上海駐在レポート

第 65 回「中国のビール事情」
上海では連日30度を超える猛暑が続いており、ビールの欠かせない日が続きます。中国のお酒といえば白酒、紹興酒などがあり、最近では若者を中心にワインの人気も高まっていますが、やはり依然として人気のあるお酒はビールです。特に夏場はビールがよく飲まれています。また、中国は世界で一番ビール消費量の多い国であり、中国各地に地ビールが多くあるなどバリエーションが豊富にあります。今月はそんな中国のビール事情を紹介したいと思います。
 
 
○ 中国のビール市場
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右図の通り世界の中で中国のビール生産量、消費量は最も多く、中国でのビール市場は年々拡大を続けています。国家統計局のデータによると、2015年10月時点において年間2000万元(約3億2,000万円)以上の売上を上げるビール製造企業が中国各地に約470社あると言われています。ビール製造企業には白酒や紹興酒、ワインなどと比較して外国資本の企業や地域性の高い企業が多くを占めます。また各地域の生産量をみると、経済が発達している沿海部と人口の多い地域に集中しています。省別では青島ビールで有名な山東省(全生産量の約15%)がトップであり、続いて広東省(同8.8%)、河南省(同8.2%)、遼寧省(同5.5%)の順となります。
さらに消費量については、中国は2位のアメリカと比べて圧倒的に多いですが、人口一人当たりの消費量は30リットル超と、1位のチェコ共和国(同142.6リットル)と比べると大きな差があります。中国は人口が多い分、一人当たりの消費量が他の国と比べて少なく、これは所得水準の上昇が著しい中国にとっては依然としてビール市場の拡大の余地があると言えるのではないでしょうか。
 
○ 青島ビール
日本の中華料理にも定番の青島ビールについてご紹介します。青島ビールは日本以外にも世界85ヵ国に愛飲されている、中国で最も有名で歴史のあるビールメーカーです。歴史を遡ると、1903年にドイツの租借地であった山東省青島市にて、ドイツの投資家がドイツの醸造技術を採用したビール工場を設立しました。その後、日本の大日本麦酒(現アサヒビール及びサッポロビール)の経営を経て、1945年の日本敗戦後に青島市政府所管の国有企業として継承されました。経営権がドイツ、日本、中国と移ってもドイツの醸造技術を継承していることがこれまで世界中から愛されるビールとなっている所以です。
また青島市では毎年8月の第2週から「青島国際ビール祭り」が約2週間に亘って開催されます。青島ビールグループが観光客誘致向上のために展開している国家レベルの巨大イベントで、中国の春節と同じくらい重要なイベントの一つとして注目されています。1991年から始まったこのビール祭りは観光・文化・スポーツ・商業など様々な分野を融合したイベントとなっており、これまで300万人もの観光客が足を運んだと言われています。
青島ビールと日本企業との関連では、1999年にアサヒビールとの合弁会社を深センに設立し中国国内向けにスーパードライを生産・販売、2012年にはサントリーとの合弁会社を設立し、上海、江蘇省で「三得利(サントリー)」と「青島」の両ブランドの生産・販売を行いました。但し、サントリーとは2015年10月に中国景気減速の背景から合弁を解消しており、「三得利(サントリー」ブランドは青島ビールにライセンスを供与する形で生産・販売を継続しています。
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≪写真①:様々な種類の青島ビール≫ ≪写真②:青島ビール博物館にて、生産現場の様子≫
 
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≪写真③:中国メーカーの代表的なビール≫

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≪写真④:日系メーカーの代表的なビール≫
 
○ 中国ビールの特徴
中国メーカーのビールでは、右写真③のように、左から雪花ビール、青島ビール、ハルピンビールなどがよく見かけられます。日本人の知名度としては青島ビールが一番かもしれませんが、実は中国での生産量No.1の会社は雪花ビール(北京市)で、2014年末まで9年連続トップの位置を保持しています。
日本ブランドでは、写真④のように、アサヒビール、キリンビール、サントリービールが流通しており、見た目は日本のものと同じに見えますが、中身が多少異なります。例えばスーパードライのアルコール度数は、日本が5.0%に対して、中国産は4.3%と少し低めになっています。中国人は全般的に薄味を好む傾向にある為、日本よりもアルコール度数が低く、水っぽいビールが多いです。
また中国の店頭などで販売しているビールの特徴に挙げられるのは、値段の安さです。例えば日本ではアサヒビール350mlが店頭で200円前後であるのに対して、中国では、6.8元(約108円)と非常に安い値段となっています。中国ではビールに対する消費税(嗜好品税)が販売価格の7~9%と、増値税(日本の消費税に相当)が17%掛かり、合計すると販売価格の24~26%が中国のビールに掛かる税金となります。一方、日本では1000リットル当たり220,000円の酒税(500mlは110円)と消費税が8%掛かります。日本と中国における製造原価などの違いもあり一概に比較はできませんが、日本では販売価格の40%近くが酒税として掛かっています。この日本の酒税が世界でも群を抜いて高い税率であり、販売価格に上乗せされているため、日本のビールは中国よりも販売価格が高く設定されています。そのため、中国ではビール自体が安いことから、酒税が比較的安い日本の「発泡酒」や「第三のビール」のような酒類は見受けられません。
お店でビールを注文する際の特徴として、日本では何も言わなくてもキンキンに冷えたビールが出てきますが、中国では冷たい飲み物が体に悪いという習慣があるため、何も言わないと常温のビールが出てきてしまいます。さらに中国では、缶やボトルだけでグラスを持って来てくれないこともあります。常温のビールを缶やボトルで飲む、郷に入れば郷に従えとは言いますが、日本人はやはり冷えたビールをグラスで飲みたいものです。
 
 
○ 終わりに
中国各地には特色のあるビールが非常に多く存在し、内陸部では冷たいビールがないこともしばしばあり、上海以上に日本とのギャップを感じることがあります。中国の各地域を訪れた時にその地のビールを飲み比べしてみることは、中国の文化を垣間見る機会にもなり、面白い発見があるかもしれません。是非中国を訪れる際には「ビール」という観点で訪問してみては如何でしょうか。
 
 
 
(1元≒16円)
上海駐在 小林邦寛
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