下鉄の初乗りが2元(≒32円)と日本と比べかなり割安です。深センの地下鉄は2004年に初めて開通しましたが、今も深セン市内各地で地下鉄の建設を行っています。今回は、近年成長著しい深セン地下鉄のご紹介をしたいと思います。
 
○ 深センのGDPと人口推移
深センの地下鉄は、深セン市のGDPと人口の増加と共に発展しました。下図は、2005年~2015年までの、深セン市のGDPと人口の推移を表しています。GDPは2005年から毎年1,000億元(約1兆6,000億円)ずつ増加し続け、2011年には1兆元(約16兆円)を突破し、10年間でおよそ4倍になりました。人口も毎年増加し続け、2010年には深セン市内の経済特区が市内全域に拡大したことから1,000万人を突破しました。中国の都市別GDPランキングでは、1位から順に上海、北京、広州と続き、深セン市は4位に位置していますが、1人当たりのGDPランキングでは、中国大陸の主要都市の中で1位となっており、深セン市が急成長している事が伺えます。こうした勢いの中、深セン市の地下鉄の開発も進んでいきました。
3.jpg
<深セン統計局HPより筆者作成>
 
○ 深セン地下鉄の概要
深セン地下鉄は中国本土では北京、天津、上海、広州に次ぐ5番目の2004年12月28日に開通しました。ちなみに、中国で1番早く地下鉄が開通したのは1969年に開通した北京市で、また上海の地下鉄は1993年に開通しました。深センの地下鉄の開通時期が北京や上海等の中国主要都市の中では比較的遅れて開通したことがわかります。なお、深センでは路線名を1号線、2号線など数字で区別されています。以前は日本の路線と同じ様に羅宝線や蛇口線等路線名があったのですが、2013年に深セン市規画局より、海外から来た人々にも分かりやすい様に数字で呼ぶように指導が入り、現在のように数字による呼称に変更となりました。
また2004年の開通当初は1号線と4号線の2路線のみでしたが、2011年夏季の国際大学スポーツ連盟が主催したユニバーシアード大会の開催に伴い地下鉄の開発が活発となり、2016年11月末現在、1号線、2号線、3号線、4号線、5号線、7号線、9号線、11号線の計8路線が運行しています。6号線、8号線、10号線に関しては11号線が計画されるより前に、既に計画されていましたが、まだ工事中で完成に至っておらず2020年までに開通する予定の路線です。
 
○ 深セン地下鉄の乗車券
4.jpg
<上から単程票、深セン通、オクトパスカード>
5.jpg
<深セン地下鉄の自動券売機>
深センの地下鉄に乗車する方法は、主に2つの方法があります。
1つは「単程票」と呼ばれる緑色のコインの形をしたIC技術搭載のトークンを自動券売機で購入する方法です。こちらの券売機では使用できる紙幣が1元札と5元札のみですが、筆者も赴任当初、1元札と5元札の持ち合わせがない時に、買い方が分からず流れを止めてしまい、他の乗車する人々に迷惑を掛けてしまいました。また券売機はきれいな紙幣でないと戻されることもしばしばあるため、こちらの方法はあまりお勧めはできません。
今、一般的になっている乗車方法は、深セン通(シンセンツウ)と呼ばれる料金チャージの追加可能なカードを使用し、乗車する方法です。深セン通は単程票のように券売機で購入するのではなく、窓口から少し離れた所にある各駅で販売している販売所で購入します。深セン通は日本のSuicaやPASMOと同じIC型のカードとなっており、地下鉄の他に、バスや深セン通を使用可能なタクシーなどの公共交通機関や、コンビニやスーパーなどの支払にも利用可能です。
また深センから近い香港には香港内の公共交通機関で利用可能なオクトパスカード(八達通)というカードがありますが、深センと香港の国境を頻繁に行き来する人のために、深セン通と香港のオクトパスカードの両方の機能を持った「互通行(フートンシン)」というカードもあります。通貨を交換する機能は搭載されていないため、チャージした人民元は中国のみで、香港ドルは香港のみで使用可能です。
 
○ 深セン地下鉄で気づいたこと
筆者が初めて地下鉄に乗車した際に驚いたのは、X線にて手荷物検査を行っている事でした。危険物や1ℓ以上の油や酒類の持ち込みを検査しているようです。運賃は、初乗り2元~11元((約32円~176円)と格安であること。日本のように正確な到着時間を示す時刻表はありませんが、到着予定時刻まであと○○分という表示が電子掲示板に表示されています。およそ5分弱の間隔で次の電車が来るので不便さは感じません。
また乗客のマナーについては、駅で電車が到着した際に、強引に割り込むこと等はなく、下車するお客さんを待ってから乗車するなどイメージとは違いしっかりしていました。
さらに車内では日本と同じ様に液晶画面があり、乗車マナーに関する動画が流れています。こうした取組みなどが中国人の意識を変化させ、地下鉄乗車のマナーに繋がっています。
6.jpg 7.jpg
<整列を促す足跡マーク> <乗車前の利用者の様子>
 
○ 終わりに
深センでは地下鉄の開発が現在も急ピッチで続いており、計画段階では、2020年までに16号線までの開発が予定されています。2016年6月には地下鉄11号線が開通しました。この11号線は、中国の全地下鉄の路線の中でも全長51.9kmで最長かつ最高時速120kmで最速と、中国一の地下鉄として話題になっています。電力系統にはSVC(静止型無効電力補償装置)という東京電力が開発した電圧の変動の調整を行える装置の搭載を初めて採用しました。省エネ推進も兼ねていて列車の安定的運行に重要な役割を果たしています。
今後も深センの街と共に発展していく、地下鉄の様子に注目していきたいと思います。
 
 
 
 
 (1元≒16円)
以上 
深圳駐在 掛川
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 

 

 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 

 

 
 
 
 

 

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号