上海駐在レポート

第 67 回「~番外編~ラオス訪問記」
先日、ASEAN地域唯一の内陸国、ラオス・ビエンチャン、パクセーを訪問しました。現在、日本や上海からは直行便がなく移動にも時間が掛かりますが、タイやベトナムからは陸路での移動が可能となっております。その為、近年ラオスは「タイ・ベトナムプラスワン」という位置付けで投資期待が高まっています。今月は、番外編と致しまして、ラオスの概要、投資環境、ラオス工業団地についてご紹介させて頂きます。
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○ ラオスとは
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ラオスは全人口の約半数を占める低地ラオ族と、その他48民族を抱えた社会主義国家です。場所はインドシナ半島中央部に位置し、中国、タイ、ベトナム、カンボジア、ミャンマーに囲まれた東南アジア唯一の内陸国です。過去にはフランスの統治下にあり、1953年にフランス・ラオス条約に基づき完全独立、その後内戦を繰り返し、1975年にラオス人民民主共和国が設立されました。その後、1979年に市場経済原理の導入を決定、1986年には「ラボップ・マイ(市場経済化政策)」を採用したものの、経済は一層混乱。政府の経済引き締め策により西側諸国との関係改善を図り、経済援助増大により経済が安定しました。
尚、ラオスは日本にとって最大の援助国であり、1958年の日・ラオス間の経済・技術協力協定の署名以降、良好な関係を築いています。
 
○ ラオス投資の魅力
ビジネスにおけるラオスの魅力は①安価な労働力と②豊富な天然資源です。
① 安価な労働力
タイやベトナムの人件費が高騰する中、ラオスではタイの7分の1の人件費を魅力として、縫製業など労働集約型産業の進出が相次いでいます。また全人口のうち20歳未満の人口が約50%と非常に若く、労働人口(15~64歳)は2015年で410万人と全人口の約63%を占めています。さらにラオスとタイは文化が近く、タイ語を理解するラオス人が多く存在します。タイの地場企業の多くはラオスで工場を運営する場合にタイからマネージャーを連れてきてラオス人の教育を行っています。現在、多くのラオス人はタイへ出稼ぎに出ていますが、今後ラオスへの進出企業が増加すれば、徐々にラオス国内の労働者も増えてくることが期待されます。
② 豊富な天然資源
ラオスは金や銅などの鉱山資源の開発が盛んで、ラオス経済の重要な資金源となっています。さらにメコン川の豊富な水資源を電力に変え、タイやベトナムなどの周辺国へ輸出していることから、ラオスは「東南アジアのバッテリー」と呼ばれています。輸出品目シェアでは鉱物・電力が全体の40.3%(2014年)と、2位の木材・木製品(26.1%)と比較しても断トツのシェアを占めています。また主要貿易国はタイ、ベトナム、中国の3カ国ですが、特に隣国のタイとは、輸出相手国としてシェア31.0%、輸入相手国として56.1%(2014年統計)と圧倒的なシェアを持っています。
 
以上の点から、ラオスはタイ工場の生産の一部を委託・加工する役割が期待されており、「タイプラスワン」として注目されています。
 
○ ラオス工業団地
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ラオス政府は海外企業の誘致を加速させるべく、工業団地整備に着手しています。現在、ラオスSEZ国家委員会が承認したSEZ(経済特区)は10か所あり、その内入居可能なSEZは右図の3か所です。3か所の工業団地に共通していることは、どこもタイとの国境近く(国境沿いから1時間圏内)に位置していることです。ラオス投資における課題として、内陸国であるがゆえに輸送に時間とコストがかかることが挙げられますが、これらの工業団地はタイへの輸送の問題を解決し、タイ企業とラオス企業とで効率の良い運営を実現しています。
尚、先日のラオス訪問では、パクセージャパン中小企業専用経済特区(以下PJSS)を視察しましたので、以下ご紹介させて頂きます。
 
≪パクセージャパン中小企業専用経済特区(PJSS)について≫
PJSSはラオス南方に位置し、タイ・カンボジアとの国境に近いチャンパサック県のパクセー市内にあります。首都ビエンチャンからは約770㎞の距離にあり、飛行機で約1時間かかります。
PJSSの開発・運営会社である”PJSS Development Co.,Ltd.”は2015年12月に設立され、出資者はラオス政府経済特区委員会(30%)・サイサナグループ(30%)・サワンTVSコンサルタント(20%)・西松建設(20%)です。工業団地内は西松建設により造成が行われており、造成予定地には日系では既にダイワハーネス、レオンカワールド、ジャパンテック、アンドウ、ナダヤ、新電元の6社が操業を開始しています。
PJSSのコンセプトはあくまでも「日系中小企業専門」であり、同一賃金・同一手当を原則としています。PJSS内への大企業の進出を防ぎ、人材の引き抜き・給与の高騰を招かない環境を目指しています。その為、PJSS内の企業は、同地区内の別企業の従業員が退職した後に、当該従業員の採用は4か月間行わないことを企業間同士で覚書を結ぶ等、PJSS内全体で従業員管理を徹底しています。
またPJSS内企業は、黒字転換後10年間は法人税無税(それ以降は、8%)、個人所得税は一律5%、材料・資材のVAT(付加価値税)及び輸入税の原則免除というアジアでは最も優遇された恩典が付与されています。労働の取り合いをすることなく、こうした恩典を受けられることがPJSS入居企業の最大の目的となっています。さらに、タイとの国境沿いにあるメコン川に、日本のODAによりパクセー橋が2000年に完成し、パクセーとタイの間はこの橋を通じて、陸路での物流が可能となっています。
 
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○ おわりに
今回の視察ではラオスの他タイ・バンコクにも視察を行いましたが、タイのインフラは中国上海にも劣らず整備されており、東南アジアの中でタイは依然として日系企業の進出先として整った環境にあると感じました。但し、タイに進出している企業でも人件費の高騰に頭を悩ませている経営者の方も多いのではないでしょうか?そんな時にラオスはタイプラスワンを検討される場合の、一つの候補地になると考えます。安価な労働力と豊富な天然資源が魅力のラオスに注目してみては如何でしょうか。
 
 
 
 
以上 
上海駐在 小林邦寛
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