上海駐在レポート

第 60 回「中国人の一人暮らし事情」

 第 60 回「中国人の一人暮らし事情」

上海には中国全土の各省から出稼ぎ労働者が集まっており、中国一の経済都市として常住人口は益々増加を続けています。常住人口が増加する中、上海市では昨年12月末に地下鉄12、13号線が延線となり、インフラ面も着実に整備されています。近年の不動産価格や賃料価格の上昇等は地方から来る労働者には大きな悩みとなっているようです。労働者の中には各地で大学を卒業した新卒者も多く含まれますが、一体彼らはどのような生活をしているのでしょうか。
今月のレポートでは、上海の日系企業に勤める入社3年目の中国人男性(独身)をモデルとして、中国人の一人暮らし事情を紹介したいと思います。
 
○ 上海市の最低賃金、平均賃金推移
まずは、ベースとなる上海市の賃金推移について紹介致します。下記表1は上海市の月額の最低賃金、平均賃金の推移を表したものです。2015年の月額最低賃金は2,020元(約36,360円)、2014年の平均賃金は5,451元(約98,118円)になります。日本の大学新卒者の初任給が約20万円程度であることを鑑みると、日本・中国の生活水準の違いはあるにせよ、あまり無駄遣いの出来ない給与水準ではないでしょうか。
また、日系人材紹介会社のヒアリングによれば、日系企業の求人募集給与水準は、下記表2のとおりです。ローカル企業に限らず、日系企業に勤める場合であっても、日本の大学新卒者に比べ給与水準は低いことが窺えます。いずれにしても、若い労働者にとっては物価上昇が続く上海(2014年11月号ご参照)での生活には節制が求められているのが現状です。
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○ 家賃相場
次に一人暮らしを行う上で最も費用の掛かる家賃について、地元の不動産会社「我愛我家(ウォアイウォジア)」に上海市の家賃相場をヒアリングしましたので紹介致します。
冒頭触れたとおり、年々上昇している家賃相場は、築年数、立地、内装等を考慮しなければ1,500元(約27,000円)程度でも入居可能とのことですが、20~30代の若者が賃貸する水準は30~40㎡で3,000~4,000元(約54,000~72,000円)が一般的な相場のようです。
また家賃については物件所有の大家と直接交渉することが多いとのことですが、契約当初に3ヶ月分の家賃と家賃1ヵ月分の保証金の合計4ヶ月を支払うことが一般的です。
実際に部屋の見学をさせてもらうと、内装が綺麗に整っている部屋、ボロボロの部屋、シャワートイレが部屋毎に設置もしくは共有スペースに設置されているアパート等、家賃相場によって様々でした。共通しているのはどの部屋にも備え付けの家具、家電が付属している点で、一人暮らしを始めるにあたって家賃、保証金の負担以外に大きな費用が掛からないことは当地の特徴の一つであると言えます。
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≪家具家電備え付けの一人暮らし部屋≫
ただし、家具や家電の費用が掛からないからといって、月の収入が5,000~6,000元程度の若者が家賃3,000~4,000元を支払うのはやはり困難であると感じます。特に収入の少ない労働者にとっては、上海で一人暮らしを行うには厳しい生活水準です。その為、収入の少ない中国人の若者は部屋を2~3人でシェアする話をよく耳にします。リビングと個室が2つ以上ある部屋を家賃4,000~5,000元程度で賃貸し、シェアする人数で家賃を按分することで一人当たりの負担を軽減しているようです。
このように複数の中国人が部屋を共有して上海に出稼ぎに来ることは日本ではあまり見受けられない形式のため非常に驚かされます。ただ反対に、それだけ上海での労働が中国内陸部等の他の省に比べ賃金水準が高く、上海が魅力的な都市であると言えるのではないでしょうか。
 
 
○ 中国人の一人暮らし生活を分析!
最後に、日系企業に勤める入社3年目の男性(独身)をモデルケースとしてひと月の一人暮らし生活を分析してみたいと思います。この男性は、現在個人所得税、社会保険を除いた月の手取り額が6,500元(約117,000円)で、次頁の表通り、ひと月の給与に対して家賃、食費等の固定費を差し引いただけで手元にはほとんど残らない生活水準となっています。
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賃貸アパートについては内装を重視しており、給与水準に対して家賃が高めであるものの部屋の構造には強いこだわりを持っています。尚、この男性は直近まで別の場所である友人と部屋をシェアして暮らしており、当時の家賃は一人当たり2,300元とのことでした。一人暮らしを始めるきっかけとなったのは、近い将来の結婚と昇給(6,500元→8,000元)を踏まえてのことのようです。
日々の食費については、日本料理や洋食等を食べると少なくとも一食当たり30~50元掛かってしまい、すぐに予算オーバーしてしまうため、毎日ローカル料理を食することが必要となっています。月の給与の他に別途賞与が支払われていますが、日々の食事の節制等が交際費を捻出するためには非常に重要のようです。
 
 
○ おわりに
上記事例は、一人の男性をモデルケースとして取り上げましたが、中国人の中には両親や祖父母の資産背景により上記とは全く異なる生活水準を送る若者がいることも事実としてあります。また内陸部等では上記事例よりも更に低い生活水準を送る人も同様に存在します。
上記男性の場合には親の力を借りずに自分自身で生活の生計を立てるため、「何が何でも出世する!」という強い意志が見受けられました。ある程度裕福な生活を送る事が出来る日本人の中には、出世欲が薄れてきている人もいるという報道を耳にしますが、一定の生活を保つために貪欲に出世を目指すこの男性の姿勢は、我々日本人も改めて見習わなければならないのではと感じることとなりました。
  
 
 
 
 
 
 
(1元=18円)
以上
上海駐在 小林邦寛
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