上海駐在レポート

第 53 回「中国人のマイカー生活」

第 53 回「中国人のマイカー生活」

先月号では、中国人の自動車(特に外車)に対する購買意欲の高さを紹介致しました。アメリカ、中国、日本、ドイツ、フランスの5ヵ国で自動車についての某意識調査によると、中国の調査対象400人のうち93%が「自動車を所有したい」、74%が「運転が楽しい」と答えたようです。いずれも5ヵ国中トップであり、日本が「所有したい」75%、「運転が楽しい」43%と最下位だったのとは対照的でした。
一方で、ナンバープレートの購入でも述べたとおり、上海でのマイカー生活には自動車本体以外にも様々な費用がかかります。
今月は、自動車本体とナンバープレート以外に必要となる費用についてご紹介したいと思います。
 
○ 運転免許取得費用
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中国では自動車販売台数の増加(5月号をご参照)と共に、右図の通り運転免許証取得者数、自動車保有台数も年々増加しており、こうした面からも中国人の自動車に対する購買意欲の高さが伺えます。
上海市内には郊外中心に60ヵ所以上の教習所があり、18歳から運転免許を取得できます。取得費用は期間や車種によっても異なりますが、現在は8,000~10,000元が相場となっています。免許取得には日本と同じように、健康診断(視力検査等)、実技、筆記試験等があり、教習所で試験合格後、免許センターで免許証の発行を行います。尚、取得時に手数料として350元が必要となります。
 
≪日本人の中国自動車免許取得≫
日本人でも日本で有効な運転免許証を持っていれば、中国でも簡単に運転免許を取得することが出来ます。今回、筆者は実際に中国の運転免許証を取得してみましたので、以下にご紹介したいと思います。尚、中国はジュネーブ条約(道路交通に関する条約)に加盟していない為、国際運転免許証では中国国内を運転することは出来ません。手続きは下記手順に従って進めていきます。
 
① まず日本の運転免許証の中文翻訳を行います(料金:50元)。場所は、上海市外事翻訳工作者協会(上海市北京西路1277号1607室)で、上海での免許証の翻訳はほぼ同場所で行われています。尚、翻訳自体は10分程度で完了します。
 
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② 次に車両管理所(上海市哈密路1330号)に行き、写真撮影(25元)、健康診断(60元)、各種書類申請、筆記試験予約を行います。健康診断は身長、体重、聴力、視力、色覚、握力、背筋力、血圧、心電図と項目は多くありますが、それぞれ1,2分で終わるような簡単なものです。筆記試験は申請日から2週間程度で受験可能となります。
 
③ 予約した日に筆記試験を受験します。試験は日本語で受けることもでき、パソコンでクリックして答える形式となっております。合格は100点満点中90点以上で、合否は即日分かりますが、不合格の場合は再度試験の申込みをします。
参考までに、実際に出題された問題を一つご紹介します。
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答えはもちろん(c)ですが、中国に駐在する方はこの問題を見て何か思う方も多いのではないでしょうか?
多くの問題はこのような常識問題が多いのですが、日本と中国で交通ルールの違う点(高速道路の法定速度が120㎞/h等)もありますので、一通り勉強しないと合格は難しくなっています。
 
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④ 無事筆記試験に合格となりましたら、免許証を発行してもらいます。その際に試験代金(40元)と免許証作成費用(10元)を支払うこととなります。
 
以上が一連の流れです。今回は既に日本で免許証を取得している場合についてご紹介させて頂きましたが、中国では筆記試験のみ受験すればよく、実技試験はありません。費用も全部で185元と手軽な金額で手続できます。
尚、取得した中国の免許証は中国での身分証明書としては利用できませんので、ご留意ください。
 
○ ガソリン代
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上海市内のガソリンスタンドは約1,500ヵ所あり、主に「中国石化(SINOPEC)」、「中国石油(CNPC)」の国有企業2社が経営しており、その多くにはコンビニや小型スーパーが併設されています。2015年5月時点でのガソリン価格は、0号(軽油)6.05元/ℓ、93号(レギュラー)6.43元/ℓ、97号(ハイオク)6.84元/ℓ、洗車は20元~となっています。2015年5月末時点で日本(東京)と比較してみると、若干中国の方に割安感があります。また、夜間(19時~7時)には割引キャンペーンを行う店舗も多いようです。
  
○ 駐車場代
住宅地の駐車場レンタル費用は、エリアにもよりますが、郊外で300元~/月、市内中心部の高級住宅街で1,500元~/月が相場となっています。また、カルフールやIKEA等の大型店では駐車場を無料開放している店舗もありますが、市内中心エリアの百貨店等の有料駐車場は20元/1時間が相場となっています。
一方、自動車保有台数の増加による駐車場不足も問題となっており、違法駐車の検挙数も比例して増加しています。違法駐車の罰金として、違反者は一律200元を納めなければなりません。
 
 
 
○ 保険料
中国大手損害保険会社の「PICCグループ」「太平洋保険」等が自動車の自賠責保険(強制保険)を販売しています。価格は950元~/年が相場です。その他任意保険の料金は、車両の損傷、対人賠償(約50万元を保障)等を含む基本的プランで2,000元~/年が相場となっています。
尚、2012年には外資系の保険会社にも自動車保険市場が開放されており、日系では「損害保険ジャパン日本興亜」や「三井住友海上火災保険」等が参入しています。参入当初は車両保険や第三者保険等の任意保険のみ取扱い可能でしたが、現在では自賠責保険についても販売が認められています。
 
○ 終わりに
このように免許の取得から自動車の管理まで、中国のマイカー生活には様々な費用が掛かることがわかります。特に先月ご紹介したナンバープレートの取得費用は、日本では掛からない費用として読者の皆様にもインパクトが大きかったかと思います。80~90年代の若者にとっては、自動車本体はもちろん、マイカー生活における関連費用の負担が重くなっており、今後日本等の先進国で指摘されている「若者のクルマ離れ」が中国でも起こることが考えられます。
冒頭の調査結果の通り、現状、自動車に対して購買意欲の高い中国は魅力的な市場であることに間違いはありません。しかし、上述した「若者のクルマ離れ」が起きた時に、自動車本体だけでなく、その他関連費用面においても対策を施し、いかに中国人の「自動車購買意欲」を冷まさない有効な戦略を図ることができるかが、今後の中国自動車市場における重要な課題になってくるのではないでしょうか。
 
 
 
 
 
(1元=20円)
以上
上海駐在 小林邦寛
お問い合わせは tomin_shanghai@tomin-bc.com.cn まで 
 
 
 

 

 

 

 
 

 

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