上海駐在レポート

第 68 回「帰任報告~現在の中国の印象~」
2013年10月からの上海駐在を終え、10月末に日本へ帰国することになりました。変化の激しい中国において3年という駐在生活は毎日が新鮮で、新たな発見や学びが多い貴重な経験となりました。また出張や旅行で中国大陸29の省・自治区・直轄市を訪問し、地域ごとの発展の様子、生活している人々の様子を垣間見ることが出来ました。
今月のレポートではこれまでの駐在生活を通して感じた現在の中国の「ヒト・モノ(サービス)・カネ」の印象をお伝えし帰任報告としたいと思います。
 
○ ヒト
ヒトというキーワードでは、ここ2、3年の中国人の「中所得者層の台頭」が印象的でした(中所得者層の定義は年収73万円~182万円程度)。特に上海に至っては、人口の増加と共に一人当たりの可処分所得も増加し、さらに地下鉄路線の拡大に伴い、上海市郊外でも市内中心部と相違ない生活が送れるほどに街の発展が進みました。また所得格差が大きいといわれる海岸沿いと内陸部でも中国全体でみれば中所得者層は増加し、徐々にですが中国全土の人々の生活水準は上がっているように感じました。
一方で、貧困層、低所得者層(貧困層は年収7万3千円以下程度、低所得者層は年収7万3千円~36万5千円程度と定義)が依然と多く存在するのも今の中国の実情です。筆者が内陸部の都市を訪れる際、その都市に住んでいる人々の所得水準を図る一つの目安として、欧米料理店の有無を参考にしていました。理由は、暮らしが豊かになると地元料理以外にイタリアやフランス料理を食したりワインを飲んだりする傾向にあるからです。そのような観点で述べると、内陸部の都市でも、例えば青海省の西寧市など省都レベルの都市では欧米料理店は多く見受けられましたが、内陸部の中心地から離れた都市では地元料理ばかりが目立つ印象を持ちました。また、欧米料理の観点以外にも地下鉄やマンション、ビルの建設状況も参考に各地方都市の発展を見てきましたが、建設途上の地域も未だ多く見受けられました。こうした地方都市が今後どのように発展し、そこに住む人々の生活がどのように変化してくるのか将来非常に楽しみです。
 
○ モノ(サービス)
モノというキーワードで印象的な出来事は、皆さんご存知の「爆買い」です。爆買いは元々、2014年11月頃からの急激な円安が進んだことがきっかけとなりましたが、それが2015年2月の春節の大型連休時期に一気に加熱したのが中国人による爆買いです。2016年10月の直近の国慶節では爆買いに陰りが見え始めたという報道もありましたが、中国人の求めるものが家電製品や化粧品等を大量に購入する「モノ」から観光地巡り、医療ツーリズムなどの「サービス」へと変化しているだけで、訪日中国人の数は年々上昇を続けています。そしてこの勢いはまだまだ続くと思われます。
さらに爆買いというキーワードから、「越境EC」というビジネスにも注目が集まりました。中国にいながらインターネットで日本製品を購入することが出来、関税や増値税など税制面が通常の貿易よりも優遇されている点が中国人消費者に受け入れられ、ブームとなりました。この越境ECというビジネスモデルにより依然として日本製品の人気の高さを窺えることが出来ました。
日本にいる知人の話でも、最近では銀座や秋葉原、新宿等どこを歩いても中国人がいると聞きますが、爆買い、越境ECという現象は日本(人)と中国(人)の距離間をより身近なものにしてくれたのではないでしょうか。
 
○ カネ
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《晴れた日の上海の街並み》
駐在期間中、カネというキーワードでは、「2015年11月、10年ぶりに新100元札が発行」されたことがニュースに挙がりました。これは、偽札の横行がひどく、銀行のATMからも偽札が出てきてしまうことから、中国人民銀行が偽札防止対策として10年ぶりに行ったものです。ただ、筆者がそれよりも印象に残っているのが支付宝(アリペイ)、微信(ウェイシン)などの「電子決済の台頭」です。電子決済については2016年9月号でご紹介した通りですので内容は割愛させて頂きますが、偽札等関係なく現金なしで何でも決済が出来てしまう電子決済の台頭はやはり衝撃的でした。今や電子決済を中心に、タクシーの配車、食事のデリバリー、市内での自転車レンタルの利用などにも波及し、生活になくてはならないツールとなりました。
中国のIT技術は日本よりも遥か前を進んでいるように感じます。爆買いと相まって、支付宝の決済は日本でもユニクロなどで一部利用されていますが、これから益々日本でのビジネスにも参入してくることが期待されます。
 
○ おわりに
中国人中所得者層の台頭は、身近な生活用品を海外へ求める「爆買い、越境EC」といったブームを生み、電子決済サービスは海外に広く普及しました。今回取り上げた「中所得者層、爆買い、電子決済」は現在の中国ビジネスに欠かせないキーワードであると筆者は考えます。
筆者が駐在した3年間で中国は益々国際化が進み、それは身近な消費者の視点から見ても明らかです。中国に駐在しながら、中資系企業の日系企業買収、中国人の爆買いを見てきて、最近の日本経済を動かしているのは中国(人)なんだと肌で感じることが出来ました。
一方日本では、一部の報道などの影響により中国に対して良い印象を持っていない方も多く見受けられます。しかしビジネスでもプライベートでも中国の方との共存なしには今後の日本の発展はないと思います。帰国後はこうした筆者の認識を広く伝えていければと思っております。
 
 
 
 
以上 
上海駐在 小林邦寛
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