上海駐在レポート

第 56 回「金山工業園区、姚荘経済開発区」

第 56 回「金山工業園区、姚荘経済開発区」

現在、上海市内の人口は2,400万人を超えており、今後3,000万人に達すると言われています。人口増加に伴い、上海市中心部では道路、地下鉄を中心とした交通ネットワークの拡張が続けられ、これまで不便であった上海市郊外の開発区へのアクセスの利便性も高まっています。上海市郊外にある開発区は近年、環境の変化に対応し、その役割、機能を変化させ、都市型開発区としてその魅力を高めています。
先日、上海外聯発商務諮詢有限公司(当行100%出資の現地法人、都民銀商務諮詢(上海)有限公司の業務提携先)の案内により上海市内に位置する「金山工業園区」及び上海市に隣接する浙江省嘉善県の「姚荘経済開発区」を視察してきました。今月のレポートでは特色ある当該開発区の概要についてご紹介したいと思います。
 
○ 開発区とは
2.jpg
《金山工業園区の位置図》
「開発区」とは、外資導入促進のために設けられた工業エリアのことであり、中国における対外開放地域の一つとされています。1978年からスタートした中国の「改革開放政策」により、中国市場が外国に開放されたことをきっかけに、開発区は当初、沿海部(上海、大連、天津、青島、広州など)に設置されました。その後、内陸部にも設置されるようになり、現在では、設置地域は中国全土に広がっています(同じ都市でも複数の開発区が存在しています)。なお、開発区もレベルに応じて、国家級、省級、市級、県級と区分されており、それぞれ規模、インフラ整備状況、優遇政策の内容、許認可権限などが変わってきますので注意が必要となります(企業誘致の実績に応じて省級から国家級へ変わるなど、昇格することもあります)。
 
○ 上海市、金山工業園区
「金山工業園区」は2003年に上海市政府により批准された省級レベルの開発区の一つです。上海市西南部にあり、市中心部から約55㎞、虹橋空港から約50㎞、浦東空港から60㎞の場所に位置しています。交通インフラにおいては、「四縦三横」となる7本の高速道路、上海-杭州間の高速鉄道を利用すれば上海虹橋駅から金山北駅まで約16分、また上海南駅から軌道交通(いわゆる地下鉄)22号線が通り金山工業区駅まで約25分で繋がっています。
工業園区内の計画面積は58k㎡あり、既に24k㎡が開発済みとなっています。その中には区の6つの重点発展産業拠点があります。具体的には①バイオ医薬産業拠点、②光電子工学産業拠点、③先進装備製造産業園、④食品加工産業園、⑤グリーンクリエイティブ印刷産業拠点、⑥新素材産業園となっており、日系企業では、山崎製パン、福助工業、金井特線等が進出しています。また、園区内には1.76k㎡に及ぶ「上海漕河経総合保税区」があり、保税加工、保税物流サービスを中心に商品の展示、国際貿易サービス、金融サービス等を行っています。
工業園区内には、内資、外資を含め約600の企業が存在し、うち外資企業は約120社、日系企業は30社ほど進出しています。視察時には、ガン患者向け医療機器の製造販売を行っている日系企業に訪問させて頂きました。進出理由については、「取引先が上海・浙江省に集中している中で、医療機器という製品の都合上輸送に時間を掛けられないことから物流面を考慮して浙江省に隣接している金山区を選択した」とのことでした。
また、2011年には 上海地区唯一の特定国向けの開発区である「上海日本中小企業産業園」が設置されました。ここは上海市商務委員会、金山政府と上海総領事館、ジェトロ、商工クラブ等の共同推進により、日本の中小企業に的を絞って投資誘致活動を行っています。計画面積は2.2k㎡あり、オフィスビルや研究開発施設、標準工場、オーダーメイド工場や関連施設等を建設し、日本の中小企業のニーズに応えています。誘致業種は化学分野の業種を除き制限はなく、また企業規模にも条件はありませんが、省エネ・環境に配慮した企業、管理モデルが先進的である企業等上記に挙げた重点発展産業を主なターゲットとし投資誘致を進めています。
3.jpg

《「上海日本中小企業産業園」外観》

 
○ 浙江省嘉善県、姚荘経済開発区
嘉善県には、①嘉善経済技術開発区、②嘉興輸出加工区B区、③姚荘経済開発区という3つの工業プラットフォームがあり、浙江省における先進製造業の重要基地として位置付けられています。また上海市に比べ、人件費とレンタル工場賃料の割安なエリアであることから、近年、嘉善県政府は外資企業の誘致に力を入れています。今回の視察では、上記工業区の中で③姚荘経済開発区を訪問しましたので、本稿にてご紹介をさせて頂きます。
4.jpg
《姚荘経済開発区の位置図》
浙江省嘉善県姚荘鎮は、「浙江省において上海に一番近い鎮」として浙江省の北東部に位置し、上海市の青浦区、金山区及び、江蘇省呉江市と隣接しています。上海虹橋空港から約60㎞、浦東空港から約90㎞です。
交通インフラにおいては、上海から延びている3本の高速道路に1本の国道が繋がっており、上海-杭州間の高速鉄道を利用すれば上海虹橋駅から姚荘経済開発区付近の駅まで約20分でアクセスできます。
姚荘経済開発区は、2014年5月に姚荘工業団地から姚荘経済開発区に昇格した開発区であり、計画面積は25.36k㎡に及びます。現在、アメリカ、日本、ヨーロッパ、東南アジア等の国々からの100社以上の外資系企業及び、国内企業120社以上が既に進出しており、太陽光エネルギーと精密機械(主に自動車部品、工作機械部品等)の分野を中心に投資誘致を進めていく方針とのことです。
同区内には日系企業も10社程度進出しており、視察時には日系自動車メーカー及び、現地メーカー向けに自動車用シート構成部品を製造販売する日系企業にも訪問させて頂きました。進出理由について伺ったところ、主には中国人の知人からの紹介がきっかけとのことで、中国ビジネスにおける人間関係の繋がりの強さを感じさせられました。また、総経理を含め日本人駐在者は上海から通勤しているとのことでしたが、高速鉄道もあり、さほど不便さは感じていないとのことでした。
5.jpg

《中小企業園の風景》

さらに、2014年12月には「日本台湾中小企業園(以下、中小企業園)」が設置され、金山工業園区同様に日系及び台湾系の中小企業向けに投資誘致を行っています。視察した際には、レンタル工場が8棟建設(合計30,000㎡)されており、プリンタ企業や自動車部品企業等、契約済みの会社に対して内装を行っていました。中小企業園ではジェトロとの情報交換を行い、誘致活動を積極的に行っていくようです。
 
  
○ おわりに
「世界の工場」から「世界の消費市場」へと変貌を遂げている中国において、人件費、家賃の高騰により生産拠点を東南アジアへシフトする、という話を昨今よく耳にするかと思いますが、今回ご紹介した二つの開発区を含め中国国内の開発区では、インフラ、物流面等を整え、独自色を出し現在でも企業誘致を積極的に行っています。
例えば今回取り上げた二つの開発区が、日系中小企業向けに産業園を設置していることもそれぞれの特色であるといえます。どちらの中小企業園においても日本国内の各自治体、ジェトロ、商工会等との共同推進を行っているとのことですので、今後中国への進出をご検討されている企業様におかれましては、上記団体等へのご相談も有効的であると言えます。
また今回視察した開発区だけを見ても、インフラ面、生活面において十分な環境が整っており、目を見張るものがありました。中国で工場設立をご検討の際は、是非一度ご視察されてみてはいかがでしょうか。
  
 
 
 
 
 
 
(1元=20円)
以上
上海駐在 小林邦寛
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 
 
 

 

 

 

 
 

 

绮罗商务咨询(上海)有限公司 XFCSS .ALL Rights Reserved 沪ICP备18032119号-1
Copyright Kiraboshi Business Consulting Shanghai Co.,Ltd ALL Rights Reserved

沪公网安备 31010102005043号